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一先ず卵粥を作り、冷たくないお水と薬を持って寝室へと向かう。
恐らくまだ寝ているであろうから、起こさないよう注意しながら。
スーパーへ行く前、額に冷たいタオルをかけておいたがもう既にぬるくなっていた。
もう一度冷やすためにタオルを取り、冷水で絞る。それを再びかけると、彼の苦しそうな顔が目に入ってきた。
百合も一人暮らしをしている身だが、幸いにも今のところ具合が悪くなったことはなかったため、
このように一人暮らしになったときの風邪をひいたときの辛さが、今日よく分かった。
誰かに助けてもらえなければ自分の看病など自分では到底できない。
彼のさらさらとした黒髪を撫でる、早くよくなるようにと思いながら。

そして数分後、斎藤さんが目を開けた。

「オレ…」
「…よく眠っていたので……あの、お水飲めますか?汗をかいていたので、水分補給したほうがいいですから…」

そう言うと、斎藤さんは華奢な体をゆっくりと動かし上半身を上げた。
その手にお水の入ったコップを持って行き、彼が持ち上げられるよう手を添える。
ゆっくり飲んでいくのを確認すると、今度は薬が飲めるようにする。

「食欲ないかと思うんですけど、お薬が飲めるように。お腹に少しでも入れたほうがいいですから」

お盆に乗った卵粥を見せる。
それを見た斎藤さんが、ありがとう、と言って食べる意思を見せたので手元に持っていく。

「あ、熱いかもしれないので、私が…」

蓮華を手に取りおかゆをすくって、ふーと優しく息をふきかえる。
そうしてお粥を斎藤さんの口元へ持って行き、どうぞ、と。

「え、っと…」
「あ、卵…お嫌いでしたか?」

何故か躊躇した様子を見せる彼に、百合は困ったように眉を寄せた。
しかし、彼女の考えと彼の考えていることは恐らくずれている。

「ううん、食べ、られる…から」

それを聞いて安心した百合は再度、はい、と口元へ持って行く。
すると斎藤さんも意を決したようにお粥をくちにした。

「……おいしい」
「良かったです、もっと食べられそうですか?」
「うん……でも、うん…自分で食べるよ、ありがとね」
「はい」

蓮華を彼の手に持ち替えて、彼が食べていく様子をじっと見守っていたが、ふと部屋を見渡す。
ここには音楽器のようなものはとくにないが、代わりにゲーム機や漫画がみられた。
彼もこういったものに興味があるのだと、少し意外に思った。

そしてお粥を半分ほど食べたところで彼の手が止まった。

「ありがとう…ほんと、美味しかった…」
「いえ…これ、お薬です」

カプセル型の薬と水を渡す。
その間、お盆にお粥などを乗せていった。

「他に必要なものはありますか?私、買ってきますから…」
「…大丈夫、暫く寝てるよ…」
「分かりました、じゃあお水ここに置いておきますね。何かあったら……えっと…」
「LINE…鳴らすよ…」
「はい」

そう言って薬を飲み終えると、再び横になる。
百合は片付けをすませるため部屋を一旦出ようとした。

「高嶺さん…」
「?」
「本当に、ありがとう……嬉しかったよ」
「……はい」

か細い声で言う彼の言葉に百合も嬉しさを感じた。

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