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自分はどれほど寝ていたのだろうか、あの後眠りについてから目を覚ますと少しだけ外が明るく見えた。
どうやら朝になっているようだった。
それほど深く自分は眠っていたようだが、そのおかげか眠る前と比べて大分身体が軽くなっていた。
額に手を当てるとタオルがのせられていた。彼女がかけてくれたそれは、何度も変えてくれたのか、今でも少し冷たかった。
何から何まで世話をしてくれた彼女はどこにいるのか、目を見渡すと部屋のタンスに寄り掛かっているのが見えた。
その体は小さく丸まっていて規則正しい寝息も聞こえる。
ずっと看てくれていたらしく、本当に彼女には感謝しかない。

リビングに置いてあった毛布を取り、冷えないようにと彼女の肩にかけた。
長い睫毛が影をさしていて、眠る姿はまるで人形のようだった。
艶やかな黒髪が僅かな日の光で輝いていた。その髪にゆっくり手を触れる。

「…ありがとう」

起きたらもう一度言おう。
そう思いながら、小さく呟いた。

***

「……ん、」

百合が目を覚ますと、ベッドに彼の姿がなかった。
そして自分は何時の間に眠ってしまったのか、肩には毛布がかかっているし、何が起きているのか分からない。
急いで部屋を出るとリビングにも斎藤さんの姿はなかった。
しかし直ぐに浴室の方から、タオルを頭にかけて風呂上りと思われる斎藤さんがでてきた。

「おはよう、昨日は本当にありがとうね…おかげで――「髪はちゃんとかわかさないとダメですよ…っ」

彼の言葉を遮って百合は慌てた様子で彼の頭にかかったタオルで髪をふく。
できるだけ優しくふくことを心がける、が、そのため非常に至近距離にお互いの顔があることになった。

「また風邪がぶり返したら……」
「あ…う、ん…ごめん」

彼女は至って冷静だが、斎藤さんの方は顔を少し赤らめていた。
それを見て百合は「大丈夫ですか?」と心配そうに問いかける、恐らく熱が出てきたと思ったのだろう。

「平気だから」
「そうですか…あ、座れますか?ちょっとこの体勢辛くて…」

彼より身長が低い百合はずっとつま先立ちだったため、長くこの体勢にはいられないようだった。
斎藤はおとなしくその場に座り込むと、彼女も膝立ちになって髪をふいていく。
先ほどより身体も近くなったこともあってか、石鹸のような優しい香りが彼女から漂ってきた。
30代のおじさんが20歳の女子大生に何を感じてしまっているのか。
そうして彼女に髪をふいてもらったところで、再びお礼を言うことにした。

「本当に色々とありがとうね、凄く助かりました」
「いえ、私も一人暮らしの身ですから…こういう時は助け合いですよ」
「でも、今日大丈夫?学校とか…」
「休日ですし、特に用はないので」
「そっか…いや、暫く寝てたら曜日感覚狂ったわ」

笑いながら話す様子を見て、本当によくなったようだと百合も安心した。

「あ、お腹空いてない?まだオレも食べてないから、朝ご飯…っていうかお昼ご飯みたいな時間だけど」
「そうですね…流石にお腹も空いてきました」
「出前取るよ、好きなもの選んで―――「出前、ですか?」

病み上がりでもあるのに、出前などという塩分高めなものでいいはずがない。

「だめです、こういったときは作ったものがいいです」
「でも、冷蔵庫空っぽていうか…オレ、いつも自炊しないから…」
「…買ってきます」

財布を手に玄関へと向かった。

「待って、なら俺も行くから」
「病み上がりなんですから、私に任せて下さい」
「財布、俺のがいいでしょ。昨日はキミに任せちゃったし、ほら行こ」
「え、あ、待ってください」

百合より先に玄関から出た彼を慌てて追いかける。
ちょっと強引なところは少し幼馴染と一緒だった。

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