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「なるほどね…」
途切れ途切れに話してしまったが、田中は聞き入れてくれていた。
最近知り合ったハルナのこと。
そのハルナが斎藤さんを好きで、自分にその恋愛を応援してほしいと言われたこと。
けれど、自分は二人が仲よく話しているのがどうしても見ていられないこと。
(…ここまで聞くと、もう自覚があってもいいんだけどなぁ)
それでも自身の気持ちに気づいていない彼女に田中も苦笑いを零すのであった。
「私、どうした方がいいかな…」
「…ユリリン的にはどうしたい?他人のこととか考えず、自分の気持ちに素直になって考えてみて」
「……応援、できない」
ハルナには申し訳ないが、正直なところ本音はこれだった。
自分があの二人が仲良くしている姿を見て嫌な気分になるなら、見ない方がいいに決まっているから。
「うん。分かった」
「でも、どうしよう…怒られるかな」
「なんで?だって、他人のためにそこまで犠牲になることってないんじゃないかな。
自分半分、他人半分。このぐらいがちょうどいいんだよ」
そこまで自分を犠牲にしなくていい、どこかで聞いたような言葉だった。
「ユリリンが私に言ってくれた言葉なのに、本人が忘れないでよもう」
友人はそう言って笑った。
そう、確かにそれは1年ほど前百合が彼女に言った言葉だ。
大学に入学してから、自分と正反対の人間たちに無理して合わせていた田中に言ったのだ。
本当は窮屈なグループのはずなのに、その中で作り笑いをしていた彼女に。
「うん、…そうだね」
「うんうん!あ、てかあのナルシストったら昨日ね――」
お互いが支え合って私たちは今がある。
***
「この間はすみませんでした」
「いいよー元気になってくれて安心したから」
バイトに復帰した百合。
彼女の変化に気づいた店長は嬉しそうに頷いていた。
「斎藤くんもあのあと、すっごい心配しててねー。
彼にも報告してあげるといいかもね」
「はい」
「百合ちゃん」
店に入って来たのはハルナだった。
けれど今、彼の目的である斎藤さんはいない。
「いらっしゃいませ」
「この間はなんか、ごめんね。体調悪かったんでしょ?」
「大丈夫です、問題ないですから」
「そっか」
「あの…すみません、ちょっとだけお時間貰っていいですか?」
「うん、いいけど…」
「ありがとうございます。店長、ごめんなさい少し席外します」
「はーい」
店長に了承を得てから、ハルナを連れて店の外へと出た。
裏口には誰もいないのでここなら落ち着いて話すことができるだろう。
「えっと……あの、先に謝らせてください。
ごめんなさい、私…やっぱり、ハルナさんの応援、できません…」
深々と頭を下げる。
怒られるのも覚悟のうちだ。
でも、これだけははっきり言っておくべきだから。
「顔上げて、そんな謝ることじゃないし。
私の方こそ大分無理言っちゃったっていうか…、意地悪しちゃったし…ごめんね」
「いえ、ハルナさんは悪くないんです…私がはっきりしなかっただけで……」
「…理由…聞いてもいいかな」
「理由、は……ちゃんとしたものがあまりないんですけど…
ただ…ハルナさんと斎藤さんが仲良くしているのが……見ていられなくて…それで、」
百合がそう言うと、ハルナは一瞬拍子抜けしたような顔をしたと思えば大きな笑い声をあげた。
まさかの事態に百合はきょとんとするしかなかった。
「アハハハハハ、百合ちゃん、ちゃんとした理由ないって…はっきりあるじゃない…もうっ」
「そ、そうなんですか…?」
「自覚ないのー?面白いなぁ、アハハ」
それからハルナはひとしきり笑ったあと、百合へと優しく言った。
「うん、ほんと全然いいよ。ごめんね、悩ませちゃって」
「いいえ…」
「でも…そっかー、百合ちゃんってやっぱり…」
「あの…」
「まぁ本人にまだ自覚ないみたいだから、私ももうちょっと足掻いてみるけど。
いろいろありがとうね、またお店遊びにいくから。今度は百合ちゃんに会いに」
今まで見たこともないぐらいの笑顔を向けていたハルナ。
不安もあったけれど、どうやら打ち明けてよかったようだ。
百合のなかで荒れていた心が落ち着きを取り戻していた。
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