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バイトが終わって、早速店長に言われたとおり斎藤さんへ連絡することにした。
LINEではなくきちんと言葉にして言ったほうがいいと思い、一度通話をかけてみる。
忙しい人だろうからそんなに直ぐは出ないと思うが。
数回のコールの後、本人が出た。

『はい』
「もしもし…高嶺です」

まさか一回目で出るとは思わず、少し緊張して声が小さくなってしまった。

『うん、体調どう?よくなった?』
「はい、今日はバイトにも出られたので…」
『そっか良かった。俺のせいだったらどうしようかと思ったよ』
「そんな大丈夫ですよ」

元々、身体の不調というわけではないので、彼には色々心配をかけて申し訳ないと思う。

『じゃあもう家に?』
「いえ、まだ、これから駅を出るので」
『…ってことは……あ、いた』
「え?」

いた、とは何のことだろう。
不思議に思って、駅の出口のところで立ち止まった。
そしてふと顔を上げると、見知った黒いコートを着た人が前方に見えた。
するとその人は小さく手を挙げる。

「斎藤さん…?」

間違いないと確信してから、百合は一度通話を切って彼に駆け寄った。

「いやー世界って狭いよね」
「どうしてここに?」
「今日、こっちの方のスタジオに来ててさ、近くの友達の家にも寄ってたんだけど…
まさか帰りに高嶺さんから電話あるとは思わなかったよ」
「私もびっくりです」
「じゃあ行こうか」
「え、どこにですか?」
「どこって…高嶺さんの家、送ってくよ」

さも当然のように答えて歩き出す斎藤さん。
驚きはしたけれど、何となく今までの経験から恐らく彼は引き下がることがないので大人しく従う。
しかしそこで百合は一つの疑問をぶつけてみた。

「あの…」
「ん?」
「どうして斎藤さんって…そんなに、優しくしてくれるんですか?」
「え、…すっごいストレートに聞くね」
「あ、ごめんなさい…変でしたよね…」
「ううん。まぁ…別に大したことしてるわけじゃないんだけどなぁ…でも、敢えて言うなら、」

少し間を置いて斎藤さんは言う。

「俺、誰にでも優しいわけじゃないからね」
「……そうなんですか?」

普段の斎藤さんの人柄からは考えられない。
店長にもハルナにも、常に丁寧な対応をしているように見えたのだから。

「まぁいいじゃないこの話は」

笑いながらはぐらかされた気がするが、彼がそう言うのであまり追及しないことにした。

「あ、すいません、ちょっとお店寄ってもいいですか?」
「うん」

丁度食材を切らしていたので、今日買い出しに行こうと思っていたところだった。
行きつけのスーパーに二人で寄る。以前の風邪騒動以来だ。

「そういえば、ご飯ちゃんと食べてます?」
「…うーん、実はね、高嶺さんが作ってくれたおかず、もう食べ終わちゃったから…今日も出前を」
「……よければまた作りましょうか…?」
「え、いいの?よっしゃー」

まるで子供のように喜ぶ斎藤さんに百合は思わず笑顔が綻んだ。

「あ、そういえば今日の夕飯って…」
「まだだけど…」
「それなら家で食べていきませんか?送ってくださったお礼ということで」
「…高嶺さんちに?」

斎藤さんの驚いた様子に、すこし不躾なことを言ってしまったかと後悔した。

「嫌なら無理には――「ううん、ちょっと驚いただけだから。じゃあ…お言葉に甘えさせてもらおうかな」

それから斎藤さんのリクエストである肉じゃがの材料を買って、家に向かったのであった。

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