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今日はテレビ局で収録があった。
普段、演奏ばかりしているので番組の収録には未だに慣れない。

「おつかれー」
「お疲れ様です」

何とか無事終えることができて、共演者のひとたちへの挨拶を終える。
じゃあそろそろ帰ろうかと話していた時、本当に意外な人から声をかけられた。

「サイトーさん?」

後ろを振り返るとそこには、自分の知っている子の幼馴染のアイドル。
STARSの正人が立っていたのだ。

「あ、こんにちは。お久しぶりです」
「どうもです、あの日以来ですね」

確かに声をかけられたのは意外だったが、何となくこの展開はいつかあるんじゃないんだろうかと思っていたことだ。

「もう終わったんすか?」
「そうですね、はい」
「じゃあちょっと向こうで話しません?サイトーさんには音楽のこととか、まぁ他にも色々聞きたいことあったんで」

音楽以外の他の話題とは、恐らく彼女のことだろう。
しかし、それを分かっていても自分は引き下がる気はしなかった。



「俺、サイトーさんたちの曲聞いたことありますよ。アニメの主題歌やってませんでした?」
「あぁはい、歌いましたね」
「やっぱり。ネットで話題になってましたもんね」

テレビ局にある、フリーの休憩室で自販機のコーヒー片手に話しこむ。

「でも驚いたなぁ。まさかアイツがサイトーさんと仲良くなるなんて」

やはり本題は彼女だった。
彼は笑いながら話しているが、その雰囲気は少し刺があるように見えた。

「百合って結構人見知りな方なんすよ。
特に昔は男子に嫌がらせされたりして、男なんて俺ぐらいしか相手にしなかったんすけど」
「そうなんだ、それで最初のときちょっと緊張気味だったんだね」
「しかもちょっと抜けてるとこあるから、出かけるときも俺がリードしてやんないと危なっかしくって見てらんないんすよ」

まるで自身と彼女の思い出を語ってくるかのようだった。
昔からの仲である彼女について、自分の知らない彼女を俺は知っていると自負してくるかのようだ。

「…そういえば俺もこの間彼女と出かけた時に、ちょっと危ないと思ったときあったね。
柄の悪いひとたちにナンパされるかと思って」
「へぇー……確か、映画見に行ったんすよね?」
「そう。映画化されたあのドラマのやつ」
「あー、アイツあのドラマ気に入ってましたもんねー。
ほんと…オレ誘おうかと思ってたのに、サイトーさんに先越されちゃったなぁ、、ははは」

空笑いだった。自分が先に彼女を映画に誘ったことへの、怒りというか悔しさというか、そういった感情がぶつけられている。

「あの、ぶっちゃけなんすけど、百合のことどう思ってます?」

彼は先ほどまでの笑顔から一変し、とても真剣な顔つきでこちらを見てきた。

「どうって、すごく良い子だな…と」
「え、そんな気持ちだけでアイツのこと誘ったんすか?」
「いや、それだけって…そりゃあ……」

まさかこんな往来で聞かれるとは思わず、つい口ごもってしまう。

「あの、オレ今からすごいキツイこと言うんですけど、すいません。
アイツのこと…もし中途半端な気持ちで想ってるんなら、もう近づかないでください」
「中途半端って…」
「オレはガキの時からアイツと一緒で…ずっと昔からアイツのこと見てきたんです。
好きな気持ちは誰にも負けてないし、最近出てきた男に早々やる気もありません」

それは紛れもなく宣戦布告で、自分への忠告でもあった。

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