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今、テレビ局の一角で二人の男が対峙している。
それは一人の少女を巡っての紛れもなくライバル同士の対決ともいえた。

だがそんな男同士の緊迫した空気に、突然第三者が現れるとは思いもしなかっただろう。

「よー、ナルシストアイドル、んなとこでなにしてんの?」
「は!?田中、てめっいつからいた!?」
「あん!?今だけどなにか!?」

何故ここに田中のような一般人が、と思えばその彼女の後ろに控えめに立っていたのは百合だった。
今しがた自分たちの話の中心になっていた少女がいるとは思わず、驚きを隠せなかった。

「なんで百合まで?!」
「今日はPINKEYLILLYのハルナさんに誘われて、番組見させてもらってたんですー。ねー?ユリリン」
「うん、その帰りに正人君と…その、斎藤さんが見えたから」

百合は斎藤さんのほうを見ると少し顔を赤らめて、それを隠すように友人の背に隠れていた。

「おーあなたが噂のサイトーさん?
はじめまして、ユリリンの親友で田中椿っていいます」
「はじめまして、斎藤です」
「へぇー、ナルシスト馬鹿よりはめっちゃいい人そう」
「ぅおい」

斎藤さんの印象としては、彼女の友人にしてはなかなかハッキリとものを言う子だな、と思った。
それにどうやら正人とも大分仲が悪いようで、知らない間に二人の口喧嘩が始まっていた。

「あの…」

不意に袖をきゅっと掴まれた。
百合がこちらを心配そうに見上げていた。

「正人君、なにか失礼なこと言ってませんでしたか?大丈夫でしたか…?」
「ううん。ちょっと音楽のこと話してただけだから」

今しがたキミのことで宣戦布告されました、とは言えるわけもなく曖昧にはぐらかしておく。

「まぁさとぉおおおお!!おま収録ぅうううう」

廊下の端から端まで聞こえそうな怒声が響いてきた。
見ると、スーツを着た男性が鬼のような形相でこちらへ走ってきている。
さながらターミネーターのような走り方で。

「やべ、マネージャー!?ぐはあああ」

そして正人の首根っこを勢いよく掴み上げると、再び来た道を走っていった。
その嵐のように去っていく彼らを、残された三人は静かに見ているしかなかった。

***

「…アイドルって大変なんだね」
「ですね、私もあれは…初めて見ました」

マネージャーに勢いよく連れられていった彼を思い、少しだけ同情する二人。
テレビ局から少し離れた都内の小さなカフェでランチをとっていた。
一緒だった田中は、あとはお二人でどうぞ、と良い笑顔で早々に帰っていったため、二人だけだ。
この状況は映画を観に行った以来だった。

「…斎藤さんとは、本当によく会いますよね」
「え?」
「今日もまさかテレビ局で会うとは思いませんでしたし、
この前の駅を降りた時だって…」

偶然がここまで重なるのも珍しかった。
まだ会って半年も経たないというのに、いつの間にか二人の家を訪れるほどの仲になっていた。

彼女はそう言うが、ここまで急接近できたのは自分が彼女のバイト先に足蹴もなく通っていたこともあるだろう。
なので偶然はほんの少しのことで、あとはほとんど自分が勝手にもたらした功績で、僅かに罪悪感を感じてしまう。

「…うん、だね」
「私、今まで正人君以外で男の人とこんなに仲良くなったの初めてです。
男性にはちょっと苦手意識もあったので…」
「もしかして、子供の頃に意地悪されたっていう?」
「な、なんで知ってるんですか?」
「あ、ごめん。さっき正人君から聞いちゃって」
「……もう」

ごめんごめん、と笑う。
しかし、その当時の彼女に意地悪をしていた男子たちの気持ちも分からなくはなかった。
男子というのは、好きな子ほどいじめたくなってしまう生き物だから。
そしてそんな彼女が幼馴染以外で仲良くしている異性が、自分だけという事実がたまらなく嬉しかった。

今日、彼女の幼馴染に宣戦布告され、最初こそ戸惑いはしたものの
それでも自分はもうこの気持ちを抑えられるほど、余裕のある人間ではなかったようだ。

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