2
「腹減った」
部屋に入っての第一声がそれだった。
「外で食べてくればよかったじゃない」
「今日はお腹に優しいもん食いたいの、昨日飲み会だったし」
なんだかんだ理由をつけてくる彼が引き下がる様子はない。
それどころか食卓をするテーブルの椅子に座り、テレビをつけ始めた。
「お粥でいいの?」
「いーんや、和食」
「和食だよ」
「定食みたいなやつってこと」
「…わがままだなぁ」
「ここんとこ仕事詰めだったんだよ、ちょっとは労わってくれよー」
小さな溜息をつきつつ、冷蔵庫から食材を取り出し簡単な調理を始める百合。
「正人くんの実家の方に行けばいいのに、おばさんのご飯の方が上手だよ」
「…分かってないねーお前は、いつものことながら」
「なにそれ」
2歳年上の彼に馬鹿にされたように話されるのはあまりいい気はしなかった。
けれど反論しようにも、口手八丁の彼に敵う気は起きないので黙って聞き流しておく。
「そいやさー、バイト先なんでレコード店にしたの?」
「店長さんとお母さんが知り合いだったから、紹介してもらったの」
「ふーん…他にバイトのやついる?」
「ううん、私だけ。そんなに大きいお店じゃないから、店長さんと私でも何とかなってるよ」
「へー。今度見に行ってやろうか?」
「やだよ、正人くん変に浮いちゃいそう」
「芸能人オーラ出ちゃってる?」
「……自分で言うのカッコ悪い」
「おい」
他愛のない話をしているうちにご飯が出来上がった。
お味噌汁とご飯、簡単な炒め物と卵焼き。
「昔から卵焼きはうまいよな、お前」
「そうかな」
「色とか形綺麗だし、まぁ味の方はオレ的にもうちょっと甘くてもいいんだけど」
「美味しくないならお下げしますよ?」
「食べる食べる」
文句を言いつつ箸を進めていく彼は料理の見た目や味に文句ばかり言う人だ。
普段からテレビの仕事やプライベートで、雑誌に載っている高級料理店で舌を肥やしているのだから、一般人のつくる料理と比べないでもらいたいものだ。
「まぁでも、変な男に誘われてもほいほいついてくなよ」
「…なんの話?」
「だーかーらー、店でナンパされても軽く流せよってこと」
「そんな下心ある人いないと思う」
「分かんねーぞ男ってのは」
「……正人君がスケベなだけだよ」
「やめなさいそのいいかた」
- 8 -
*前次#
ページ:
ALICE+