4


ユリという人間は基本人形みたいに感情が見えないが、人一倍お人好しなのは見て取れた。
年寄りの荷物を持ってやる、ガキの遊び相手になってやる…などなど。
困っている人間にはすぐに手を差し伸べようとする。
そのお人好しからくる優しさを勘違いするバカも多くて前はよく俺とコブラとノボル(たまにナオミ)でその勘違い野郎共を撃退していた。
そして今日もまたそのお人好しが出てしまったのだ。

「…追いかけられてる」
「はぁ?どうせガキだろ、ほっとけよ。
それより早く帰らねーと…これ重いわ」

ユリの買い出し(別名荷物持ち)に付き合ってやっていると、彼女が厄介な物を見つけてしまった。

「…あの子かわいそう…。私、止める、これ持って」
「だぁー!!待て待て!!お前には無理だろ!!…しゃーねぇなぁこれ持ってろ、重いけどすぐ終わらせっから」

ユリに行かせたらコブラに何て言われるか…。
ブロックで殴り付けようとしてる奴の腕を取り止める。

「ここでやるんじゃねーよ」

仲間の奴らが殴りかかってきたが返り討ちにしてやった。
ちっ、大した事ねーやつらだな。
しかし胸ぐらを掴んだ時見えてしまった校章…

「…!こいつら、鬼邪高…?」

やっべぇ、コブラに怒られる…!
こいつらとやりあったらまずい…!
あいつは助けたし大丈夫だろ!早くずらがらねーと!
慌ててユリの方へ戻り、手を取り走り出す。
もちろん重い荷物は俺が持って。

「おいユリ早く帰るぞ!」
「でも、今殴られて…」
「俺は平気だから!あんだけぶっ飛ばしといたら大丈夫だろ!いいから帰るぞ!」

一刻も早くここを去らないと!ユリ抱えて走った方が早いか…いや、それはコブラに殺される。
とりあえずユリが遅れないように…手を離さないようにぎゅっと握り締める。
その時は走るのに夢中で気付かなかった。
助けたあいつが…俺達をじっと見てたなんて…。


▽▲▽


いつものようにITOKANで思い思いに過ごしていた。
ユリが淹れたコーヒーを飲みながらいつものソファーに座っているとヤマトが来た。
後ろには見慣れない学ランの男。

「…あなた、この前の…」

ヤマトの後ろの男に気付いたユリだが…この前?
こいつと関わりがあるのか。
しかもこいつ…鬼邪高か、よその奴等には関わるなとあれ程言ってるっつーのに…。
いつ、どこで、どうしてこんなガキと…。
次々と疑問が沸いてくるがヤマトの言葉に耳を疑った。

「こいつ…チハルを山王連合会に入れたい」

…何考えてんだこいつ、正気か?
ヤマトの言葉にダンもテッツも反発する。
鬼邪高のこいつを山王連合会に入れれば…間違いなくSWORDの均衡が崩れる。
ヤマトの気持ちも全く分からない…訳じゃねぇ。
だが均衡が崩れた時どうなる。
…同じ過ちは繰り返さねぇ、無駄な血は…流させない。
ちらっとユリを見れば心配そうにあのガキを見つめていて…ちっ、またお人好しが出てやがる。
情が移りそうになってるユリが何か言う前にはっきり言っとかねぇと。

「…ヤマト、そんな理屈は通らねぇ…鬼邪高なんて大した事ねぇ、いつでもぶっ飛ばす…けど、」

少し言葉を切り、厳しくヤマトを見つめる。

「…この件は山王に関係ねぇ、ヤマトの問題だ」

そう言い切り、ヤマトの肩を叩きITOKANを出る。
コブラ、とユリが俺を呼ぶ声が扉を閉める前に聞こえた。
どうせ俺を追いかけてくるんだろ…あいつの…チハルって奴の事も聞かねぇとな。
どんないきさつで関わっちまったのか。
あいつが追いつける速度で歩き出す。
後ろから俺の名を呼ぶ声が聞こえた。
そう吐き捨て、コブラはITOKANから出て行った。

- 4 -

*前次#


ページ:



ALICE+