今日から高校生。雄英の入学式である。
高校の門を潜り長い廊下を進めば、1-Aと大きく書かれた扉。
カラカラと静かに教室のドアを開けると、もう殆どの席が埋まっている中でいくつかの頭が巴に振り向いた。
男子生徒14名、女子生徒6名の少年少女だが、中には”異形型”の姿も見える。

一方で、振り向いた生徒達の殆どが突然現れた美少女に目を奪われていた。
特に男子生徒達の多くは目を皿にして視線を一変も逸らさないように。
そんな視線をひしひしと感じながらも、巴は静かにドアを閉め窓際の席に向かう。
しかしその途中、誰かに突然腕を掴まれる。
振り向けば、髪の毛が赤と白にわかれた男の子にじっと見つめられていた。

「お前……」
「え、」

入試で一緒の会場になった人だろうか。
こんなに目立つ人ならすぐに気づきそうなものだが、巴の記憶にはない。

「すまない、人違いだ」

そう言った少年は席に戻っていく。
少しだけ、あの特徴的な髪の毛に憶えがあるような、無いような。
違和感を感じながら、自身も席に着いた。

「机に足をかけるな!雄栄の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」
「思わねーよ!テメーどこ中だよ端役が!」

巴より先に学校に着いていた爆豪が眼鏡をかけた男子生徒に私的を受けていた。
あの爆豪に注意をするなど、今までの学校生活ではあり得ない光景だ。
しかしそれにより、少ながらず自分に向いていたいくつかの視線はその方に逸れていた。
が、案の定喧嘩腰である。思わず溜息を吐きながら彼らに近付く。

「ねぇキミ、やめておいた方がいいと思うよ」
「君は…?俺は私立聡明中学…」
「うん、聞いてた。飯田くんね。彼には何言っても無駄だし、高校デビューのヤンキーみたいな見た目や態度は今に始まったことじゃ無いから」
「ア゙!?誰が高校デビューだ殺すぞ!」
「だが、それだと尚更直した方がいいと思うが」
「いいのよ、放っておいて。飯田くんが疲れるだけよ」

そこでいつの間にか入り口に立っていた緑谷に気付くと、彼は私と目が合ってハッと背筋を伸ばす。
ヒラヒラと手を振ると、彼は少しだけ微笑んで手を振り返した。そんな彼に反応した飯田が、自己紹介をすべく緑谷に歩み寄っていく。

「まあ、でも…」

私はそんな彼らから座ったまま不機嫌そうに私を見る爆豪に目線を戻し、彼の姿を改めて眺める。
よくもまあ、入学式のある今日もそんな格好ができるものだ。

「爆豪、ネクタイは?」
「あ?ねーよ、んなもん」
「ネクタイは?」
「ねぇっつってんだろ!」
「嘘。鞄に入ってるでしょ?」
「クソウゼェッ!!!」

そう叫びながらバシィッ!と私が差し出した手にネクタイを投げつける。
それを確認して、彼の制服の袖を持ち無理矢理立たせるように上へと引っ張る。

「何すんだよクソ女!」
「うるさい。黙って立って」

怒鳴りつつもガタッも立ち上がるせいか、少々クラスの目線が集まる。

「苦しかったら言って」
「あ゙?」

ボタンは…開けたままでいいか。面倒臭いし。本当ならボタンも閉めて欲しいけど、逆にそこまでキッチリ着られるとギャグにしか思えない。渡されたネクタイを彼の襟に通すと、ピシッと彼の動きが固まった。そのまましゅるしゅると結んでいく。

「……何してんだてめェ」
「腰パンには目を瞑るから、入学初日くらいフォーマルな格好でいなよ。高校生にもなってみっともない……ハイ、これでOK」

終わり、の意味も込めて背の高い彼の胸板をパシッと叩く。ネクタイを結ぶのに床に置いていた鞄を手に自分の席へと向かおうとすると、爆豪の2つ後ろの席の子が「女子にネクタイを結んでもらうなんて…!」と呟いていたが無視した。

「なんか新婚さんみたいやね!」

緑谷の後から来たであろう女の子が楽しそうにそう叫ぶのが耳に入り、思わず振り返る。
今の自分の顔は心底面倒臭そうな顔だろう。先程まで固まっていた爆豪も「誰が新婚だぶっ殺すぞ!!!」と叫んだ。

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