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圧巻である。脳無もオールマイトの一発一発に被せてくるため全て吸収されている。オールマイトはそれが目的だ。互いに全力で拳をぶつけ合う為、ただ呆然と見ているだけしかできないヒーローの卵たちにまで、その風圧や威力が全身に駆け巡る。開いた口が塞がらない。それ程までに“プロの世界”を思い知らされた。


「敵よ、こんな言葉を知ってるか!!?」


――Plus Ultra!!


最後の一発で脳無は高々と空を駆け、演習場の天井を突き破り、飛んでいった。ショック吸収を“ないこと”にしたオールマイトは究極の脳筋だと切島は吐露する。けれど、まだあいつらが残っている。静がそう口にすれば、切島はそうだったなとカーネリアンの瞳を揺らした。土埃が立ち込める中、オールマイトの顔が浮かび上がる。オールマイトの気迫が男を気圧さしているようにも見受けられた。


「さすがだ・・・俺たちの出る幕じゃねぇみてえだな・・・」
「緑谷! ここは退いたほうがいいぜもう。照己もわかったろ。却って人質にされたらやべェし・・・主犯格はオールマイトが何とかしてくれる!」
「俺たちは他の連中を助けに・・・緑谷」


轟が踵を返したのを皮切りに、爆豪、切島もその場を後にしようと身を翻す。静もアドレナリンが切れてきたのか意識が朦朧としてきたが、地面にはそれとなく足をつけている。緑谷も後を追うかと思ったが、轟は足を止め、ついてこない緑谷に藍玉を向けた。彼はなにかブツブツと独り言を呟いている。ブツブツ呟くのは彼の癖なのだが、その表情は暗い影を落としていた。すると、瞬きをした間に彼の姿が消えた。まさかとオールマイトのほうを見遣れば、緑谷は目にも留まらぬ速さで突っ込んでいた。「いずくん」消え入りそうな声で呼んだ昔の緑谷の愛称は、切島の「緑谷!!?」に掻き消された。けれどもう一人の幼馴染の耳にだけは届いていたことを、静は知らない。



「1−Aクラス委員長飯田天哉――ただいま戻りました!!!」


プロヒーローである教師陣を連れてきた飯田の勇ましい声がUSJ内に響き渡った。待ち侘びていた増援に安堵の息をつく。オールマイトを助けようと飛び出した緑谷は、ワープゲートを通し向かってきた男の手に掴まれそうになったが、プロヒーローの銃撃により回避できた。帰って出直すかと黒い靄を“黒霧”と呼び、身を引こうとしたが、次々と降り注ぐ弾丸の雨に身体を縮める。数発命中した男を黒霧が“個性”でゲートを開き覆うが、重症を負った13号がブラックホールで黒霧ごと吸い込もうと追撃した。しかしあと少しのところでゲートが閉じられ、逃がしてしまった。「今度は殺すぞ。平和の象徴オールマイト」と血眼になって告げた宣戦布告は、何れ現実になるに違いない。


嵐の去った静けさの中で、プロヒーローが生徒の安否確認に駆けて行った頃。轟は首元に手を添えながら、教師陣がこれだけきたということは学校全体に仕掛けてないかもと冷静に分析をした。プロヒーローの数も限られている中、11名ほどの教師陣が増援にきたのはそういうことだろう。その傍ら、切島はひとり突っ込んでいった緑谷が気掛かりで仕様がない。けれど少しずつだが体重が掛かってきている静の容態も気になる。そんな切島に気付いた静は両足に力を込めた。身体に掛かる重みが軽くなったと切島が静を見れば、ラピスラズリが彼のカーネリアンを力強く見つめる。「切島くん、ありがとう」と口許に弧を描いた。静の言葉に考えた末、切島は「わりぃ」と心底申し訳なさそうに口にし、回していた腕を近くにいた爆豪へ押しつけた。

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