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実況を務めるプレゼントマイクの声がスタジアム内に響き渡る中、入場が開始される。
通常、体育祭で最も人気があるのは3年生ステージだが、今年は先日の敵襲撃で1年A組の知名度は大きく上がり、1年生ステージは例年以上の盛り上がりを見せていた。
360度囲む2階から4階席までの大収容観覧席も大勢の観客とメディアで埋め尽くされ、生徒たちが姿を見せるとスタジアム内の盛り上がりは一気に爆発した。

「わあああ……人がすんごい……!」
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか……、これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」
「めっちゃ持ち上げられてんな、なんか緊張すんな……!なぁ爆豪」
「しねえよ、ただただアガるわ」

ヒーロー科1年A組に続いてB組、サポート科のC組、D組、E組、続いて普通科F組、G組、H組、経営科I組、J組、K組。
1年生全生徒が揃い踏みし会場の雰囲気に圧倒される中、整列する生徒たちの前の壇上に立つプロヒーロー・ミッドナイトがピシャンと鞭をしならせた。

「おお、今年の1年主審は18禁ヒーロー、ミッドナイトか!」
「18禁ヒーローなのに高校にいてもいいものか……」
「静かにしなさい!選手宣誓、1-A爆豪勝己!」

一般入試を一位通過した爆豪が名前を呼ばれ登壇する。
先日、A組のクラスの前に大勢の生徒が詰め寄せたことがあった。
それは敵の襲撃を耐え抜いたA組がどんなものかと見に来た他の科の生徒たちだったのだが、爆豪はその生徒たちにも「意味ねぇからどけモブ共」と悪態ついたことがあった。

「せんせー」

マイクで響き渡る爆豪の選手宣誓。

「俺が一位になる」

絶対やると思った!!
A組の全員がやっぱり!と冷や汗をかく。ただでさえあの時、押し寄せた全生徒を敵に回しA組は調子に乗っているすっかりヒール扱いだというのに。
全生徒から大ブーイングが飛ぶ中、台から下りていく爆豪。しかし緑谷は感じていた。
昔から確かに爆豪は全てを見下しているし口も悪いし態度も悪いが、これまでの爆豪ならああいう煽り文句は笑って言っていた。完全に見下し、バカにするように。
けど今の爆豪にそんな気配はない。全員を敵に回し、炊きつけ、敵対心を煽り、自分を負いこんでいると感じた。
一位にならざるを得ない状況を作りだしたんだと。

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう。いわゆる予選よ、毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!さて運命の第一種目、今年は……!」

大画面にバンと映し出された競技名は「障害物競争」。

「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4キロ!わが校は自由さが売り文句、コースさえ守れば何をしたって構わないわ。さあさあ位置につきまくりなさい」

ドームのひとつのゲートが開き、生徒たちがスタート位置に集まる。既に始まっている位置取り競争。そして鳴り響くスタートの合図。
一斉に駆けだす生徒たちはゲートの中へと入っていく。
しかしその人数に対しゲートはあまりに狭く、通り抜ける前からごった返し前に進めなくなった。
つまりスタート地点がもう。

「最初のふるい」

スタートで良い位置を取った生徒はA組に限らず大勢いた。
しかしゲートを最初にくぐり抜けたのは氷結で後続を凍り付けた轟だった。

「ってぇー!なんだ、凍った!動けん!!」
「さみぃ!」

地面に着いた足から凍りつき足止めを食らう生徒たち。

「甘いわ轟さん!」
「そう上手くいかせねぇよ半分野郎!!」

しかし身動きの取れない生徒たちの頭上をくぐり抜けてくるのはA組生徒たち。爆破で飛ぶ爆豪、創造の力で棒を作りだし氷を脱する八百万、硬化で氷結を防いだ切島、ビームで避けた青山、自身を空中に浮かせる照己。他にも多くのA組生徒たちが轟の攻撃を掻い潜り走りだす。

A組の生徒たちは皆、先の対人戦闘訓練で轟の氷結は見たことがあった。それに対応し応戦していくA組。以前一位を独占するのは轟だが、続々と後続も追いかける。

前方ではすでに最初の障害ゾーンに入った先頭グループの活躍で大騒ぎだったが、スタートでてこずった人だかりは今ようやくゲートを通過しようとしていた。
しかし今度は凍ってつるつると滑る道にまた戸惑っている。当然彼らも何らかの個性を持ち、偏差値の高い雄英の普通科受験を突破してきたのだが、常に授業でも実戦訓練をしているヒーロー科とは明らかに違う、普通の高校生たちだった。

「クラス連中は"当然"として、思ったよりよけられたな…」

どうにかゲートに詰まった人ごみの上を通過し、足を止める事無く地面に飛び降りる。まだ、前方には何人も居て予選通過できるという安心感はまるで無い。必死に前方を行く人たちの背中を追って走る。が、静はすっかり油断していた。

「峰田くん!?」

静の走っていたすぐ前。ヒュン、と物凄い勢いで見覚えのある何かが真横に吹っ飛んで行った。
それよりも問題なのは何で峰田くんが吹っ飛んで行ったか、という事。

「ッこれは、また…」

自分たち生徒の前に立ちはだかる大きな影。見覚えのあるその大きな金属の塊。
目の前に現れたのは、ヒーロー科入試の時にいた仮想敵。
中でも存在感を放つのは0ポイントの“ギミック”として出てきたものだ。

《さぁいきなり障害物だ!まずは手始め…第1関門、ロボ・インフェルノ!!》

しかし今回は入試の時のように"避ける"の一択しかない訳では無い。
両手を構えて息を吸い込んだ時、また前方からフウッと冷たい冷気を感じ、視線をそちらに向ければパキッと音を立てながらロボ・インフェルノが一瞬にして凍った。

先頭を行く轟が全く怯むことなく派手に氷結を繰り出すとロボットを足止めし、かつ不安定な状態で凍らせたそれが崩れ落ちることによって後続の生徒たちの道を塞ぎ足止めにしたのだ。

《1−A 轟!攻略と妨害を一度に!コイツはシヴィ―!!》

本当に勝ちに来ている。いつもの物静かなイメージの轟とは違う。本気だ。あっという間に見えなくなってしまった。このまま一位を独占するつもりだろうが、そうすんなりと行かせるものか。静も徐々に自分の中にも火がついていくのが分かった。

「私も…っ」

巨大ロボの仮想敵が道を塞ぐも個性の使い慣れたA組生徒たちは続々倒し、いなし、くぐり抜け、脱していく。
ヒーロー科のB組生徒も他の科の生徒も備わった個性を活かしている。しかし先の敵襲撃で本物の脅威を目の前で見たA組は、敵を前に何をすべきなのかの判断が早かった。
一歩の遅れが命取りになることを知った。次々と障害をクリアしていくA組の独壇場のようだった。

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