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極端過ぎて逆にピンとこないが、1000万Pさえあれば確実に通過できる。制限時間は15分。
重要なのはハチマキを取られても、騎馬が崩れてもアウトにはならない事。“個性”発動アリの残虐ファイトだが、悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード、一発退場だ。
そして第一種目1位で通過し、1000万Pを与えられた人物――緑谷出久。彼に第一種目通過者全員の視線が集まる。緑谷は顔が真っ青になりながら固まっていた。
上に行くものには更なる受難を。雄英に在籍する限り何度でも聞かされるPlus Ultra――

チーム決めに与えられた交渉時間は15分。
第二種目は上位4位までが本戦へ進める為、慎重に交渉を行う中、第一種目を4位で通過した静は195Pを携えたまま肩甲骨付近が破れた体操服の上着を脱ぎながら考える。
実質1000万P争奪戦。つまりは殆どのチームが緑谷を狙うと言っても過言ではない。
漁夫の利を狙って他チームのポイントを奪取し、2〜4位を狙うのも有りだろう。
どちらにしろ“個性”を活かせる“個性”に重きをおきながらチームを組むのが賢明か。
個人戦でない以上、連携が大事になってくる筈だから。

すぐさま15分間のチーム決め交渉タイムとなり、皆慌ただしくそこかしこに散らばり始めた。けれど皆目当ての人を決めているようでその人の元へと一斉に群がっていく。特に普段人気が無い筈の爆豪がほぼA組メンバーに囲まれてる。

静も急いでメンバーを探す。単に余り者同士で組んでも仕方ない。出来る限り、希望の通る子を。自分の個性と相手の個性の相性やお互いに活かせるような子と組まなければ。そう考えれば考えるほど、脳裏に過ぎるのはやっぱり馴染みの顔2つ―。

「静、ちゃん」

徐々に周りで騎馬のメンバーが固まって行く中、静は他の組でも良いから兎に角メンバーをと探し回っていた時だった。フワリ、と焦る自分を宥めるように優しい声が飛んでくる。
小さく息を吐き、ゆっくりと振り返ると底に立っていたのは脳裏に過ぎった顔の内の1つだった。

「出久くん」
「その…良かったら僕と組んでくれないかな?」

この状況でなければ喜んで彼と組んでいただろう私の目には彼の後ろに見えない筈の1000万Pの文字が映り込む。それ故に素直に「うん」とは言えない自分に嫌気がさす。
別に彼と組むのが嫌な訳じゃない。彼のPもさほど自分に問題は無い。
ただ、そのPを守り切れる自信が無い。自分のせいでPを奪われた時が怖い。自分独りならそんなリスクなんて無理にでも突破していくだろうけれど、これはチーム戦。
チームの1人がしくじればチーム全員の失点になるのだ。…それが怖い。

「………私、」
「分かってる。みんな僕のPを狙いに来るだろうし…それが合理的だって事も。
静ちゃんもきっと僕なんかじゃなくて別の人と組んで僕のPを取った方が明らかに色んな企業にアピールできる。
静ちゃんの事だからチャレンジしたいって気持ちもあるんだと思う。
…でも、こんな僕じゃ組んでくれる人も少なくて、況してや個性を把握できてる人も少ないから、だから―…」

少し言葉を詰まらせながら言う緑谷に静は思わずキョトンと驚いてしまった。

「僕たちの力になって欲しいんだ」

そう言って真っ直ぐに静を見つめる緑谷の後ろで、恐らく彼の騎馬戦チームに加わったのであろう2人の見覚えのある顔がひょっこりと此方を覗き込んでいるのが見える。
その内1つの顔がへにゃりと笑ってこっちに手を振るものだから思わず肩に籠っていた力が一気に抜けていく。

「……ふふ。もう、そこまで言われたら断れないよ」
「え、」
「どうか私を上手く利用して下さいな」
「え、いや、利用だなんて、そんなつもりは―…」
「うん、分かってるよ」

自分の個性を把握している出久ならきっと考えがあるのだろう。それ故に声をかけてきたのだろう。

「やったね!デクくん!静ちゃん!頑張ろ!」
「よろしく頼む」
「こちらこそ」

へにゃりと笑った癒し顔が目の前に迫る。静の両手を手に取って声を上げる彼女はいつになく嬉しそうだ。その横でクールな彼が手を差し出してくれたから素直にその手を取って握手した。


一方、そんな彼らの様子を遠くで見ている男が一人。

「ば、爆豪どした…!?」
「ねーはやく騎馬組もう!」
「な、なんでアイツめっちゃ殺気立ってんの?」

爆豪チームは騎手でもある爆豪の謎の怒りに戸惑っている。
といっても爆豪本人にもよく分かっていないのだが。
一つだけハッキリしているのは、緑谷が静をチームに誘ってそれを彼女が了承したことがとても気に入らないということだ。

「…クソナードが…っ!!」

元々、爆豪も彼女に声をかけようか頭の隅に考えはあったのだ。しかし、クラスメイトたちの個性やら何やらを聞いている間にああなってしまっていた。
自分にとって最善のチームが出来た今、どうもしない筈だ。そう、別にあの子が他の男のところにいこうと関係ない筈、なのにどうしてこうも苛立つのか益々分からないのであった。


《さぁ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!》
《……なかなか、面白ぇ組が揃ったな》

グッと彼の足を乗せた手を2人と息を合わせて持ち上げる。ザワザワとフィールドに出来上がった騎馬戦の組み合わせを見て会場中がどよめき合っている。
相澤先生の言う通り、意外な組み合わせもあれば、成程そう来たかと思う騎馬。はたまた他の組だとどんな個性で固まっているのか想像もつかないのでこれも油断ならない。

《さァ上げてけ鬨(とき)の声!血を血で洗う雄英の合戦が今!!狼煙を挙げる!!》

その声と共にワアアアアと会場中が一斉に盛り上がる。その盛り上がりに合わせて一気にフィールド上の生徒たちの士気も高まる。

「麗日さん!」
「っはい!」
「常闇くん!」
「ああ…」
「静ちゃん!」
「うん…っ」

キュッと緑谷の額に締められるこの騎馬みんなの合計Pの表示されたハチマキ。意気込む出久の声に各々が元気に返事を返す。このメンバーならきっと大丈夫、大丈夫。

「よろしく!」

さあ、皆で勝ちに行こうか。

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