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主審のミッドナイトにより、騎馬戦1位チームから順にトーナメントの組み合わせ決めのくじ引きを始めようとした時である。
勝ち抜いたはずの尾白、またB組の庄太二連撃という生徒が最終種目の棄権を申し出たのだ。二人は騎馬戦で心操と組んだ(というより組まされていた)ため、試合中ほぼ記憶がなかったのだという。
たくさんのプロヒーローに見てもらえる機会を自らフイにすることの愚かさを恥じつつも、それでも皆が己の力を出し争って立つ舞台にわけのわからぬまま並ぶことはできない、プライドが許さないと熱い心を見せたのだ。

「そういう青臭い話はさァ…………好!!み!!!!」

かくしてミッドナイトの趣味で棄権は認められ、二人が抜けた分の繰り上がりは順当にいくと6位であった拳藤チームだったのだが、B組の姉御肌拳藤が「そういう話なら最後まで頑張って上位キープしていた鉄哲チームでは」と提案したことにより、鉄哲チームから鉄哲・塩崎が繰り上がることになったのだ。
そしてくじ引きの結果いよいよトーナメント表が発表された。
誰もが真っ先に自分の名を探し、相手の名前を見る。そしてその流れで実際に相手を探し、視線をぶつけ合う。真正面に向き合う者も居れば、睨み合う者もいる。更に言えば目も合わせない者も居る。
静はといえば、

「よろしく頼むよ照己くん!」
「こ、こちらこそよろしく…です」

初戦の対戦相手は同じクラスの飯田だった。
お互いの性格から特に険悪し合うことなく、比較的穏やかに挨拶を交わすことができた。
その後、静は再びモニターを見上げる。
トーナメント表では初戦が飯田、そしてその次は瀬呂か轟との対戦になる。
轟というと昼休憩のときの緑谷との会話が頭を過ってしまうが、今は目の前の試合に集中するべき。
ふと他の人達はどういう結果になったのだろうかと見渡してみると、一つ、気がかりな組み合わせが見えた。

「麗日?」
「(ヒィィー!!!!)」

確かめるようにつぶやいた爆豪の背後で慄く麗日である。静もこれはちょっとあんまり直視ができない試合だぞと思ってしまう。
他にも気になるタイトルはいくつもある。自分の試合の重要さはもちろんだが、他の生徒の試合もどれも見逃すことはできない。静は緊張と共にいよいよ胸を躍らせた。

レクリエーションが始まろうとしている中、静はできるだけ集中したいと思い女子たちの輪からひっそりと抜けた。
トーナメントに入っている生徒はレクリエーションに参加しなくてもいいのだ。
まだ試合まで時間はあるが、こういうときは時間の流れが早く感じるもの。

「……頑張ろう…」
「おい」
「っ!!あ、ば、爆豪くん…っ」

突然背後から声をかけられた。
ドスの効いたような聞き覚えのある低い声に思わず身体ごとビクついてしまった。

「テメー……」
「は、はい…な、なんでしょうか…」

振り返ってみると意外にも直ぐ傍の背後にいたことに再び驚きつつも、できるだけ相手を刺激してはいけないと素直に用件を聞くことにした。
しかし、爆豪は何故か静の方をじっと見ている。
何か不味いことをしでかしたかと頭を巡らせていると、ようやく彼の口が動いた。

「その格好、」
「こ、これは…えっと、峰田君たちに騙されて…」

意外にも静の着ているチアリーダー服について触れてくるとは思わなかった。さらにいうと、峰田の名前を出したところで爆豪の眉間がぴくっと動いていた。

「………ぃよ」
「…?あの、もう一回……」

ボソッと爆豪が小さく呟いたがその声を聞きとることができず、静が聞き返すと、次に見た爆豪の顔は例の如く般若化としていた。

「だぁぁあああ!!!さっさと着替えてこいっつーんだよっ!クソアマが!!」
「は、はいっ直ぐに…!!」

久々に間近で見るその恐ろしい風貌に、静は思わず涙が出そうになるのをグッとこらえ返事をする。
聞き返しただけで何故そんなに怒るのか最早理由などどうでもいい。
静は一刻も早くこの場から離れようと控室へと足を向ける。
しかし、数歩進んだところでまたも爆豪から声がかかった。今度は一体何を言われるのか、静は心を固め振り返る。

「……さっさと負けたらぶっ飛ばす」

それは彼なりの激励だったのだろう。
爆豪はそれだけ言うと、くるりと背を向けすたすた歩いていってしまった。
幼い頃から怖くて近づきがたい彼だったけれど、嘘は一度だって言ったことはないことは知っている。

「うん…っ」

先ほどの怯えた顔とは一変、静は何処か嬉しそうな表情で返事をしていた。

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