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「轟くん。おはよう」
「ああ。おはよう」
職場体験3日目、この2日間の特訓で酷使した身体をなんとか動かし歩いていると轟と遭遇した。
彼も相当エンデヴァーに扱かれているのか、その顔からは疲労の色が伺える。
「眠そうだな」
「う、うん…ちょっとね」
「大丈夫か?」
「やるしかないから。Plus Ultraの精神、だよ」
そうだなと轟が微笑んで答える。その笑顔の眩しさとは対照的な、彼の父親の険しい表情を静は思い出した。
ヒーロー殺しを捕まえるため保須へと出張してきて3日目となるが、未だその姿は確認できていない。苛立つのも当然だろう。
「そういえば…私、エンデヴァーさんから何で指名されたのか、聞いてない」
「……アイツの考えることなんて、どうせしょうもないことばっかりだぞ」
聞いても無駄だと轟が告げる。
親子仲は相変わらずらしい。
昨日一昨日と面倒を見てくれていた相棒は他の地域の応援に呼ばれていない。
だから今日はこの複雑な関係である轟親子と3人でのパトロールだ。
どうなることやらと静穂は苦笑いを浮かべた。
そして、その心配は現実のものとなる。
「焦凍!事件だついてこい、ヒーローというものを見せてやる」
午後5時過ぎ。突如上がった爆発音と噴煙にエンデヴァーがいち早く反応する。
しかし呼びかけられた当人である轟はスマホを取り出し何かを確認したかと思うと、隣にいた静の腕を掴み、踵を返して元来た道へと走り出した。
「え、と、轟くん…!?」
「どこ行くんだ焦凍ォ!!」
「江向通り4-2-10の細道。そっちが済むか、手が空いたプロがいたら応援頼む」
友達がピンチかもしれねえ。
轟のその言葉に目を見開く静達。
「エンデヴァーさん…! ごめんなさいっ」
腕を引かれながら静が後ろを振り返る。
ユラユラと彼の象徴というべき炎と共に、その口が動く。「頼んだぞ」そう告げられた気がした。
「一体何があったの?」
「緑谷からメールが届いた。照己にも来てる筈だ」
並走しながら端的に質問に答えた轟の言葉に静も自身の携帯を取り出す。
そして一括送信で位置情報だけが送られてきたそのメールを見て、数秒意味を考えた。
緑谷は意味なくこういうことをする人物ではない。となると彼は今、危機的状況にあり応援を求めているということになる。
轟もそのように考えたから行動に移したのだろう。
どうか無事でいて。
そう願いながら静と轟は走るスピードを速めた。
▽▲▽
「緑谷、こういうのはもっと詳しく書くべきだ。遅くなっちまっただろ」
「大丈夫です。数分もすればプロも現着します」
そうして辿り着いた先には、地面に伏せる緑谷と飯田、そしてヒーロー殺しがいた。
轟が氷結と炎熱でヒーロー殺しを威嚇し、その間に静がテレキネシスで緑谷達を後方へと下がらせる。
対するはヒーロー殺しステインは、見事なその連携を見て舌舐めずりをした。
「2人共そいつに血ィ見せちゃ駄目だ! 多分血の経口摂取で相手の自由を奪う! 皆やられた!」
緑谷の言葉にそれで刃物を使用しているのかと轟が納得する。
だが静と轟の個性は彼らとは違って中遠距離型。距離を保ったまま戦えば勝機がある。
そう、思ったのもつかの間。
ステインが飛ばしたナイフが轟の頬を掠め、そちらに気を取られている隙に彼はこちらとの距離を一気に詰めてきた。
その勢いのまま刀を振り翳すステイン。
そして素早い動きで回り込んだステインが轟の左頬を流れる血へと舌を伸ばす。
「っぶねぇ」
が、轟も即座に反応して炎を出現させ、距離をとらせた。
息つく暇さえ与えない攻撃。まさに強者だ。
けれど、負ける訳にはいかないのだ。
それら彼らを殺させてしまうのと同義。
轟は体育祭で見せた超規模の氷結を繰り出す。
自分より素早い相手に対し、自ら視界を遮ることになるがこれくらいの壁は奴なら簡単に壊すだろう。
「照己!」
「うん!!」
予想通りそれはステインの刀により砕かれてしまう。だが、それが狙いだ。
体育祭のときと同じように、静は粉砕された氷の壁の欠片を一斉に操作し、ステインへと飛ばす。
氷はステインの剣捌きにより防がれるが、数の多さで畳み掛け、その身体に傷をつけた。
さらに、いつの間にか動けるようになっていた緑谷がヒーロー殺しを壁へとぶつける。
「血を摂り入れて動きを奪う。僕だけ先に解けたってことは考えられるのは3パターン」
人数が多くなるほど効果が薄くなるか、摂取量か、血液型によって効果に差異が生じるかだ。
緑谷のその読みは当たっていたようで、「血液型……正解だ」とステインが呟く。
しかし、それが分かったところで、轟達の連携攻撃を避けられるほどの反応速度のヒーロー殺しに撤退できる訳でもない。
プロが来るまで近接を避けつつ粘らなければならない。
「僕が奴の気を引きつけるから轟くんと静ちゃんは後方支援を!」
「相当危ねぇ橋だが……3人で守るぞ」
「はい…!」
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