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「3日間、短い間でしたがありがとうございました。サイドキックの方からも貴重なご指導をいただくことができました」

比較的軽傷だった静と轟は病院を退院し職場体験に戻っていた。そして早くも最終日、静雄英での勉強も常に新しい発見があるが、この職場体験ではプロを身近に感じ、自分に何が足りないのか知ることができた。
エンデヴァーの直接的な指導をもらえなかったのが残念だが、確かに有意義な時間だったと言えよう。

心からの感謝を述べる。だが、ふと浮かんだ疑問が気になっていた。

「あの、最後に質問しても良いですか?」
「何だ」

―――どうして私を指名したんですか。

指名は2票まで。彼の息子である轟を指名するのは当然として、静にもう1票を投じたのには疑問が残る。

相澤がヒーロー名考案時に説明していたように将来性に興味を持っているというのならば、体育祭1位の爆豪を指名する筈である。

「君のその個性、鍛えればさらに応用が利く良い個性だ。
俺の元には様々なサイドキックがいるからな。職場体験で身に着けられるものは多い」

やはりエンデヴァーは静の個性を踏まえて、彼女に合った鍛え方を考えてくれていたようだ。

「まぁ、あとは体育祭で見せた風を起こす技…あれは焦凍との個性の相性も良い」

最後には結局息子のことを思っての理由があったが、そこもエンデヴァーらしいかもしれないと静は心の中で小さく笑った。

▽▲▽

明くる朝、A組の教室へ集まってくる生徒たちはそれぞれに体験してきたプロヒーローの元での経験を話し合い賑わっていた。
ピッチリ8対2に髪型を分けられた爆豪、何かの武闘に目覚めたらしい麗日を始めとする1年A組の面々には良くも悪くも変化がみられた。

「ま、一番変化というか大変だったのはお前ら4人だな!」

上鳴が上げた声に、ヒーロー殺しと一戦を交えた静達へと注目が集まる。

「命あって何よりだぜマジでさ」
「エンデヴァーが救けてくれたんだってな!流石No.2だぜ」
「……そうだな。救けられた」

轟と静の席がある教室の隅に固まっていた彼らはお互いに顔を見合わせ、面構たちに言われた通りに話を合わせた。

これまで17名ものヒーローを殺害したステインこと赤黒血染の逮捕はメディア各方面で大々的に報じられた。
彼の思想、主張もネットニュースや様々な雑誌などで取り上げられている。

某SNSから流れてきたその一部を見た上鳴は、でもさァと思わず口を開く。

「確かに怖ぇけどさ、動画見ると一本気っつーか執念っつーか、かっこよくね?とか思っちゃわね」

瞬間凍る教室の空気に、失言だったと気付いた上鳴がすぐさま飯田に謝罪する。

が、飯田は「確かに信念の男であった」と彼の言葉を認めた。

「ただ奴は信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ。
俺のようなものを出さぬためにも……改めて、ヒーローへの道を俺は歩む!」

さぁそろそろ始業だ、全員席に着きたまえ!
ここ数日聞こえてこなかった飯田の号令がみんなに向かって発される。うるさく、時にうざったくもあるけど、ようやく飯田らしさが戻っていた。

その日の午後、ヒーロー基礎学の授業ではオールマイトによる救助訓練レースが行われた。複雑に入り組んだ迷路のような密集工場地帯を舞台に、要救助者をいち早く見つけ出し駆けつけ助け出す。シンプルでありながら情報収集力と機動力が問われるヒーローに必要な要素が組み込まれた内容となっていた。
生徒たちは5人4組に分かれ、スタートと同時に一斉にどこかにいるオールマイトを見つけ出す。最初の一組がそれぞれバラバラの位置に配置され、開始の合図を待った。

「飯田まだ完治してないだろ?見学すりゃいいのに……」
「クラスでも機動力いい奴が固まったな」
「うーん…強いて言うなら、緑谷さんが若干不利かしら」
「確かに。ぶっちゃけあいつの評価ってまだ定まんないんだよね」
「何か成すたび大ケガしてますものね」

大画面に第1グループ、緑谷、飯田、芦戸、瀬尾、尾白が映し出される。
それぞれの動き、手段を見て学ぶいつもの訓練形式だ。

「トップ予想な!俺瀬呂が一位!」
「ああ、うーんでも尾白もあるぜ」
「オイラは芦戸!あいつ運動神経すっげーぞ」
「デクが最下位」
「ケガのハンデはあっても飯田くんな気がするなぁ」

スタートの合図が鳴り響き5人が一斉に動き出す。
肘からテープを発射し瀬呂がまず飛び出し、芦戸が足から溶解液を出し滑るように大きな配管の上を移動していく。それぞれに鍛えられた体幹とバランス感覚が必要とされる動き。それに尾白も飯田もついていく。

「ほら見ろ!こんなごちゃついたところは上を行くのが定石!」
「となると対空性能の高い瀬呂が有利か」

見学の生徒たちは観戦しながらも自分の番となった時に役立つ手段を考える。
しかしその瀬呂を追い越し前に飛び出た、緑谷。
緑谷は足に制限をかけた超パワーを集中させ、それをスピードに活かし工場地帯を飛び跳ね駆け抜けていく。クラス中が初めて見る緑谷の俊敏な動きに感嘆を漏らす。

「あ!」

パワーを出し過ぎれば着地出来なくなる。抑え過ぎれば飛べなくなる。緑谷は常に5パーセントを意識し緊張感を持って飛んでいくも、足元の不安定な太い配管の上でバランスを崩しそのまま落下してしまい、結果一位は瀬呂のものとなった。無念にも落下し遅れを取った緑谷は最下位、先頭グループはみんなの元へ戻っていき、次いで2番手グループがスタート位置へ向かった。

「デクくん、すごい!なになにあの動き!」
「うん、出久くん、ビックリした…!」
「いやぁ、まだうまく調整出来なくて……」

みんなの元へ戻ってくると麗日が駆け寄ってくる。
いつも超パワーを発揮してはその度反動が激しくケガをして不能となっていた緑谷がパワーを制御できるようになっている。これはかなりの躍進だった。しかしそれに納得の行かない爆豪は緑谷を強く睨み、緑谷はおずおずと距離を取った。

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