カッと良く晴れた夏休み初日、ついに迎えた林間合宿当日。青い空、白い雲の下、雄英の正門前に集うヒーロー科一年生たち。

 「A組のバスはこっちだ!席順に並びたまえ!」

 今回の合宿は普段関わりの少ないB組も合同で行われる。集合時間にしっかり集まった生徒たちはそれぞれ抱える大きなバッグを詰み込みバスに乗り込んだ。
 前に立つ相澤が全員を確認しおはようと声をかけると生徒たちもおはようございますと返す。

 「一時間後に一回止まる。その後はしばらく……」

 走りだしたバスはすぐに高速道路へ乗り、誰も行き先を知らずに進んでいく。
 もうすでに始まっている強化合宿に相澤はうしろの生徒たちを振り返るが……。

 「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」
 「バッカ夏といやキャロルの夏の終りだぜ!」
 「終わるのかよ」
 「ポッキーちょうだい」
 「席は立つべからずなんだ皆!」
 「しりとりのり!」
 「ねぇポッキーをちょうだいよ」

 強化合宿……、だが生徒たちはガヤガヤ遠足気分で大はしゃぎ。誰も聞いてやしない。いつもならここで相澤の睨みが入りシンと静まるところだが、相澤はまァいいかと座り直した。わいわい出来るのも今のうちだけだ。

 高速道路を走っていたバスは公道に下りると深い山山の合間を走り、出発してから一時間が経った頃に停車した。おしっこおしっこ、と駆け出ていく峰田に続いてバスを下りていく生徒たちは山に囲まれた清々しい空気の中で思い切り体を伸ばした。
しかしそこは山の中腹に位置する停車場で、生徒たちはアレ? と辺りを見渡した。

 「何ココ、パーキングじゃなくね?」
 「ねぇアレ?B組は?」
 「トトト、トイレは……」

 目下には広大な森が広がり、どこまでも見渡す限りの山々。大自然が広がるそこはサービスエリアでもなければ休憩所でもない。何の目的もなくでは意味が薄いからな。意図の掴めない生徒たちの前で相澤が呟いた。

 「よーうイレイザー」
 「ご無沙汰してます」

 ザ、と踏み締め現れた影に頭を下げる相澤。

 「煌めく眼でロックオン!」
 「キュートにキャットにスティンガー!」

 ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!ビシッとポーズを決め生徒たちの前に現れたコスチュームを纏った女性ヒーロー、マンダレイとピクシーボブそして一人の少年。

 「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ」
 「連名事務所を構える4名一チームのヒーロー集団、ワイプシ!山岳救助を得意とするベテランチームだよ!」

 プロヒーローの登場に緑谷は興奮し拳を握った。

 「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」
 「遠っ!!」

 ピッと黒髪ボブの女性ヒーロー、マンダレイが遠くの山を指差す。

 「え…?じゃあなんでこんな半端なところに……」
 「いやいや……」
 「バス……戻ろうか、な、早く……」
 「今は午前9時半。早ければぁ…12時前後かしらん」
 「ダメだ…、おい……」
 「戻ろう!」
 「バスに戻れ! 早く!!」
 「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

 大慌てでバスへと駆け戻る生徒たちをよそに、ロングヘアをなびかせるピクシーボブは土の地面に両手を着く。すると生徒たちの足元がゴゴゴ…と揺らぎ始めた。

 「わるいね諸君、合宿はもう始まってる」

 次第に波打ちだす地面は水のように跳ね上がり、生徒たちをも巻き込んで崖から大波のように土砂を崩す。
 土に呑まれ押し出される生徒たちは遥か崖下へ吹き飛ばされ、森の中へと突き飛ばされた。

 「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間、自分の足で施設までおいでませ!この……魔獣の森を抜けて!!」

 静は落ちる直前、個性で浮遊したので汚れはしなかったが、土砂ごと森へと落ちてきた生徒たちは意味もわからぬまま土から這い出る。白い制服のシャツを汚した土を払い、高いところから微かに降ってきたマンダレイの声を聞いた。

 「魔獣の森……!?」
 「なんだそのドラクエめいた名称は……」
 「雄英こういうの多すぎだろ……」
 「文句言ってもしゃあねぇよ、行くっきゃねぇ」

 突然の奇行でも入学以来頻発する試練を超えてきたA組はすでに慣れており、土砂から下り遥か遠くにあるという宿泊施設を目指すことにした。バスを降りて以来ずっと尿意をしたためていた峰田は突然のハプニングにも耐え抜き、今にもはちきれそうな膀胱を押さえ森の奥へ駆けていった。
 そんな峰田の前に現れた、巨大な異形生物。

 「マジュウだー!!?」

 マンダレイの言ったものはこれかと生徒たちは驚愕する。

 「静まりなさい獣よ、下がるのです!」

 突然現れた獣に咄嗟に指示する口田だったが、動物を使役する口田の個性がそれには効かず生徒たちに襲いかかった。何故……、戸惑う口田の両脇から飛び出す緑谷、轟、飯田、爆豪。4人はその獣が生物ではなく土で出来た異物と見極め魔獣を撃破した。

 「ななな、なんなのアレー!?」
 「魔獣だよ!魔の獣だよ!!魔獣の森だあー!!」

 緑谷の超パワー、轟の氷結、飯田のレシプロ、爆豪の爆破。破壊された魔獣に生徒たちは一旦は落ち着くも、目の前に広大に広がる森の静けさに次の恐怖を感じた。
兎にも角にも行くしかないと、近接戦闘に長けた生徒を先頭に宿舎があるであろう方角に向けて走り出すも倒しても倒しても土魔獣が襲ってくるのでキリがない。
 ただでさえ足場の悪い森の中、このままでは果たして三時間でつけるのかという気持ちになってきた。

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