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 合宿三日目も、朝から個性強化の訓練に明け暮れていればあっという間に過ぎてしまうというもので。
 すっかりあたりも暗くなったその夜。雄英高校ヒーロー科一年の面々は、プッシーキャッツ所有の森の中でお楽しみイベントと相成った。

 「……し、静ちゃん大丈夫?」
 「だ、だ、だいじょ………ば、ない」

 クラス対抗ということで脅かす側の先攻はB組、彼らが待機する森にA組は二人一組ずつ出発していくという手筈である。悲しきかな相澤に補修授業へと引きずられていった5人を除き、残ったメンバーでクジを引いたなら静は緑谷とペアであった。見るからにおどろおどろしい雰囲気を放つ夜の森を目の前にして、こういった類のものは苦手であったのか、静は元々白い顔をさらに青白くさせプルプルと震えてしまっていた。

 「…脅かすって……攻撃は、してこないんだよね…別に、危害はない、んだよね……」
 「だ、大丈夫だからっ!肝試しはそんなデスマッチみたいなものじゃないからね!」

 一体肝試しにどのようなイメージを持っているのだろうか、未だに身体を震わせながら静は出久の腕にしがみついて離れようとはしない。
 一方そんな二人を刺すような目で見つめる男が二人。その視線に緑谷が気づかぬはずがなく、正直これからの肝試しよりそっちの方が恐ろしくて冷や汗が止まらない。そして悪魔はやってきた。

 「おいデクてめぇ!何くっついてやがんだ死ね!」
 「か、かっちゃん!これは不可抗力というか、僕は別に自分からじゃなく…っ!!」
 「オレと代われやクソナード!!」
 「いやそんな無茶な!?」

 ここが地獄じゃなければどこが地獄だというのだろうか、すでに肝試しが始まってる感バリバリであった。

 「(静ちゃんいろいろ当たってるし、かっちゃんは怖いし、ていうか何で轟くんまで!?)」

 静がそれは力任せに己の腕を抱き込んでくるので、緑谷の気分としてはいささかフワーオな感じではあったのだが、これは肝試しが終わったあとで制裁が与えられること間違いなしだ。
 さらに静に関した出来事には今まで爆豪しか当たってこなかったというのに、ここにきて何故か轟まで痛いぐらいに此方を見てきている。
 結局、友人の想い人の胸部の感覚を味わってしまったことを心の中で必死で謝罪する出久であった。

 そうして始まった肝試しは3分置きに一組ずつ、1組目は常闇・障子ペア、2組目である轟・爆豪ペア、3組目の耳郎・葉隠ペア、4組目の八百万・青山ペアと次々に出発していく。前でドキドキと待機している様子の麗日・蛙吹ペアの出発を控えて、その次は緑谷と静の番である。待機中も静はずっと緑谷の腕にしがみついたまま離れなかった。
 前でドキドキと待機している様子の麗日・蛙吹ペアの出発を控えて、その次は緑谷と静の番である。待機中も静はずっと緑谷の腕にしがみついたまま離れなかった。

 「なんか想像以上にすごそうだね…」
 「……む…無理よ…わたし、こういうの…」
 「こういう暗い森の中というのも肝試しの恐怖を煽るんだろう、流石雄英!」
 「なーんかここも出そうだよなー」
 「ふ、二人とも、あんまり言わないであげて………静ちゃんが」

 飯田や峰田のとどめのような言葉に、静の身体はピタリと震えが止まった。が、しかし。

 ―――ガサッ

 背後から聞こえた茂みが動くような音。

 「…こ、こないでぇええ…!!」
 「静ちゃん!?!?」

 その途端、静の足は目前の森に向かって全力で走り、否、個性で浮いたまま飛んで行ってしまった。暴走機関車の如きダッシュを決められてしまったため緑谷は目を点にした。

 「あっちょっとシズキティ!まだよ!コラー!!」

 静は皆の制止も効かず、一瞬にして夜の森の闇の中へと消えて行ってしまった。どうやら幽霊でも現れたかと思い込み、恐怖のあまり逃げ出してしまったらしい。それも渦中の森へ入ってしまう程のパニックを起こして。

 そして、茂みの音の正体は―――

 「鳥…?」

 羽を休めにきていた只の鳥だったのであった。

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