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暫く飛んでから、ようやく静は思考を取り戻したのかピタッと止まり地に足をつけた。しかし、それと同時に絶望する。
「……ここ…どこ…」
何故か森の中にいる自分。先ほどまで緑谷達と一緒に外で待っていた筈なのに、なぜか今は一人だった。
「皆、どこにいるのっ…?」
孤独と恐怖から目頭がじわっと熱くなり、我慢していた気持ちが遂に溢れそうになる。そのときだった。
『――皆!!!』ひどく焦った様子のマンダレイの声が脳裏にこだまする。その内容は誰も、静だって予想すらしていなかった最悪の事態を告げるものだった。
『敵(ヴィラン)二名襲来!!他にも複数いる可能性アリ!動ける者は直ちに施設へ!会敵しても決して交戦せず、撤退を!』』
言葉を受け止めて思わず見上げた空に、不気味な黒煙が朦々と立ち上っていることに静はようやく気がついた。
「(どういうこと……!?)」
静のそれまでの思考は一瞬にして取り払われた。
マンダレイのテレパスは続いて、動ける者は直ちに施設へ向かうこと、敵に遭遇しても決して交戦せず撤退することを指示した。
静の胸が凍るように冷えていく。ついこの間、ショッピングモールでこの恐怖を思い出したばかりではないか。
学校側はこうならないために様々な対策を練っていたはずだった、だからこれは想像しうる最悪の事態だ。
なんで今、ここで、どうしてとたくさんの疑問が頭を駆け巡ったが、最早どこに敵が潜んでいるのか分からない状況に、静とてその場におとなしくしているわけにはいかなかった。
しゃがみこんだ地面からは土の匂いが、漂ってくる煙からは何かが焦げたような匂いがする。それが妙に生々しく感じられて、これが夢ではないのだと思い知らされた。
静は目の前に続く道を見て、それから今しがた走ってきた道を振り返る。
「(交戦は出来ない……ふつうに考えて、来た道を戻るべき。でも…どうしよう、あっちも煙が……)」
恐らく皆も煙からは避けている筈。さらによく見れば、煙だけでなく何やら薄紫のような煙までうっすらではあるが遠くに確認できる。
「(…もしかして、…有毒ガス…!?)」
静は額に脂汗を滲ませたまま、最低限己にできることがないかと思案を巡らせた。そうして心に決めると、自分の腕を上空へと伸ばし大気を操る。風を起こしてガスの進行を抑止するのだ。ただし火事で煙が蔓延している以上、大きな風は出せないが微力な力でも効果はある筈。
間接的にも皆を支援できると―――そうなるはずだった。
「流石は雄英生、そんなこともできるのかい?」
「っっ!!」
今まさに風が起きるというところで静は驚愕した。
知らない声のする方へ顔をあげれば、少しばかり離れた木の上にシルクハットをかぶった仮面の男がかが立っていて、直感した―――敵だ。
静はすぐさま地面にあったたくさん石や葉を自分の傍に浮かせる。相手がどんな個性を使っているのかわからないが、敵と一対一で相対するのは危険だ。
石と葉、先ほどの風とを応用して小さなつむじ風を起こし、それに紛れて静は自分を浮かせ飛ばした。
結局どさくさに紛れたため施設とは反対の方向へと逃げ出してしまった。痛手だが、自分一人が遭遇してしまったことを考えると最早森全体に敵の魔の手が広がっていると考えてもおかしくない。
進んでいる方向は未だ勢い弱まることなく黒煙の上がり続ける森の奥だ、そちらにも確実に敵がいるであろう。
これはとんでもない夜になってしまったと静は思う。恐ろしすぎてまたちょっと泣きそうになってしまった。
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