グラウンドの状態を平等にする為に別のレーンに立ち準備に取り掛かろうとした刹那、ペアも隣に立った。徐ろに顔を向けた先には、アイボリー色のつんつん頭に鋭いつり目の中に潜むサンストーンの瞳。
 緑谷と対照的に出来ないことが無く、いつも褒められていたガキ大将のいじめっ子。緑谷を最も出来ない奴だと笑いものにし緑谷を泣かせていた。その度に仲裁に入り、ガキ大将に刃向かっていた幼き頃の自分。彼の性格に難を示す反面、何でも一番を取りどんな相手にも勝利する姿に憧れを感じていた、自分。

 「てめェのクソザコな“個性”なんざ相手になんねぇな」

 爆豪勝己。静のもうひとりの幼馴染。彼もまた教室で目が合わさった時、幼馴染の静と気付いていた。幼き頃と変わらない自信に満ちた気色も、デモンストレーションでソフトボール投げをした時の敵と思われても可笑しくない粗野も、人を見下す態度も、昔と変わらない。恐らく今日まで何の弊害もなく自尊心と共に歩き、全てが自身のシナリオ通りに進んだに違いない――緑谷出久の在籍を除いて。
 緑谷と違い爆豪は約10年振りの再会を感じさせぬ様子を見せる。幾らか凶暴に拍車が掛かった爆豪には、たどたどしい緑谷と違い、下手に取り繕う必要が無く気持ち冷静でいられた。静の双眼を彩るラピスラズリの瞳を爆豪の瞳から逸らせば、無視と解釈した爆豪から「なんか言えや」と怒気を滲ませた声音が頭上から落ちてきた。畏怖することなく依然として口を噤み、静は自分と隣を走る爆豪のコース幅を見遣る。

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