13
「じゃあトリをつとめるのは……ソフィア!!
いっちょスゴいの頼むよ〜〜〜!!」
最後に回ってきたのはソフィア。しかしまさか自分にまで回ってくるとは思わず、彼女は戸惑ったように声を上げた。
「私は連れてこられただけで…」
「あらあら?もしかして料理できないとか?ソフィアったら意外〜」
そんなソフィアを挑発するように高々と笑っているのはティオネ。
さきほど自分は料理すら作れなかったというのをもう忘れているのか、どの口がそれを言うとソフィアは思ったが、こうもあからさまな喧嘩を売られて黙っているわけにもいかなかった。
「…いいよ、そこで黙って見てて」
包丁を手に取り、炊事場へと立ち上がった。
そして―――
「な、なんて無駄のない動き!」
「すごい…ソフィア」
「まるで台所に立つ母親のようです…!」
「ぐっ…、そ、そんな…」
トントン、と規則正しいリズムを刻む包丁の音。
グツグツと鳴る鍋の中に正確に測られた調味料を少しづつ入れていく。
そして最後に味見をすると――
「…できた。ロールキャベツポトフ」
「「「おおおおお!!」」」
完成した料理にティオナたちの拍手は止まらない。
レフィーヤも同じく上手に作っていたが、ソフィアのはそれだけではなく、
「レフィーヤの使っていた野草…参考にさせてもらったから食材に困らなかった。
それからアイズ、このポトフは具材を分ければスープにもなる…さっきの乾パン……入れてもいいよ」
「「!!」」
先ほどレフィーヤが落としてしまったシチューに使われていた野草と、アイズが切っただけの乾パン料理のフォローとでもいうのか、少しそっぽを向いて照れ隠しをしながら言う。
ソフィアのさり気ない気遣いにレフィーヤとアイズは表情を綻ばせた。
「ソフィアさんんん」
「ありがとう…」
「べ、別に…最後だったから…」
感極まって泣くレフィーヤと、感謝を述べるアイズ、恥ずかしそうに顔を下に逸らしたソフィア。
三人の輪から外れたアマゾネス姉妹はというと、悔しそうに地団駄を踏む姉をなだめる妹がいた。
「何よー!しれっと作っちゃって!」
「ほらほら落ち着いてティオネー」
「何やら上手そうな匂いがするな」
「ふむ、お前たちもたまには女性らしいことをする様になったか」
炊事場の方へとやってきたのはガレスとリヴェリアであった。
ファミリアの中でもお転婆と呼ばれる少女たちが料理をしていると分かれば、もの珍しそうな目で見ていた。
するとそれに気づいたソフィアがお皿にポトフを一人分よそってリヴェリアの元へと駆け寄った。
「リ、リヴェリア様、これ作りました…良かったら…」
「私にか?」
コクリと頷いたソフィア。リヴェリアは渡されたスプーンで一口運ぶ。
「うん…美味しい」
「っ、ありがとうございます」
リヴェリアの優しい言葉に心底嬉しそうな表情を見せる。
普段はクールなソフィアも、心を開いているリヴェリアの前では年相応の笑顔を見せるのであった。
「これ(料理)は独学で覚えたのか?」
「いえ、昔…イザナミ様が教えてくれて……お、お嫁に行くときに困らないからって」
「うん確かに間違っていないね。僕も料理上手な奥さんが欲しいかな」
「…ッ!!」
「フィン、いつからいたんだ」
「最初からだよ。ところでソフィア、それは僕も貰ってもいいのかい?」
「こ…これはリヴェリア様の」
「でも、皆食べているようだけど」
「え、」
フィンに後ろを指さされ、ソフィアが振り返った先にはアイズやティオナたちが、鍋の中からロールキャベツやらスープやらを勝手に食べていたではないか。上手い上手いと言いながら。
「まさかキミが花嫁修業で料理を習っていたとはね。僕のお嫁さんになるために頑張ってくれるなんて嬉しい―――」
脱兎の如く。
ソフィアはフィンの言葉を聞き終える前にその場から逃げ出してしまった。
「やれやれ…またか」
「いい加減に学習しろ、フィン」