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「ではなソフィア、己を大事に」
「…はい」
「ロキ、この子を頼んだえ」
「任せたれぃ!ソフィアちゃんはウチが大切に育てたる!」
広大な地下迷宮、通称ダンジョンを中心に栄える迷宮都市オラリオ。
“小妖精(フェアリー)”という二つ名を持つ第一級冒険者であるソフィア・サーバは、女神ロキの運営する探索系ファミリアに入団することになった。
それまでは女神イザナミが運営するファミリアに所属していたが、主神が天界へと戻らなければならなくなり改宗することになったのだ。主神を敬愛していたソフィアは、当初他のファミリアに入る気は更々なく、冒険者自体をやめようかと考えていたが、そこに突然イザナミが連れてきたのがロキであった。
イザナミの勧めがあったことは勿論、ロキ・ファミリアが高レベルな冒険者が多数在籍する最強ファミリアの一角であったことから、今までとは違う冒険ライフになるかもしれないという期待から入団を希望したのである。
「神ロキ、これからよろしくお願いします」
「よろしゅうな〜!そんじゃ早速、うちのファミリアの古株たちを紹介するわ!って言いたいとこなんやけど、
今日はあいつらダンジョンに潜っとるらしいからなぁー。そろそろ帰ってくる頃やと思うけど」
ロキに部屋で待っていろと言われ、ソフィアはそのまま部屋に残った。
そして一人になったと分かると途端、緊張が和らいだのか溜息をついてしまった。
冷静沈着といわれる彼女だが、本当は人付き合いが慣れていないだけで中身は普通の女の子である。
このファミリアで自分は溶け込めるだろうか、新しい環境に緊張と不安が宿る。
―――できるだけ表情よく、良い印象を与えよう。
頬に手をあて心の中で意思を固めた。
すると、扉の向こうから数人の話声が聞こえてきた。恐らくロキが戻ってきたのだろう、冒険者たちと一緒に。
「待たせてしもうてすまんなぁ、ウチの可愛い小妖精ちゃーん!」
「ロキ、抱き着こうとするな。新参者が驚いてしまうだろう」
何故かロキがソフィアに向かって抱き着こうと走ってきたが、それを止めたのは一緒に部屋に入ってきた深緑の長い髪を持つハイエルフの女性冒険者だった。
慣れた手つきで制しているあたり日常茶飯事なのだろう。
「せやかてあの小妖精ちゃんやで!まさかこんな美少女が手に入るなんて夢みたいや!
あ、ソフィアたん、こっちは副団長のリヴェリア!ママって呼んだって!」
「誰がママだ」
「んでもってこっちの髭結びのオッサンがガレス!」
「もっとマシな紹介はないのか」
副団長二人を紹介され、ソフィアはどちらにも挨拶を返し頭を下げた。
「そして最後に、ファミリアの団長を任せてる―――」
「フィン・ディムナだ。同胞(パルゥム)が入ってくれて嬉しいよ、これから“末永く”よろしく頼むよ」
「………っ、!!」
彼らの後ろから現れた一人の小人族の冒険者。
彼の顔、言葉、声、全てを目にしたソフィアが取った行動とは、
「え、ちょ、ソフィアたん!?」
逃走であった。