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「ねぇねぇ!小人族(パルゥム)の新人ちゃんってキミだよね!!」
初めてファミリアの食堂でご飯を食していたソフィアの目の前に現れたのは、元気や明るいといった言葉がよく似合うアマゾネスの子だった。
「ティオナさんっそんな突然迫ったらびっくりしちゃいますよ!」
そしてアマゾネスの子を制するように続けてやってきたのは、礼儀正しいエルフの少女。
「だってさー噂のLv.6だよー?話してみたいじゃん」
「だからって…ソフィアさんはここに来たばかりなんですからまずは自己紹介から入らないと!」
「あ、そっか!あたし、ティオナ!よろしく!」
「私はレフィーヤ・ウィリディスといいます。よろしくお願いします、ソフィアさん」
「………」
「あれ?」
「えっとー…」
話を進めていた二人から一斉に自己紹介を受けたソフィアは、あまりの話のスピードの速さに思考が追いつかなかった。
突然声をかけられたかと思えば、名前を名乗られ、手を差し出された。
普通に考えれば、自らも挨拶を返せば済む話なのだが…如何せん、対人と会話する経験値が赤子並みのソフィアにはレベルが高すぎた。
「レフィーヤ、ティオナ。ゆっくり話を進めてやってくれ、ソフィアが混乱する」
「リヴェリア様!」
「なんでー?」
「本人曰く、今までひとと上手く交流してこなかったらしくてな。どう接したらいいか彼女も思案しているようなんだ」
いつの間にかシルヴィアの隣に現れたリヴェリアが、まるでシルヴィアの気持ちを汲んでいるかのように説明をする。
「ソフィア、この二人はお前と歳も近い。ダンジョンでパーティを組むことも多いだろう。仲間として挨拶をしておきなさい」
「仲間……」
「さすが保護者」
まるで母親に促された子供のように、ソフィアは椅子から立ち上がってティオナたちに向かって頭を下げた。
「ソフィア・サーバ…よろしく」
「はっはい!こちらこそです!さっきはいきなりですいませんでしたっ」
「おおー喋った!」
人形のように固い表情ではあったが、彼女なりに今までの自分とは変わろうとしている様子は、どこか愛らしくレフィーヤなんかは頬を染めていた。
「お前たち時間があればソフィアに本部を案内してもらえるか?まだ分からないことも多いだろうし、案内役になってやってほしい」
「分かりました、お任せください!」
「おっけー!」
***
本部内を一緒に歩き、ティアナとレフィーヤに説明を受けるソフィア。
今まで関わったこともない人種に戸惑いつつも、彼女たちの人の好さに、ソフィアも少しづつ二人に反応をみせるようになっていった。
しかし、ティアナの一言でそれまで和やかだった空気も一瞬で変わってしまったが。
「ソフィアってフィンと同じ小人族(パルゥム)なんだよね!小人族(パルゥム)って見た目幼いけどさ、ソフィアは……あれ?どしたの?」
「ソフィアさん…?」
急に立ち止まり表情を強張らせたソフィアに違和感を感じた二人。
「な、んでもない」
「いやいや明らかにおかしいじゃん。どうかした?具合悪い?」
「無理はいけませんよ。もしよければ医務室に…」
「平気、大丈夫だから」
「ふーん…、あ!フィンー!ねぇソフィアがさー!」
腑に落ちないといった様子のティオナだったが、廊下の向こう側に見えた人影に気づき大声を上げる。
ソフィアと同じくらいの身長に、金糸の髪をした少年のような風貌はどう見ても団長だった。
その彼の隣には、ティアナと同じ顔をしたアマゾネスの女性もいた。
「ティアナにレフィーヤ、それに…ソフィアも。もう仲良くなったのかい?」
フィンに声をかけられ、シルヴィアはできるだけ視線を合わせないように下を向いてお辞儀をした。
しかし何故か視線を感じてしまう。それは頭上から感じられた、アマゾネスの女性からだった。
顔のつくりはティオナとそっくりだが、長く伸びた髪や、身体は彼女の方が女性らしかったりと異なる部分は多い。
「今案内してるとこー。ソフィア、こっちはあたしの双子の姉でティオネ!ちょーっと怖い顔してるけど、あんま気にしなくていいからね」
「怖いって何よ。私は普通に見てただけ。別にこの子が噂の小人族(パルゥム)で、私の強敵になるかもとか、結構胸があったし顔もいいからってビビってるわけないでしょ!?」
「あー…全部言葉に出てるってー」
澄まし顔をしていたかと思えば、まるで般若のような怒り顔をみせるティオネ。
妹であるティオナが荒ぶる姉をどうどうと抑えていた。
けれどそれすら今のソフィアには安堵を感じられる要素のひとつになっていた。
―――見られている。
確実にこちらに目線を向けてきている彼の存在から気を紛らわすには。
「…ソフィア…、きみ、」
「っ!」
声をかけられたことでビクッとしてしまった。そしてついに、
「ソフィアどこいくのー!?トイレそっちじゃないよー!?」
「ティオネさんそんな大声で言わなくてもっ」
「ンー、またも逃げられてしまったか」
「いやぁ〜!団長が取られるぅうう」