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「…リヴェリア、折り入って頼みがあるんだが」
「藪から棒になんだ」
「ソフィアとの仲を取り持ってほしい」
勇者(ブレイバー)という二つ名を持つ彼から発せられたとは思えない言葉が、リヴェリアの耳に入ってきた。
「僕は真剣なんだ。だが、彼女に伝えようにも、直ぐに逃げられてしまってね。これでは話すに話せない」
「お前がいかがわしい目であの子を見ているからじゃないのか、感じ取ってしまうのだろう。」
「いかがわしいって…心外だな。僕は普通に接しているつもりなんだが」
「そもそも初対面でいきなり求婚する方が間違っているのだ。まずは団長と団員として距離を縮めるべきだ、それくらいできねばこれからの遠征にも支障が出てくるぞ」
「それは勿論分かっているつもりだ」
「…いいや!お前は全く分かっていない!」
バンッと手を机に叩きつけたリヴェリアに、フィンも流石にたじろいでしまった。
リヴェリアの険しい顔ほど怖いものは中々ないだろう。
「あの子は今まで異性どころか、人と関わったことが殆どないんだぞ。かと言って強引に近づこうとすれば驚いて固まってしまう!それほどまでに繊細なんだ!いいか!今度あの子に変なことを口走ったらその口縫いつけるからな!」
「リ、リヴェリアなにもそこまで怒らなくても…」
「とにかくまずはソフィアと普通に接することができるようになってから、結婚だなんだのはそのあとだ。いいな」
まるで小姑のように厳しい言葉を言うリヴェリアにフィンも従うしかないのであった。
***
フィンがリヴェリアにお叱りを受けている頃に、ソフィアの方はファミリアの本部内である人と対峙していた。
と言っても廊下を歩いている際に突然通路が塞がれてしまったために立ち止まるしかなかったのだが。
どうしようかと悩んでいると、向こうの方から声をかけてきた。
「アンタ、団長を追っかけてウチに入ってきたわけ?」
何を言い出したかと思えば、アマゾネスの彼女―――ティオネの言葉にソフィアは初め意味が分からなかったが、自分が馬鹿にされていることは何となくわかった。
「自分が小人族(パルゥム)だからって団長に気に入られるとでも思ってる?元イザナミ・ファミリアっていえば小規模のファミリだったし、ウチのファミリアに入って勇者(ブレイバー)の女にでもなれば名声が上がるとか考えてるわけないでしょうね。もしそんなことを少しでも―――「どういう意味」
ソフィアがティオネの言葉を遮って言う。
「それ、どういう意味…。小規模だったから何、イザナミ様のことを馬鹿にしているの?」
「はぁ?別にそうは言って、」
「許さない」
「っ!!?」
ガキィンッという音と共にティオネは身をのけ反って構えに入った。
見れば先ほど自分がいた場所にはソフィアが持つ白い愛刀が床に刺さっているではないか。
「なっ、いきなり何すんのよ!」
「私のことはどう言おうと構わない。でも…イザナミ様を悪く言うことは許さない」
「だから別に馬鹿にしたわけじゃないっ、って!少しは聞きなさいよ!」
ティオネの弁解の言葉に、聞く耳持たずといったソフィア。
大人しく静かな子で怒ったことなど聞いたこともなかったため、それほどまでにソフィアにとって元主神の存在が大きいものだと伝わってくる。
すると騒ぎを聞きつけた他の団員たちも駆け付けてきた。
「ちょっと何やってんの二人とも!?」
「おいおい、ありゃ例の小人族(パルゥム)じゃねーか。ハッ、あのバカゾネスのやつさっさと潰しにかかったってかァ?」
「ティオネさんっ、いくらソフィアさんが恋敵だからって真剣で戦うなんて…!」
「ちょっとレフィーヤ!私からなわけないでしょ!」
ソフィアの攻撃を寸でのところでかわしているティオネがレフィーヤに叫ぶ。
「なんかソフィアの方が怒ってない?ティオネ―!一体ソフィアに何言ったのー!?」
「はぁ!?だから――「余所見」
ティオネが妹のティオナの言葉に振り返ったとき、確実に相手の動きから目を離してしまったのを、ソフィアは見逃さなかった。
ソフィアの刀がティオネ目掛けて振り下ろされる。流石のティオネも避けられる体勢ではなく、とにかく真正面からの攻撃だけは防ごうとした――――が、
ガキィンンッ、という武器がぶつかり合う音が響いた。
「…っ!」
「だ、団長!」
ソフィアの刀を上から槍で抑え込んだのはフィンであった。