18

一局終わって、ふと思う。

「……佐為、なんか変わったね」
《ふふふ、そうかもしれませんね》

ヒカルと佐為が久しぶりにやってきて、いつものように一局打つことになった。そこで巴は佐為の変化に気付く。
変化というよりは……寧ろ強くなっているような。

「なにかあったの?」
《実は私、最近は箱で碁をやってるんですよっ》
「箱で碁?なにそれ…ヒカル、最近なんか新しい事やってるの?」

横にいるヒカルに聞いてみれば、「ああ」と肯定が返ってきた。

「インターネットで碁を始めたんだよ。巴は知らねぇーだろ」
「ネット?…ていうかヒカル、パソコンなんか使えたんだ…」
「う、うるせー!」

純粋に驚きである。パソコンすら知らないような少年が、まさかネットデビューとは。

「それなら前に何回かやったことあるわよ」
「え、そーなの!?」
「まぁ、確かにネット碁なら佐為の正体隠さなくても良いもんね」
「そうそう。ちょうど夏休みに入ったし、知り合いのネカフェで毎日ネット碁三昧なんだ。巴は最近ぜんっぜん家に入れてくれねーし…ほんと何してんだよお前?」
「だからプロ試験受けてるの」
「その冗談はもう飽きたって言ってんだろー!」

巴は重い溜息をついた。初戦で3勝をなんとかもぎ取り、巴は無事に本選へ行けることになった。
ちなみに塔矢は予想通り3連勝でさっさと一抜けしていた。

「そっかー、ヒカルと佐為はネット碁か…よかったね佐為、色んな人と打てて」
《はいっ!》
「でもネットなんて強さピンキリでしょ?弱い人ばっかりと当たったりしない?」
《今日の者達は大したことはありませんでしたが…あの箱の中には非常に手強い者もいますよ!》
「ふぅん」
《それに…もうすぐ塔矢とも対局できます》
「え?なんでそこに塔矢が出てくるの?」

自分がしばらく会わないうちにすごい展開になっている。

「アキラってハンドルネームのやつに対局申し込んだらさ、なんでかわかんないけど数手打ってすぐ”日を改めて再戦したい”って言われたんだよ」
「なんでそれが塔矢ってことに…佐為、どうして?」
《半年前の一局…私が塔矢を一刀両断にした対局。あれと同じ手を向こうが打ってきたからですよ。おそらくあれは塔矢だと思います》
「ふうん…塔矢の方も、相手がヒカルじゃないかって予感したから、わざわざ再戦なんて申し込んできたってこと?」

となると塔矢は今頃大混乱だろう。目標にしていたヒカルは実は超弱くて失望して、それなのにネットで強かった頃のヒカル(佐為)に出会って。

「で、その対局っていつなの?私も見たいな」
「今度の日曜日だよ。10時から」
「――――――――――――え」

プロ試験本選の初日だった。

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