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件の子ども囲碁大会が終わった翌々日、ヒカルと佐為がまたも巴の家に訪れた。
「あのさぁ巴…俺さ」
「うん?」
リビングに2人を通して、お茶とお茶菓子を出して、それからヒカルの話をふんふんと聞いてやる。ヒカルはずっと浮かない顔だった。元気だけが取り柄みたいなところがある彼がこんなに落ち込んでいるのは珍しい。
「え、じゃあヒカル、囲碁大会行ったんだ」
「まーな。チョロッと見ただけだど」
《でもその後すぐ他の対局に口出ししちゃって、退場させられましたけど…》
てっきり行かないかと思ったのに。なにか心境の変化でもあったのだろうか。
しかし対局に口出しするなんて間抜けもいいところだ。最初に助言したのはきっとヒカルではなく佐為の方だろうし。この調子だとヒカルって外でも気にせず佐為と喋ってそうだから笑えない。ほどほどに自重しないと近所から変な子どもだって噂されちゃうぞ、少年よ。
「俺、ちょっと感動したなー。みんな真剣でさ」
「…そう」
「………俺もちょっと覚えてみよーかな、碁」
もそもそと体育座りをしながらヒカルが言った。これに喜んだのは佐為だ。
《ヒカル、碁が面白くなってきたんでしょう!》
「はっ?別にそんなんじゃねーよ…」
『またまた。昨日だって石の持ち方の練習してたじゃないですか』
「石の持ち方?」
《そうですよ。ヒカルってば石がうまく打てないんです。そんなに難しいことでもないのに》
「まぁ始めたばかりなら仕様がないよ」
《でもヒカルなんて真横にバシッと飛ばしちゃって》
横を見ればうんざりした様子のヒカル。
「けっ…おい佐為、交代だ交代!」
《あっ何するんですかヒカル!》
碁盤に座り込んでいた幽霊をシッシと払いのけて巴とヒカルが鎮座することに。
「ルールは大丈夫?」
「多分な」
「置き石はどうする?」
「いらねえ」
「いいよ。黒持ちなよ」
ヒカルが黒石、巴が白石を持ってそれぞれ一礼。その様を幽霊が興味深々で見つめていた。