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「…見つけた。」
“絶”を解いて木の上から飛び降りた。地面に着地すると、目的の女はようやくこちらに気付き、驚いたように凝視している。自分のことを覚えていないのではないかとも考えていたが、女の反応から見てそうではないようだ。
疲れているのか、それとも急に自分が現れて驚いているのか、女はその場から動かない。
「受け取れ。」
女を見下ろしながら、右手に持っていた黒いスーツケースを差し出した。女は目をしばたたかせ、その大きな瞳で不思議そうにこちらを視線を向けてきた。
「金」
「…お金?」
「お前の報酬ね」
そう言っても反応を示さない女に苛立ちを覚え始める。
「…ワタシを忘れたか?お前、ワタシに除念した。その金。それ以外に何がある?」
「じゃああなたは、やっぱりあの時の…。」
「思い出したなら早く受け取れ。これで、貸し借り無しね」
「…良かった」
少しの間を置いてから女はゆっくりと身体を動かし、スーツケースを持っていない方の自分の片手を自分の両手で掴んで覆った。予想外の言動に驚き、右手のスーツケースを思わず地面に落とした。
「あの後どうなったか、分からなかったから。でも、貴方が生きててよかった」
笑顔で自分の無事を喜ぶ女は、我に返ったところですぐに掴んだ手を引っ込めた。それから恥ずかしさを隠すかの様に、少しだけ頬を赤らめて、また、あの微笑みを見せてきたのだ。
―――…なんだ、こいつ。
今まで出会ったことない人種に戸惑いが隠せない。こっちはさっさと用事を済ませて帰りたいというのに。
「いいから早く受け取れ。ワタシ、そこまで暇じゃないよ」
すると女は地面に落としたスーツケースを拾い、土の汚れを払った。そうしてあっさり金を受け取るのかと思いきや、女は何故か、自分の方にそれを差し出した。
「お返しします。」
「……はあ?」
全く意味の分からない行動をする女に、思わず顔をしかめた。
***
「それはお前の金よ。始めに説明した通りね」
スーツケースを返そうとすると、男は鋭い目つきで睨んだ。
「私には必要ありません。なので、お返しします」
「借りは作りたくない」
「“借り”と思わないでください。あれは只の人助けですから」
そう言うと、男はさらに嫌な顔をした。
「正気か?」
男はスーツケースを乱暴にひったくり、それを地面に放った。ぶつかった衝撃でスーツケースの鍵が外れ、大量の札束が露わになる。
「お前のその人助けが、ワタシにはいい迷惑ね。頼んでもいない。」
男の威圧感にひるみつつも、負けじと自分も言い返す。
「その通りです。私の勝手です。だから、あなたには何の責任もありません。それに……」
言っていいものかと迷ったか、この際聞いてみた方が自身の身のためだ。
「そのお金、あなたのものじゃない…ですよね?」
「…ああ、そうか。お前あのガキどもの仲間だたな」
どうやらゴンとキルアと同じく、彼も二人を知っているらしい。
「ハッ、ワタシに働いて稼げ言うか?」
「…だから、お金は必要ないんです。私は商売をしているわけではありません」
「それなら何故ワタシを助けた?お前はいつも、何の利益にもならないことをするというのか?」
―――「人助けに…理屈を求めますか?」
男の言っている言葉の意味を掴めず、馬鹿正直に首を傾げた。
「………理解不能ね」
忌々しそうに舌打ちをして、男はくるりと背中を向ける。
「あ…待って、このお金…ッ」
「煮るなり焼くなり好きにしろ」
「除念師のくせに。」
最後にそう吐き捨て、男は森の中へ消えて行った