二十三 中忍試験

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 蒼天快晴、天気上々、六月下旬。
 波の国より帰還した第七班はそれからは特に変わらず、再びDランク任務まみれの毎日を送っていた。あえて変化を言うならば、ナルトとサスケの関係が悪化したことか。事あるごとにケンカを始めるのは以前と同じだが、帰還後からはそれまでにはなかった"ぎくしゃく感"が発生したのだ。そうなったワケを知るトモエは苦笑を零す程度だが、何も知らないサクラにはいい迷惑という話で、実のところサクラは日々心労を溜めていた。

 そういうわけで、その日もサクラだけがどこか憂鬱ながら、Dランク任務は終了していた。ナルトが一番ボロボロなのは毎度おなじみ。

「もう、無茶するからよ!」

 サクラが声を荒げるが、ナルトは反応もできないほど消耗中。だがそんな問題は怒りのほうとは関係なかった。

 「ったく、世話の焼けるヤツだな」
 「ザズゲェゴノヤロー!!」
 「ちょっと、これ以上暴れたらトドメさすわよ!!」
 「うぐっ」

 しかしサクラには頭が上がらないのはいつも通り。サクラに首根っこを掴まれれば、ナルトの気力はしゅううと消えていった。鶴の一声というやつで、傍で見ていたトモエは「(さすが)」とか思っている。
 一方でカカシはそれらのやり取りを横目で見やり、溜め息をついていた。

 「うーん。最近チームワークが乱れてるな」
 「そーだそーだァ!チームワーク乱してんのはてめェだぞサスケェ!いっつも出しゃばりやがって!」
 「そりゃお前だウスラトンカチ。そんなにオレに借りを作りたくねーならな......」

 前を歩いていたサスケはそこで立ち止まり、凄みのある目でナルトを睨んだ。

 「オレより強くなりゃいいだろうが」

 サスケの眼光は、ただのケンカに使うものとはかけ離れていた。だからこそナルトは言葉に詰まり、事態は一転、険悪な雰囲気になる。
 全て、ナルトが異常に意気込み、サスケが焦っている結果の衝突だ。波の国での任務が二人を駆り立てる。サスケは特に、帰還後の生温い任務に苛立っている。

 異様な雰囲気が第七班の間に流れ、サクラはここ最近のこの空気に呑まれてしまう。一歩退いて事態を見ていたトモエは、少々感づいているなりに考え、ちらりと視線を担当上忍に向けていた。恐らく今の二人、特にサスケには、同じ立場にいる者からの言葉は苛立ちにくべる薪にしかならないだろう。

 カカシもトモエの視線の意味に気づき、やれやれと頭を振った。

 「さーってと」

 カカシは実に能天気な声で、場の雰囲気に区切りをつけた。

 「そろそろ解散にするか!オレはこれからこの任務の報告書を提出せにゃならんし」

 「なら、帰るぞ」と間髪入れずにサスケは歩き出す。ナルトにはもう見向きもしない。そのサスケにサクラはハッとして女の子の表情で追うし、もちろんそうなればナルトも追うしで、トモエは元に戻った日常風景に小さく笑った。

 「ありがとうございます、カカシ先生」
 「んーや?別にいいよ。サクラはともかく、ナルトもサスケもお前くらい協調性があればいいのにねぇ......さて、じゃあオレは厄介なことになる前にトンズラしようかな」
 「お疲れ様でした」

 トモエが再び仲間達のほうを見れば、サクラは何故か"ナルト以下!"とかかれた石(幻覚)を頭に乗せて沈んでいるし、その原因だろうサスケを捜してももうどこにもいないし、ナルトはそんなサクラにちょっかいをかけている。

 「フフッ…そうね…私…いつも良いとこなしだものね…、私って…ナルト以下…」」
 「あの人は言い方を知らないだけですよ、本音を隠せないというか」
 「アンタそれフォローになってないわよぅ…うぅう…」
 
 笑顔で諭しているつもりが逆効果になっていることを知らないのか、わざとなのか、トモエは相変わらず考えが読めない少女であった。

 「えぇ〜!今日は忍者ごっこしてくれるって言ったじゃん!コレー!」
 「......そうだっけかな〜〜〜」
 「フン......忍者が忍者ごっこしてどーすんのよ......」

 といかにも暗い雰囲気をどんより醸し出しているサクラだ。
 それからサクラはナルトの顔をじぃっと見つめるもので、忍者ごっこ云々のことをすっかり忘れ、照れ笑いまでしてしまうナルト。その実サクラが考えている内容はナルトに失礼なことばかりであったりするが、そんなことを知る由もない木ノ葉丸はとんでもないことを言い出した。

 「兄ちゃんもスミにおけないなァ」
 「ん?」
 「アイツって兄ちゃんの、コ・レ・だろ?」

 そう言ってピッと小指だけを立たせる木ノ葉丸。サクラはそれだけでも青筋がたったのに、更にナルトが調子にのって「あはっもー!君たちガキのわりに鋭いぃ!」とか言い出すものだから、サクラはもう容赦しない。

 「ちっがーーーう!!」

 ナルトは盛大に血を吐いてふっとんでいった。理由は言うまでもなく サクラに殴られたからである。
 我関せずとすすすとその場から離れるトモエ。しかしサクラについて何も知らない木ノ葉丸は、「ナルト兄ちゃんー!」と駆け寄ってから、振り向いてサクラの顔にこうほざいた。

 「なんてことすんだァコレー!!このブースッブスー!そっちの銀髪姉ちゃんの方が何倍も綺麗だぞコレ!!」

 その後、トモエが思わず手で目を隠してしまったのは言うまでもない。
 トモエの耳にはとんでもなく痛そうな音ニ発が届いた。そっと確認すれば、ドスドスと去って行くサクラの後ろ姿と、こてんぱんにされ気を失う寸前のナルトと木ノ葉丸がいる。何も言っていないのに殴られているナルトが一番不憫である。

 「いってぇえ......」

 意外にも先に復活したのは木ノ葉丸だった。ウドンに支えられながら、木ノ葉丸はぼやく。ほんの小さな声で......ぼやく。

 「あのブスデコピカちん......アレで女かよマジでコレぇ......!」

 そう、小さな声のはずだった。なのに、遠ざかるサクラの耳に入ったのは摩訶不思議。
 サクラはゆっくり振り返る。その鬼のような顔で全員を震え上がらせ。サクラがその形相のまま走ってきた時、四人は迷わず逃げ出したのだった。
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