十一

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 「(すごい霧......)」

 そう思いながら、トモエは辺りを見渡していた。事実、視界は霧ばかりで目立ったものは見えず、すぐそばにいる仲間達が見えなくなることもしばしばである。
 第七班、それにタズナ。一同は全員が小舟に乗っていた。目的地は無論、波の国。

 ナルトが任務続行発言をしたあと、タズナは観念したように本当の任務内容を第七班に明かしていた。
 ガトーという海運会社の大富豪。タズナが責任者として手にかけている橋。事細かに事情を聞くと、タズナはもう後に引けない立場になっているようだった。

 本来ならそれでも任務としては受け入れられなかっただろう。しかし結果として、今もこうやって波の国に向かっているのは、ナルトの決意もあるにはあるが、大部分はタズナに言いくるめられただけだった。

 『まあお前らがこの任務をやめれば、わしは確実に殺されるじゃろうが......なーに、お前らが気にすることはない!わしが死んでも十歳になる可愛い孫が一日中泣くだけじゃ!後、わしの娘も木ノ葉の忍者を一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ!いやなあーに、お前達のせいじゃあないがのう!』

 『(......脅迫だ......!)』

. .....とにもかくにも、ゆっくりと六人は波の国へと近づいていた。そのうち、舟漕ぎが「もうすぐ国に着く」と小さな声で言う。
 サクラは体を伸ばしてトモエに顔を向けた。

 「やっとこの白い世界から抜けられるわね、トモエ」
 「そうですね。なんだか名残惜しい気もしますけど」
 「え、そう?」
 「だってここまで深い霧はそうそう見られないでしょうし」

 笑って言うトモエにサクラは微妙な表情で返した。トモエって実はなんかちょっと変わってるわよね、と今更な感想を心の中で述べて。
 二人が話しているうちに、舟はすっとトンネルの中に入っていく。ぼんやり白かった靄は今度は暗いものに変わる。人工的な灯りだけが今の道しるべだ。どことなく心細い気もするが、慣れているのだろう舟漕ぎは相変わらずのペースで漕ぎ続けている。

 いつしか舟はすっとトンネルを通過し、人口灯も消え、また白い霧だけが六人の周辺に渦巻いていった。

 ***

 やっと島についた一向は、今度は徒歩でタズナの家へと向かっていた。
 見慣れない他国の風景である。下忍たちの興味は尽きぬほどあり、きょろきょろと忙しない。幾分かの緊張感をもちつつも、まだそこまでの警戒はしていなかった。

 だがそんな中、カカシだけがぴくりと反応し、ナルトがしゅびっと手裏剣を投げていた。

 「そこかァーー!!」

 忍とは到底思えないような大声を出しつつ。だが、何も目立ったような音はしない。

 「だからッやめろーー!」
 「ぐぇっ」

 思い違いも甚だしいとサクラは激怒して殴る。今回ばかりはサクラが正しい、いずれ仲間に当たりかねない。サスケとトモエはいつものように呆れてまたは笑って傍観していたが、トモエはふと思い当たったように、ナルトが手裏剣を放ったほうの草むらへと足を踏み入れた。

 「どうした?」
 「手裏剣を回収しておかないと。万が一ってこともあるでしょう、し............って、ウサギ」

 サスケの言葉にトモエは答えながら手裏剣を捜していたのだが、"それ"を見つけた時 トモエはひくりと口元を動かした。後ろからはカカシも覗き込んでいたが、それよりも過敏に反応したのはナルトである。
 あと数センチずれていたら確実に脳天に突き刺さっていただろう手裏剣に驚き、泡を吹いているウサギがいたのだ。サクラはキャッと声をあげた。

 「ナルト、なんてことすんのよ!!」
 「そ、そんなつもりは.......ごめんようさこう!」

 「.命あって良かったですねぇウサギさん」
 「気絶させられたがな」
 「はは......って、あら?この子」

 ユキウサギ?

 トモエがそこまで言うには至らなかった。カカシの素早い指示が、全員の耳に届いたのだ。

 「全員伏せろ!!!」
 
 直後、トモエはサクラとナルトを、サスケはタズナを突き飛ばし、その上を何か得体の知れないものが通過していった。

 風が凄まじい勢いで切れていく。安全を確認したトモエはすぐさま起き上がった。視線を上げた先には、目つきの悪い男が大刀に乗り、第七班、そしてタズナを見下ろしていた。

 その殺気は先ほどの霧忍二名よりもずっと鋭い。トモエはぞくりと身を震わせた。本能が、この男の危険性を察知している。

 「へーこりゃこりゃ......霧隠れの抜け忍、桃地再不斬くんじゃないですか」

 カカシもセリフはともかく、雰囲気は明らかに通常とは違った。ナルトが何にも気付かず、男・再不斬に向かって走り出そうとした時も、真剣な表情で「下がってろ」と抑える。

 「コイツはさっきの奴らとはケタが違う」

 続けるカカシに全員がこくりと唾を飲んだ。
カカシがここまで言う相手。桃地再不斬という男の目はただ鋭かった。多勢に無勢、という状況でも一切気後れしていない。そのうちカカシは呟く。

 「このままじゃあ、ちとキツイか......」

 そうしてカカシの手が額当てにかけられた時、再不斬もまた口を開いた。

 「写輪眼のカカシと見受ける。悪いが、じじいを渡してもらおうか」
 「......!?」

 "写輪眼"。サスケとトモエはハッとしてカカシを見ていた。だがカカシは反応せずに言う。

 「卍の陣だ。タズナさんを守れ......お前達は戦いに加わるな。それがここでの"チームワーク"だ」

 カカシは二人の疑惑の視線も気にせず四人に指示を出した。ゆっくりと額当てにかける左手に力を込められ、額当てが持ち上がっていく。誰もがカカシに注目していた。
 そして見えたものは、"赤"。

 「再不斬。まずは、オレと戦え」

 赤と黒で描かれた紋様は、サスケとトモエに衝撃を与えていた。
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