三十九

「小説基本HTMLテンプレート」です。ここにヘッダー内容(サイトの概要など)


 視線の先には、サクラのみ。

 サクラはさっと頭を切り替えてクナイを手にした。しかし、サクラは次の瞬間にはハッとしていた───リーが既に動くことも困難な体で走り出していたのだ。
 とはいえ、繰り出した技はドスにまで届かなかった。驚いていたドスもそこで我を取り戻す。

 「やはりさっきの攻撃、効いてるみたいだね!」

 後ろへと跳ぶドス。ドスの足は地につき、弾くようにした更にスピードをつける。

 「少々驚かされましたが、あの閃光のような連続体術が面影もないじゃないですか!!」

 繰り出されるドスの腕。リーは咄嗟に腕で防いでいた。そうしても攻撃を防ぐことができないと知っていても、他にしようがなかった。

 「リーさん!」

 サクラはそんなトモエを支え、崩れ落ちるリーを見ていることしかできなかった。

 「往生際の悪い......こんな仕事、一瞬で片付くと思っていたんですがね。さっさとサスケくんを殺させて下さいよ」
 「!! さ、させないわよ、そんなこと!」
 「キミに何ができるっていうんです?そうやって、震えてる仲間を支えてることしかしてないのに」
 「それでも、仲間だけは、殺させない!!」

 リーが必死になって立ち向かう姿を見たからだろうか。サクラの心には、不思議な強さが生まれていた。いつもは進んで前に出る二人、サスケとナルトは、今は動けない。仲間を守ろうとするトモエも然り。リーは無関係だというのに、なんの躊躇もなく戦ってくれた。

 私はまだ動ける。できることはある。

 「フン......じゃあ、先ほどは彼に邪魔されましたが。もう一度お手並み拝見といきましょうか!!」


 ドスが、走り出す───どんどん近づいてくる。
 サクラは印を結んだ。冷や汗が伝っていた。自信があるわけではなかった。だが、逃げるわけにはいかなかった。

 仲間を、守りたい。


 ゴウッ___!!


 しかしその時、サクラの視界を突如遮ったのは、氷雪だった。

 「えっ......」
 「今度はなんです!?」

 ドスの苛ついたような声が煙越しで聴こえる。サクラは呆然と風を見て、そして、トモエを見ていた。
 氷雪はトモエの専門分野。すぐに思い当たったのは当然だった。


 「トモエ......?」
 「ごめんなさい…サクラさん、辛い思いをさせましたね」

 苦痛が拭い取れていないトモエは、それでも、ゆっくり体を起こしていた。三人衆もトモエに気がついたようだった。しっかりと両足で立ち、サクラの前に躍り出たトモエに。

 「サクラさんも、リーさんも、殺させない......」

 暗く、低い声が、トモエの声で流れ出ていた。その場にいる全員がトモエを意識させられていた。冷静でいてかすかな怒りも感じられ、サクラはそれ以上声をかけられない。それはドスやザク、キンにとっても同じだった。
真っ直ぐな瞳の視線がドスに突き刺さる。ドスはごくりと唾を呑み込んだ。

 「サクラさん」

 いつも通りの声で呼ばれて、サクラはやっと我に返った。その瞳に映ったトモエの姿。
振り返ったトモエの口元は、笑っていた。


 「大丈夫、絶対......守るから」


 止める間も、声をかける間もない。次の瞬間からトモエは動き出していた。

 まずは一番近いドスへ。ドスもまた我に返り、腕を構えている。トモエの目にドスの独特な武器が映った。

 「氷遁・白矢」

 無数の氷の矢が敵に向かって放たれる。まっすぐ相手に向かっていくが、四人は器用にそれを避ける。そして、そのままトモエとの距離を一気に詰める。

 クナイを取り出し、トモエもそれに応戦した。
最初に短剣を振り下ろしたドスの攻撃をかわしつつ、ザクの蹴りを両腕でガード。
そして口に咥えたクナイでキンのそれを受け止め、その場から一旦離れようとする。
しかし、遅れてやって来たグサの拳が、トモエの肩に直撃した。

 「ッ、…!!」

 軽く吹っ飛ばされるも、トモエは持ち前の反射神経でどうにか着地する。このままでは、全滅されるだけだ。冷静に考え、最善の策をサクラに伝える。

 「…サクラさん、」
 「トモエ…?」
 「ここは私に任せて…ナルトとサスケ、それとリーさんを連れて、ここから逃げて下さい」

 その言葉を聞いた途端、サクラの目が大きく見開かれる。

 「なっ…何言ってんのよ!そんなのまるで、トモエがッ…!!」
 「話してるヒマなんて…あんのかよ!!」
 「…!」

 ザクとグサが、一斉にトモエに向かう。先程の肩の痛みに顔を歪めながらも、トモエは素早く印を結んだ。

 (水遁・水陣柱)

 水の柱が出現し、ザク達の行く手を阻む。

 「早く…!サクラさん!」
 「っ…!!」

 もうそろそろ、トモエの体力もチャクラも限界に近い。肩への打撃はかなりのものだったらしく、印を結ぶ姿も肩を庇っているように見えた。

 「甘ェよ!!」

 水陣柱が消える。それと同時にクナイが飛んできて、トモエの頬を掠めた。
 水が消えた中、トモエの視界に入ったのは何やら構えの体勢をとる、ザクの姿だった。

 (しまった…ッ)

 急いでその場を離れる。それと同時に空気圧が押し寄せ、僅かに体勢を崩した。
 避けた先には動きを読まれていたのか、クナイを構えたキンがいた。クナイが、一直線にトモエの顔目掛けて下ろされる。
 息を飲んだトモエは、猛スピードで印を結んだ。

 鈍い音をたてて、クナイが彼女の顔に突き刺さる。しかし、ボンッという音がしたかと思うと、トモエの姿は丸太へと変化した。変わり身の術だ。

 「ちょこまかと…ウゼェ奴だ…!!」

 いつもトモエは冷静に相手を分析し、静かに、そして素早く相手を倒す。
 しかし今回ばかりはそうも言っていられない。荒い息をしながら、敵の四人を見据える。
 多少のダメージなら与えている。しかし、圧倒的に不利なのには変わりない。トモエはぐっ、と唇を噛み締め、相手を睨みつけた。

 「サクラさん!早く!!」
 「そんなッ…トモエを見捨てるなんて、出来るわけないじゃない…!!」
 「トモエ、さん…!!」

 嫌々と首を振るサクラと、何かを訴えるようにトモエを見つめるリー。ナルトとサスケは、まだ起きる素振りを見せない。

 (水遁・水乱波)

 大きい津波が、音忍達に向かっていく。それと同時に、トモエの身体がグラリと傾いた。何とか踏み止まるも、チャクラは殆ど残っていないらしい。しかしトモエは、構わず再び印を結び始める。
 今攻撃をやめれば、後ろにいるサクラ達に被害が及ぶかもしれないからだ。

 「氷遁・水晶…」

 が、術は発動されることがなかった。木の陰から突如姿を見せたグサが、思い切りトモエの腹部を蹴り飛ばしたからである。

 「ッ…かはっ…!」

 大きな音と共に、木に背中を叩きつけられ、地面に倒れるトモエ。サクラが、自分の名前を叫ぶ声が聞こえた。

 「ケッ…お前、どんだけ術持ってんだよ。
ほんとに厄介なやつだな」

 何かを言い返そうとするトモエだが、グサはククッと笑いながら彼女の打撲部分に拳を叩き込む。トモエから、悲鳴が上がった。初めて聞くトモエのその声に、サクラは思わずそちらに駆け出す。

 「ットモエ!!!」

 しかし、サクラの髪をキンが掴んだ。そのせいでサクラは身動きが取れなくなり、痛いと思わず声をあげる。

 「私よりいい艶してんじゃない…コレ。フン、忍のくせに色気づきやがって…」

 そう言いながら、キンはグサによって動けないトモエに目を向けた。

 「グサ…この女の目の前で、そのトモエとかいう奴を殺しなよ。そいつムカつくのよね。ちょっと顔がいいからって、偉そうに上から目線で。丁度いいし、余興見せてやらない?」
 「…面白そうじゃねェか」

 乗る気らしく、グサは意気揚々とトモエの白銀の美しい髪を掴み、上を向かせる。

 「…ッ私に触れるな!!」

 初めてトモエが敵に対し、怒りの感情を露わにする。グサも流石に驚いたのか一瞬だけ、肩をビクつかせた。
 しかし、それだけでは終わらない。

 「な、何だこれ…!?」
 「グサ離れろ!!」

 トモエの髪を掴んでいたグサの手が凍っていった。パキパキ、と音を立てている。
 咄嗟に手を離したので全てが凍ったわけではなく、また術も完璧でないのか、氷の層も薄くできていた。

 「氷遁秘術…白霞罸」

 灰色の瞳が揺らぐことなく、真っ直ぐ相手を見据えている。

 「体内から冷気を周囲に放ち、影響下にあるものを一瞬で凍てつかせる…。
 私に触れると凍って塵となり…砕け散りますよ」

 攻撃を放つわけではなく、自分自身が武器となり相手に攻撃する。こんな術を下忍が使えるなど聞いたことがない話だ。
 音忍達も冷や汗を僅かに流し、未だにこちらを射抜くように見つめるトモエに恐怖していた。

 しかし、それでもこの術はトモエにとって捨て身に近い。大量のチャクラを必要とするため、解放と同時に次の攻撃は先ず不可能になる。
 今は何とか意識を保っているが、正直いつ倒れてもおかしくはない状態だ。それをトモエは相手に悟られないよう、いつも通り無表情で平然としている。

 「…チッ、薄気味悪いやつだ。後味悪いが、先にそっちのサスケを殺すか」
 「…待て!」
 「お前は黙ってろ」
 「…ぐ…ッ」

 グサはトモエの腹を蹴り、トモエは地面でうずくまる。リーも体を上手く動かすことができず地面に倒れたままだ。

 (私…足手まといにしかなってない…)

 ひとり、サクラの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。

 ――私はいつだって、みんなに守られてばかり…いつもみんなの足を引っ張ってばかり…

 サクラは地面に倒れるトモエとリーを見る。

 (私だって…みんなを守りたい!)

 何かを決意したサクラは涙をぐっと拭い、ホルスターからクナイを取り出した。それに気付いたキンがサクラを睨むも、サクラは迷わず自身の髪の毛に手を伸ばし…

 淡い桃色の長い髪を、クナイでぶった切った。

 その場にいた、全員が驚いた。隠れて見ていたいのも、痛みに耐えながら見ていたトモエも、その行動に驚きが隠せていない。

 (私は、いつも…一人前の忍者のつもりでいて…)

 サクラの額当てが、落ちる。

 (サスケ君のこと、いつも好きだって言っといて…ナルトに、いつも偉そーに説教しちゃって…)

 こちらを驚いた表情で見つめるトモエと、目が合う。

 (トモエには…敵いっこないのに、ライバルっていう変な意識を持っちゃってて……)

 私はただ、いつも三人の後ろ姿を見ていただけ

 (それなのに…三人はいつも、私を庇ってくれた)

 立ち上がる。先程の怯えていたものとは違い、しっかりと立っていた。

 (リーさん…アナタは私のこと好きだって言って…私を背に、命懸けで戦ってくれた…)

 サクラの頭を過ぎるのは、トモエの言葉。

 『ナルトとサスケ、それとリーさんを連れて、ここから逃げてください』

 (トモエ……自分を犠牲にしてまで仲間を守ろうとする、その意思はすごいって思うよ。
 それに、リーさんと一緒でトモエも、死に物狂いで私達を守ってくれた……私、トモエみたいな人になりたい…!)

 ぐっ、と拳を握り締める。サクラの目に、迷いなんてものは一切無かった。

―――みんな…今度は私の後ろ姿を…しっかり見ててください!!

 桜色の髪が舞っている。それが仲間の一人であるトモエに驚きの目で見られている事を、サクラは自覚していた。けれど、見返してはいけないと思った。

 今、仲間に見てほしいのは、今こそ見てほしいのは、自分の背中なのだから。
- 40 -
前へ次へ

しおりを挟む

ページ:
小説TOPへHOME
ALICE+