四十四

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 中忍選抜試験、第三の試験、予選。それが唐突に行われることになったのは、第二の試験を合格した者の数が多い為だった。第三の試験、本戦は各国から呼ばれた大名や忍頭がやってくる。ゆえに時間をかけ過ぎるわけにもいかない。よって、中忍試験規定により人数を減らす必要がある、という。

 「えー......というわけで、体調の優れない方、これまでの説明で止めたくなった方。今すぐ申し出て下さい。これからすぐに予選が始まりますので」
 「これからすぐだと!?」

 会場内にざわめきが走る。五日間分のサバイバルの疲労がある、当然の反応だ。

 サスケは死の森での最後の戦いで、呪印のために思うように体が動かせなかった。けれど、辞退する気などさらさらないのだろう。

 「サスケくん」

  トモエの後ろに並ぶサクラ。サスケは僅かに振り返り、その声に反応した。サスケを見るサクラの瞳は痛々しいほどに歪んでいる。

 「この予選。やめたほうがいいわ」

 「え?」と呟いたのはサスケの前に並んでいるナルトだ。だがそれに応える余裕もなく、サクラはサスケの痛いほどの視線にまごつきながらもまた言う。

 「だ、だって、大蛇丸ってヤツにやられてから、サスケくんずっと変よ!今でも痛むんでしょ......その、痣」

 首を傾げるナルト。二人の様子をじっと見るトモエ。首元を抑えているサスケ。
 このままいけば、と弱々しい声で言うサクラの脳裏に甦っていたのは、初めて見たサスケの姿。サクラはあの姿のサスケを二度とは見たくなかった。

 「お願い......」

 サクラの瞳に涙が溜まっていく。サスケは何も言わなかった。サクラはその手で涙を拭き取った。

 「お願いだから、やめて......私、怖いの」

 サクラの体の震えは収まらない。
 
 「私は分かってる…!サスケ君、ずっと痛みも我慢してたじゃない!」
 「静かにしてくれ…」
 「サスケ君が何て言おうが私…そのアザのこと、先生達に言うわ!そうすれば…」

 そう言って、手を挙げようとするサクラ。
しかしその彼女の手を制したのは、サスケでもなく、ましてやナルトでもなく――
 伸びたのは、トモエの手だった。
 
 「まぁまぁいいじゃないですか、サクラさん」
 「トモエ!?何で…!」

 この状況の中、彼女だけは平然とした様子で笑みを浮かべていた。その姿はいつもなら何とも思わない筈が、何故か今は異質に感じられた。

 「彼は出場する気満々ですし、これ以上口を出すのは野暮というやつですね」
 「でも…!」
 
 「アザのことは黙ってろ」
 「でも…!」
 「中忍なんて関係ない。”オレは強いのか”ただその答えが欲しい」
 「っどうしてそう強がるのよ!ずっと苦しんでるサスケ君なんてもう見たくない…!!」
 「お前には関係ねーだろ」

 サスケはサクラに、冷たい視線を向ける。

 「余計なお世話なんだよ」

 サスケの言葉は重い。サクラは制止の言葉を口にすることができない。
 漆黒の瞳はギラついていた。

 「いくらお前でも…俺の道を奪うことは許さねェ」
 「てんめーサスケ!何カッコつけてんだってばよバカ!サクラちゃんがこーんなに心配して」
 「ナルト」
 
 何も分かっていないながらも腹を立てたナルトは感情のままに口出ししたが、それは落ち着いたサスケの声で遮られた。ナルトに向けられたサスケの目。

 ───オレは、お前とも戦いたい。

 その言葉はナルトの胸に深く沈殿していっていた。
 戦うことに熱くなった少年達はもう止まるすべなど知らなかった。


 「えー…では、これより予選を始めますね。
これからの予選は一対一の個人戦…つまり実戦形式の対戦とさせていただきます」

 軽く説明を受けた後、電光掲示板に対戦者の名前が表記される。

 第一試合。うちはサスケvs赤胴ヨロイ。
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