「トモエちゃん!」
「大丈夫ですか?ナルトくん」
とりあえず、トモエは一人置いてけぼりにされたナルトへと歩み寄っていた。「見事に罠に引っかかっちゃいましたね」とクスクスと笑うトモエに、ナルトは先ほどの嬉しそうな顔とは一変、ムッとした表情を作る。
「ほっといてくれってばよ!」
「あらあらごめんなさい、今、縄を切りますね」
相変わらずまだ笑っているトモエだったが、ホルスターからクナイを取り出しながら近づいていく。しかしその時、
「あぎゃぁぁぁぁぁあぁぁあぁ!!!」
突如響いたその盛大な悲鳴に、ハッとしたトモエとナルト。目を丸めた二人の脳裏にだんだんと一人の少女が浮かび上がった。
「今の......」
「ああ、サクラちゃんの声だってばよ!」
トモエの呟きに、捕まっているのが焦れったそうにナルトは返す。何かあったに違いないことは明白だった。動けるトモエはとりあえずクナイを構えると、その場から投げていた。
「すみませんナルトくん、先行きますね」
トモエの手から離れたクナイは、ピンポイントで縄を切った。その時には既にトモエの姿は消えている。どうやらあっという間に走り去ったらしい。
足が自由になり地へと下りたナルトは、「サンキューなァ!!」と大声で言った。
しかし。ナルトの両足は地についたと思ったら、またも一瞬で捉えられていたのだ。
「ハァー!?」
叫ぶナルト、しかし最早救世主はおらず。結局また両足を縛られたままになってしまったナルトだった。
***
走る、走る、走る。
茂っている演習場の中を駆け巡って行く。さっきの声からしたらきっとサクラはこの先にいるはず。焦りからか落ち着いていられず、木の根に足をひっかけることもあるが、寸でのところで体勢をたてなおしてまた速度をあげる。
あれだけ大きな叫びをあげるなんて、一体何があったのか。まさかカカシも傷つけることはないだろうと思っていたが、寅の印の件もある、本当にそうなのか。そんな不確かなものを根拠にして果たしてよかったのか。
全速力で走ってるうちに、見慣れた赤色がトモエの目に入った。
即座にそちらへ駆け寄り名前を呼ぶが、返事はない。そこで寝ているサクラは傷一つないもののぐったりと気絶している状態。
「もしもーし、サクラさん、大丈夫ですか?」
ポンポン、とサクラを弱く撫でる。すると、「う......」と小さく身じろぎするサクラ。その瞼がぴくりと動いた。「演習中ですよ?早くスズをとらないと」と続いてトモエが声をかければ、「えん、しゅう......?」とぼやき、虚ろな目はようやくトモエを映した。
サクラの瞳が、徐々にトモエの顔のはっきりとした輪郭を映していく。そして、それがしっかりと意識を持った時。
「サクラさん、」
と声をかけるトモエの顔を映せども、今のサクラには全くそれが意識できなかった。ただバッと跳ね起きたので、トモエの体はびくりと跳ねる。
「サクラさん?」と呟いて触れようとするが、その前にサクラの口から「......サスケくん」と小さく聴こえた。そしてそれにトモエが反応する前に。
「サスケくん!!私をおいて死なないでぇーーー!!!」
突然悲鳴を上げたサクラは、あっという間に走って行ってしまったのである。
ポカン、と口を開けたトモエは、ただ赤い服が遠ざかっていくのを見ているしかなかったのだった。
***
場所は変わり。
林の中の拓けている場所で、サスケはカカシと対峙していた。サスケは少しだけ息切れをしている。といっても、先ほどのナルトのような無謀なことをやっていたわけではない。
確実にサスケはカカシに一番近かった、その証拠に一瞬ではあるがスズに触れることはできた。それに、カカシは既にあの本をポーチに閉まっている。
「ま!あの二人とは違うってのは認めてやるよ。まだトモエとはやり合ってないけどね」
カカシの言葉に、サスケは短く「フン」と返す。そしてすぐさま印を組んだ。
「火遁 豪火球の術!!」
途端、それはそこに現れた。巨大な火の塊だ。燃え盛る火の球はカカシを襲い、その数秒間サスケは容赦なく術を続ける。
だが煙が晴れた時、カカシの姿は消えていた。
「(後方......いや上か!?どこだ!)」
確実に命中していたと思っていたのに、そこには焼けた服の切れ端一つない。冷や汗と共にカカシを探すサスケだが、結局感づくことはできないまま、
「下だ」
と聴こえた声と同時に、サスケは自分の足に違和感を覚え、
「土遁 心中斬の術!」
「なッ!!」
次の瞬間には土の中へ引きずり込まれてしまっていた。サスケ・生首同然である。
気付いた時にはその状態で、サスケはカカシの顔を睨みつける。ものすごい屈辱を受けているといった表情に、カカシはのほほんと変わらない顔を向けていた。
「忍戦術の心得その三!忍術だ。にしても、お前はやっぱ早くも頭角を現してきたか」
サスケの前で馬鹿にするようにしゃがんでいたカカシは立ち上がり、サスケに背を向け歩き出す。「でもま!出る杭は打たれるって言うしな」とヒラヒラと手を振った後、再びポーチから本を取り出し文を目で追いながら 口を開いた。
「......さてと、次はトモエのところに行くか。サスケほどの好成績を残してくれるといいけど」
今までも確かに不機嫌な顔だったサスケだったが、カカシから出たトモエの名前一つで更にカカシを睨みつけた。その表情をちらりと振り向いたカカシが見る。
「おーおー、恐ろしい顔しとるねえ。何か言いたいことがあるか?......トモエについて?」
「......なにもねェよ」
カカシは目を細める。サスケがチームメイトの中で唯一関心を寄せるのがトモエであることは明白だ。三代目から聞くには、二人は幼い頃からの付き合いで、幼なじみ。サスケは何もないといって口を閉ざしたが大体言いたいことはわかる。
その気持ちをチームメイト全員に向けられたらいいのだが。
「心配しなくても、あの子はお前みたいな無謀なことはしない気がするけどね」
「......どういう意味だ?」
「さーね」
そして、カカシは消えた。
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