五十六

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 その頃、テマリに背負われた我愛羅はようやく意識を取り戻した。
 しかし"奴"が目覚めかけているのだろう、頭痛は続いているようだ。何かに気付いた様子の我愛羅は、自分を心配するテマリを邪魔だと強く振り払った。
 それを見たトモエは、我愛羅を見下ろすサスケの隣で、すぐさま印を結ぶ。

 「水遁・水陣柱」

 水の柱が出現し、テマリの身体を受け止める。トモエが印を解除すると水はゆっくりと消え、テマリをそっと地面に下ろした。

 「てめーら砂が何企んでるかは知らねーが…お前は俺がとめる!」

 頭を抱え、頭痛に耐えている我愛羅にサスケがそう言い放つ。その後、隣にいる幼馴染にチラリと目を移し、「離れてろ」と小さく呟いた。
 その言葉にトモエはこくりと頷き、テマリの方へと向かう。我愛羅との決着は、サスケ自身でつけたいのだろう。トモエがテマリの元に着地した時、我愛羅の様子は豹変していた。

 「強いお前…うちはと呼ばれるお前…仲間のいるお前…目的のあるお前…俺に似ているお前…お前を殺すことでその全てを消し去った存在として俺はこの世に存在する…俺は"生"を実感できる!」

 そう言う我愛羅の目はなんとも痛々しく、そして悍ましかった。
 身体中が痛むのか、我愛羅は唸り声を上げる。テマリはその姿を見て始まった…と焦りの表情を見せた。彼女の目に映ったのは砂を纏い右半身が変異した"バケモノ"そのものの弟の姿だった。
 その姿に、サスケもトモエも思わず息をのんだ。

 「さぁ…感じさせてくれ!!」

 猛スピードで我愛羅がサスケに右腕を振り下ろす。それを間一髪で何とか避けたサスケだが、肩が少しだけ切れていた。

 (まずい、ここにも被害が…)

 我愛羅の様子からして、このままここにいるのも分が悪い。トモエはテマリの手を自身の肩に回し、出来るだけ急いでその場から離れる。

 「…んで、」

 そんな時、テマリの声がトモエの耳を掠めた。

 「なんで、助けた…?」

 その言葉に同じ班であるサクラの顔が脳裏に浮かぶ。トモエは足を止めないで、テマリの方に目を向けた。

 「…人が人を助けることに、理由なんていりませんよ」
 「けど…!」
 「テマリさん…でしたよね、とにかく一旦離れて下さい」



 我愛羅は以前サスケの修行中に彼の元を訪れていた。本選では試合でなく殺し合いをしよう、お前は俺の獲物だと告げるために。
 我愛羅はサスケのことを本当の孤独を知る目をしていると言った。我愛羅と同じ、孤独がこの世の最大の苦しみであることを知っている目だと。
 自分の存在価値を確かめたい、果たして自分は本当に強いのか確かめたいと心の底で望んでいるはずだと言う我愛羅に、あの時サスケは何も言えなかった。

 サスケは激しい攻撃を繰り返す我愛羅から逃れながら、自分の復讐の相手である兄、イタチのことを考えていた。
 一族を滅ぼしたイタチがサスケだけを生かしたのは一族殺しの罪悪感に苛まれぬ為の存在が欲しかったから。兄は自らを殺させるための復讐者という存在として自分を選んだのだ。サスケはそう理解していた。

 こんなところで負けるわけにはいかない。サスケは手にチャクラを纏い、千鳥で我愛羅に立ち向かった。なんとか我愛羅の攻撃をいなすも、我愛羅の猛攻は止まらず身体の変異も広がっている。火遁で対抗するがどうやら千鳥以外の術は効かない。
 しかしあの術はチャクラの消費が激しい。サスケは修行中カカシに言われたことを思い出していた。

 『お前の限界は二発。無理に発動しようとすればチャクラは0になり下手したら死ぬ』

 残りはあと一発。

 我愛羅は自分の攻撃を受け傷付いているサスケを馬鹿にするかのように嘲笑った。

 「お前の存在価値はこの程度か?はっきり言おう、お前は弱い!お前は甘い、憎しみが弱いからだ。憎しみの力は殺意の力…殺意の力は復讐の力…お前の憎しみは俺より弱い!」
 「黙れ…」
 「この意味がわかるか…?それはお前が俺より弱いということだ!」

 サスケは向かってくる我愛羅に千鳥を打ち込んだ。なんとか彼の右腕を負傷させることができたが、大蛇丸につけられた呪印が発動し痛む身体に起き上がることができない。
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