六十三

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 「その声は、トモエか!?どうしてここに!?」
 「アスマ先生、ごめんなさい。偶然にも近くを通ったので…」
 「トモエ、イタチと目を合わせちゃダメよ!」
 「存じてます。この幻術は…以前、父から教えられたことがありますから」

 古くからうちは一族と関わりのある雪箆一家。それ故うちは一族の写輪眼については、何処よりも詳しいのだ。

 「(俺の「月詠」が破られたか…)」
 「あの娘、イタチさんの知り合いですか」
 「ああ」
 「それにしても、「月詠」を破るなんて…一体何者ですか?」
 「雪箆トモエ。大昔、うちはの臣下であった歴史より、唯一写輪眼の能力から逃れることが可能な一族の末裔だ」
 「ほぉ…それは素晴らしいですね。しかし、イタチさん"その目"を使うのはあなたにとっても危険」

 隣の青白い顔をした男が告げる。

 「探し物とは…サスケのことか…っ」
 「いや、四代目火影の遺産ですよ」

 その言葉にカカシたちはハッとしたように驚く。

 「狙いは…ナルトの中の九尾…か?動いてるのがお前らだけじゃないのは知っている。組織名は…暁、だったか?」
 「暁…?」

 どうやらアスマや紅はピンときていないようだ。カカシだけがその情報を得ていたのか。
しかし、どうしてナルトと私が…。
トモエは湧き上がる不安と恐怖でいっぱいだった。

 「鬼鮫、カカシさんは連れて行く。その他の方には、…消えてもらおう」

 すると鬼鮫がイタチの指示に従い、こちらに向かってきた。トモエは印を結ぶため構えた。すると今度は、

 「木の葉!剛力旋風!」
 「がっ…!!」

 緑色のタイツを着た長身の人が現れた。

 「何者です…?」
 「木の葉の気高き蒼い猛獣、マイト・ガイ!」
 「なんて格好だ…珍獣の間違いでは?」
 「あの人を甘く見るな」

 「カ、カカシ先生…ッ」

 意識を飛ばしてしまったカカシが、チャクラをコントロールできず水の中に沈んでいってしまいそうになる。
 大きな男性の体を、少女の力では支えられず
倒れそうになるところをガイが代わりにカカシを肩に担ぐ。

 「イタチと目を合わせるな、ガイ!術にかけられるぞ!」
 「そんなものは、こっちとて分かっている!
 カカシとの対戦対策に、写輪眼に対する戦い方も考慮している。二人共、目を開けろ!」
 「でも…っ」
 「写輪眼と戦う場合は、目と目を合わせなければ問題ない。常に相手の足だけを見て洞察し、対処するんだ!」

 ガイの言葉にアスマと紅は、ゆっくりと目を開ける。

 「確かに言われて見れば、そうかもしれないけど…」
 「そんなことができるのは、お前だけだぞ」
 「だがこの急場にそんなことも言ってられん!ともかく、今すぐ慣れろ!」
 「どうする…!?」
 「紅はカカシを医療班の元へ。トモエも、ここは危険だ。紅と共に行くんだ」

 それを聞くとトモエは悔しそうに目を細めるも、小さく頷いた。

 「アスマはオレの援護だ」
 「分かった」
 「あとはオレの手配した暗部の増援部隊が来るまで…少しの間、相手をしてやる」
 「おもしろい…いい度胸ですね」
 「鬼鮫、やめだ。オレたちは戦争をしに来たんじゃない。残念だが、これ以上はナンセンスだ。帰るぞ」
 「折角、疼いてきたのに…仕方ないですね」

 イタチと鬼鮫という男は、その場を瞬身で消えて行った。

 ***

 その後、カカシを医療班に診せ、一先ず家で休ませることにした。ガイ・アスマ・紅という上忍が三人もカカシの部屋におり、トモエもその片隅でジッとしていた。

 「本当に大丈夫なの、トモエ」
 「はい、私は幸い…ケガはせずに済みました」
 「そうじゃなくて、さっき…イタチに会ったから…」

 紅はどうやら、トモエの内面の心配をしてくれているようだった。そこでトモエも紅に言われて、初めて自分の手や足が小刻みに震えていのるのに気づく。
 そしてゆっくりとその場にしゃがみ込み、自分の膝に顔を埋める。

 「トモエ…」

 紅が近づき、トモエの背中を優しくさする。そんな優しさに甘えるかのように、急にさっきまでの緊張が解けてしまい、溜めていたものが溢れ出しそうになる。

 ―――やっぱり、あれは嘘だった…。

  【あぁ、ずっとそばにいてやる】

 今日久しぶりに会った人は、あの時と何ら変わっていない冷たいような目をしていた。
 変えることのできないこの現実に、トモエは向き合わなければならなかった。

 「奴らの様子じゃ、まだナルトは見つかってないみたいだな…」
 「それなんだが、おかしくないか?アイツ等、既に里に入り込んでいた。…この里でナルトを見つけるなんて、簡単だろう。

 イタチはナルトの顔を知っているんだぞ」

 すると突然、ガイがその場を静かにするよう促す。

 「カカシ――……!!」

 そこに入って来たのは、サスケだった。
 ベッドで寝ているカカシと上忍三人を見て、不審に思う。

 「どうしてカカシが寝ている…
 それに…上忍ばかり集まって何してるんだ?」
 「…サスケ」

 サスケは、部屋の片隅でうずくまっているトモエを見て更に動揺する。

 「トモエまで…!?一体何があった!?」
 「いや、別に何でもな…」

 サスケの質問にガイは焦り気味にごまかす。しかし、その言葉は乱入者によって遮られた。

 「あのイタチが帰って来たってホントか…!?しかもナルトを追ってるって…」

 入ってきた忍は、部屋に来てようやくサスケとトモエの存在に気がついた。
 サスケの動きが一瞬、ピタリと止まる。他の先生たちは呆れたような、あーあ…という顔だ。
 途端サスケは恐いくらいに目を震わせ、カカシの部屋から飛び出して行った。トモエもその後を追うように飛び出した。
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