七十四

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 その襲撃はサスケの予期しなかったものだった。カカシに諭された場所で、満月が昇るまでじっとしていたサスケは、唐突に感じた気配にハッと夜空を見上げた。
 月光を遮る、四つの影。咄嗟に立ち上がったサスケは目の前に降り立った四人の忍を睨む。その額当てと腰の帯にはサスケもよく見覚えがあった。

 「何者だ......お前ら」

 「音の四人衆、東門の鬼童丸」
 「同じく西門の左近」
 「同じく南門の次郎坊」
 「同じく北門の多由也」

 四人は躊躇なく名乗る。そしてその先からサスケへ飛び出していた。
 優秀な下忍であるサスケはそれでもあっさりと四人全員を吹っ飛ばすが、それらは全て変わり身とされた丸太だった。それに気付いたサスケは、低い声で唸る。

 「オレは今機嫌が悪いんだ。これ以上やるってんなら、手加減しねーぜ」
 「......弱ェくせにピーコラ言ってんじゃねェぞ。ほら、来いよ。アバラボッキボキでドレミファソラシド奏でてやっから!」


 元より四対一は限りなく不利だったーーーしかし、恐らく一対一でも、サスケは敵わなかったかもしれない。抵抗は十分、サスケの実力は本物だ、だが、最後には。

 煙が消えたその場に現れたのは、倒れ伏した左近の姿ではなく、左近に片足を捕らえられて宙づりにされている、サスケの姿だった。

 「こんなヤツが何で欲しいのかねぇ、大蛇丸様も。これじゃ君麻呂のほうが良かったぜ」
 「まァ......こんなクズみてぇな里にいても、お前は今のまま、並の人間止まりってこった。強くはなれねェ。仲間とぬくぬく忍者ごっこじゃ、お前は腐る一方だぜ」

 左近に鼻で笑われ、サスケの脳裏にすっと過っていく"仲間"たちの顔。今までサスケが完全に闇に落ちるのを留めていたもの。何かが崩れ落ちていく音が聴こえていた。

 「ウチらと一緒に来い。そうすれば、大蛇丸様が力をくれる」
 「無理矢理連れて行っては意味がないそうだ。お前が決めるんだ」
 「ったく大蛇丸様もめんどくせェことを......オイどうすんだよ!来るのか、来ねェのか!!こんなに弱ェヤツ、あんまりグズりゃあ殺っちまいたくなるぜ!」

 ーー呪印が赤黒く光る。サスケの苛立ちが再び沸々と沸き起こり始める。黒の刻印が既に半身を覆い尽くし、瞳には写輪眼が宿った。

 「殺ってみろ...!」

 低く唸ったサスケ。その頭に、いつしかカカシが忠告した言葉など塵ほども残っていない。

 「てめー......呪印を」

 しかしそれさえも、この四人の前では意味を為さなかった。呪印状態のサスケを、左近は一歩も動く事なく吹っ飛ばしていたのである。
頭を強く強打し、サスケは朦朧とする頭のまま左近を見上げた。その左近にも呪印らしきものが体に散っていた。

 「呪印で力を得た代わりに大蛇丸様に縛られている、ウチらにはもはや自由など無い。何かを得るには、何かを捨てなければならない。 
───お前の目的はなんだ?この生温い里で"仲間"と傷を舐め合って......そして忘れるのか」

 "うちはイタチのことを"。

 反射的にサスケは強く拳を握る。サスケの胸に幼き日から沈殿している暗色。憎悪ーー殺意ーー復讐。

 「この里はお前にとって枷にしかならない。下らねェ繋がりもプチンとすりゃいいんだよ。そうすりゃお前は、もっと素晴らしい力を得ることができる」

 復讐を可能にする、力。


 「目的を忘れるな!」


 左近が怒鳴った。同時に、音の四人衆は飛び立ち、いつしか幾枚の木の葉に変わっていた。

 戦闘後にしては、サスケの心は、恐ろしいほどに落ち着いていた。
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