七十五

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 いつも通り無気力な表情をしてこの場に来たシカマルは、突然 綱手から告げられた事実に目を見開いていた。

 ーーーうちはサスケが里を抜けた。

 「ぬ、抜けた!?どうして!」と珍しく狼狽したシカマルが尋ねると、綱手は「あの大蛇丸に誘われちゃってるからだよ!」と迫力満点に。シカマルの脳内にあまり多くはない情報が流れた。

 「ちょ、ちょ、ちょい待って下さいよ!何であんなヤバいヤツに、サスケが誘われなきゃいけないんスか!?」
 「そんな理由はどうでもいい。とにかく時間が惜しいんだ。これから中忍としての初任務をやってもらう」

 事が事だけに全然ワケ分からないままだが、シカマルはとにもかくにも冷静さを取り戻そうとした。とにかく必要な情報だけを脳の中央に寄せて頭をフル回転させる。

 「......サスケを、連れ戻すだけっスか?」
 「ああ。......ただし、この任務は急を要する上に、厄介なことになるかもしれなくてな......大蛇丸の手の者がサスケを手引きしている可能性が高い」

 まさに最悪のパターンだとシカマルは内心舌打ちする。里に潜入するほどの実力者となると、一介の下忍レベルではないことは確かだ。

 「だったらこの任務、四人小隊の人員構成は上忍と中忍だけにして下さいよ」
 「それは出来ないんだよ」
 「何で!」
 「分かってるだろう。今ほとんどの上忍たちは、必要最低限の人数だけ残してみんな任務で里外に出てる。一任務に一小隊を出すのすら今は厳しい状況なんだ」
 「そ、そりゃあ......分かるっスけど......!」
 「これより三十分以内に、お前が優秀だと思う下忍を集めるだけ集めて里を出ろ!!」

 綱手の表情を目にしてから、溜め息を押し殺して、シカマルは姿を翻した。これ以上の問答はただの時間の無駄だということはシカマルにもよく分かった。

 「めんどくせーけど......知ってるヤツのことだけにほっとけねーしな。ま、なるようになるっスよ」

 シカマルは肩を竦めて笑い、それから扉を出て行こうとした。だがその足が出て行く前に、引き止める声。

 「一人、私の推薦したいヤツがいるんだが...。ナルトを連れて行け」
 「え...ナルト!?なんでアイツ、」
 「いいから連れて行け。私がアイツを買ってるんだ」

 まさかと思った同期の名前にシカマルは声をあげるが、綱手はシカマルの意見はどうあれ一蹴した。かなり自信ありげである。

 「(......第七班か)」

 シカマルは向き直って頭を掻いた。
 確かにナルトはこの事態に真っ先に食いついてくる人物だろう。そしてサクラはこの事態を綱手に報告した人物だという。ならばいの一番にサスケを説得しようとして......できなかったか。

 「(......なら)」

 シカマルは気乗りしない思いのまま、口にした。

 「あの......雪箆トモエって、コイツも第七班の一員なんスけど。アイツはこのこと、知ってるんスか?」

 シカマルの何気ない質問に、綱手はぴくりと眉を動かした。「雪箆トモエ、ねぇ」と呟いて机上に両手を組んだ綱手。

 「その子のことは知っている。雪箆家には私も昔世話になったからな…。
 あの子の性格、過去、人間関係はおおよそ分かっているよ」

 シカマルは目を瞬く思いだった。綱手から何気なく与えられる言葉はシカマルにとって初耳なことだらけである。だがこの状況、シカマルはとにもかくにも必要な情報だけを得ようとした。
 「それで?」とシカマルがもう一度問うと、思い返すようにしていた綱手は上目でシカマルを捉えた。

 「あの子にサスケを連れ戻させるのは、恐らく無理だ」

 「……はぁあ…アイツは十分戦力になるんスけどね」
 「そう言ったってしょうがないだろう。いいから早くいけ。時間をかなりロスしている。あと二十分以内だ」

 シカマルはそれ以上何も言うことなく部屋を出た。大急ぎで火影邸を後にし、知っている連中の家を目指す。

 連れていけない以上は、なるべくアイツを悲しませる結果にゃしたくないと、シカマルは密かに思った。
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