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朝マネヒョンから連絡があって、今日の仕事が上の都合によって明日に変更になった。つまり突然の休日がやってきたのであり、何しようかと考えていたところ、そういえば昨日ユリもオフと言っていたことを思い出した。
せっかくならユリと一緒にご飯でも食べに行こうかなと思った。まだ二人で出掛けたことはないから、どこに行こうかな、何が好きかな、なんて。突然の思いつきではあるが、思い立ったが吉日。
さっそくネットで店を検索しながら、ユリの部屋をノックしたけど応答がない。
……どっか行っちゃってるのかな?
今の時刻ならユリはいつも起きているし、でも出掛けるにしては早いような気もする。それに遠出するような話はしてなかった。
俺がユリの部屋の前で立ち止まっていると、完全に寝起きらしいナムヒョンが通りかかって声をかけてきた。
「…どうしたー…ジョングガぁ」
「ヒョン、ユリって休日でも事務所行ってます?」
「うーん…?いないのか?」
「はい、中にいる気配もないですし」
「それならユンギヒョンのとこじゃないか?」
「…え?」
「俺が思いつくのはそこだけだぁ……ふぁ、もう一回寝ようかな」
なんでヒョンのとこに?そういえば前もユリはユンギヒョンの作業場にいた。あの時はそんなに気に留めなかったけど、どうしてだろう、今は何だか気になってしょうがない。
それから俺は結局ナムヒョンの言葉を信じて、ユンギヒョンの作業場まで足を運ぶことにした。確かユンギヒョンは昨日から宿舎に戻ってないから、きっとまた徹夜してるんだろう。寝起きの悪いヒョンの不機嫌そうな顔が頭を過ったけど、ユリがいなかったら直ぐ帰ればいいし、きっと問題ない…たぶん。
無事作業場に着き、インターホンを押す前に一呼吸置く。
そうして手を伸ばしかけたところでまさか向こうから開くとは思わず、咄嗟に手を引っ込めてしまった。
「…あ?ジョングガか?」
「あ、おはようございます、ヒョン。…徹夜ですか?」
「いや、普通に寝てた。ここ(事務所内に)シャワーあるしな」
一応徹夜ではないみたいだけど寝起きであることに変わりなく、目が完全に開ききっていないヒョンを見て、俺は用件だけを済ませることに意識を置いた。
「あの、ユリが今日どこ行ったか知ってます?」
「………そこ」
「はい?」
ヒョンが指さした方向には作業場のソファで毛布にくるまり、丸く縮こまって眠っているユリの姿だった。
「起こすなよ。早朝にいきなり押しかけてきたんだコイツ。おかげで俺もあんま寝れてない」
「……………」
「……なんか変なこと考えてないか?」
「いえ全然!?」
「ハァ…、最近カムバック準備で忙しいだろ?そういう時にオフが重なると、時々死んだように寝るんだよ。昔から」
「…疲れが溜まってるってことですか?」
「多分な、…なんか機械みたいだよな。充電がなくなったら動かないなんて」
俺とヒョンが扉の方で話し込んでるのに、その間もユリはピクリとも動かなかった。言葉の通り、死んだように眠っている。
「でも…なんでヒョンのとこで寝てるんですか?別に自分の部屋でもいいと思うんですけど…」
「……そんなん知るか。とにかくお前今日は帰れ、俺まだやることあるし」
そう言い残して、眠そうに頭をかきながらトイレに向かったヒョン。部屋から出てきたのは偶然だったみたいだ。
しかし結果的にUターンをくらった俺は、静かに眠っているユリを横目に宿舎へと戻ることにした。
***
その日の夕方、ユリはユンギヒョンと一緒に宿舎に帰ってきた。あれだけ寝ていたのにまだ寝たりないのか目を擦りながらふらふら歩くユリを、ヒョンが年上らしくちゃんとエスコートしていた。
「ユリ、とりあえず飯を食べろ」
「……お風呂いきます…」
「おい、風呂じゃない、お前が行くのはダイニングだ」
「お風呂…」
「そっちは玄関だぞ」
テヒョニヒョンみたいになってしまったユリ。眠いときはこんな風になっちゃうのか、なんて彼女の意外な面に内心驚いた。
そのままユンギヒョンに大人しく手を引かれ、すとんと椅子に座った。ユリ用に残されたご飯をヒョンが温めなおしている間に俺はユリに近づいた。そしてヒョンに聞かれないよう、できるだけ小声で尋ねる。
「ユリ」
「…はい」
「なんでユンギヒョンのとこで寝てたの?こっち(宿舎)じゃ寝れない?」
「……前にテテオッパが無理やり…」
「!?」
「部屋に入ってきたから、起こされたくなくて…」
「…あ、ソウナンダ」
「それに…ユンギさんが仕事している時の音が好き」
「そうなの?」
「はい、すごく…落ち着きます」
子守唄みたい、と嬉しそうに笑うユリに俺は何も言えなかった。
ヒョンはこのことを知らないみたいだけど、俺がヒョンの立場だったら絶対嬉しい。だって自分との場所が落ち着くって、最高の誉め言葉じゃないか。