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ぼそっと何かを呟いたジョングクの声は聞き取れなくて、俺が聞き取れるように耳元を寄せようとしたとき、それまでずっと下を向いていたジョングクはいきなりバッと力強く顔を上げた。心なしか目がぎらついてるんですけど、この子。
「ヒョン!!」
「ど、どしたの?」
「俺、ユリが好きかもしれない!ううん、……好きなんだ!
ど、どうしよう!?なんでこんな気持ちになってるんだろう!?これからどうやって顔を合わせれば――「ストップ」
ついさっきまでこの世の不幸全部背負ってますオーラが半端なかったのに、今度はとにかく落ち着きがなくなってしまった。しかも突然のユリへの告白。声が大きいけど近くにユリがいたらどうすんのさ。
俺はとりあえず部屋の扉へ向かって、廊下の様子を伺った。誰かが通りかかって聞かれでもしてたら、あのマンネは暫く立ち直れないだろうから。
幸い、廊下には誰もいなかった。そうして安心したのも束の間、ジョングクのところへ戻ればまだ落ち着きがない。貧乏ゆすりが激しいし。
「ジョングク、ひとまず落ち着きな。人を好きになるのは変なことじゃないし、なんでとかそういう理論的に考えられるものでもないから。だから大丈夫、素直に受け入れればいいんだよ」
「ジミニヒョン…」
「ていうか俺はもっと前から、グクはユリが好きなのかなって思ってたけど、まさかの本人が無自覚だったの?可愛いねぇ」
思い返せばジョングクは同い年の子たちが青春時代を送っている間も、練習生として毎日学校と練習の繰り返しで、そういう経験は少ないのかもしれない。だから自分の気持ちにも気づけなかったのか。
「あー…急に恥ずかしくなってきました…」
「なんでさ」
「だって好きな子がこんな近くで、しかも一緒に住んでるとか…お風呂一緒のとこ使ってるし…」
「ユリは使った後、自分でちゃんとお風呂綺麗にしてるから何も残ってないよ」
「そういうんじゃないです!ヒョンの変態!」
「変態はお前でしょ!?顔真っ赤じゃん!」
これがあの黄金マンネといわれる男なのかと疑ってしまうほど、今のジョングクはびっくりするぐらいユリに溺れている。多分、自覚した分、好きな子と接するのにこれから絶対緊張するタイプだ。
「ジョングク、そんなんじゃユリにもっと怪しまれちゃうよ。まぁ、向こうにさっさと気付かれてもいいなら止めないけど」
あ、でもその方がいいかもしれない。勝手な偏見だけど、ユリなんて恋愛すらしたことない気がするし。真面目でダンスと歌にしか興味がないような子だから、恋愛的なアプローチは気付けない可能性が高い。
ここはいっそヒョンとして、この子たちのためにひと肌脱いでみますか。
「怪しまれる?」
「うん。実はさ俺、ユリに頼まれてジョングクのとこ来たんだよね」
「え…」
「ジョングクが最近変だから相談に乗ってあげて、って。お前のことよく見てるよ、あの子」
「ユリが、ですか?」
「仕事の時じゃないよ?普段のジョングクの様子がいつもと違うって心配してた」
そう言ったらまた顔を真っ赤にさせたジョングク。そりゃあ好きな子にそんな心配されるほど想われてるって知ったら嬉しいよね。
大丈夫、見た感じうまくいくよ。
俺もできるだけ応援するから、相手は結構手ごわいけど、頑張れ黄金マンネ。