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 「作詞のことで考え事してたんだって」
 「そうだったんですか?」
 「うん、普段より悩んじゃったみたいだよ」

 事務所で個人の仕事の打ち合わせ後、偶然にもジミンさんと廊下で会った。
 ジョングクさんの様子をジミンさんに聞いてきて頂いたのだけれど、どうやら自分の杞憂に過ぎなかったようだ。それならそれで良かった。作詞で悩むことはよくあるし、ジョングクさんは凝り性なところもあるから納得がいく。

 「でさ、ちょっと聞いてもいい?」
 「はい」
 「あー…ちょっとここじゃなくて…ごめん、向こうでもいい?」

 何やらあまり人に聞かれたくない内容らしく、ジミンさんに言われるがまま廊下の端っこにやって来た。今の時間帯は人も殆ど通らないし、上は屋上に繋がる階段ぐらい。そして移動したところでジミンさんはひっそりした声色で聞いてきた。
 
 「ユリってさ…どんな男の人がタイプ?」
 「………はい?」

 神妙な面持ちで尋ねられた言葉に、思わず質問系で返してしまった。

 「凄い変な質問をしている自覚はあるんだけど、実は同業の友達でユリが気になるって奴がいてさ、できたら聞いてきて欲しいって言われちゃって」
 「はぁ…そう…なんですか…」
 「誰が、とかは言えないんだけど……ゴメン!この通り!」
 
 手を合わせて頭を下げてくるジミンさん。自分と違って他事務所でも仲の良い人が多く、友人想いの優しいジミンさんだから、きっと頼まれたら断れないんだろう。
そんなに必死にならなくても、それぐらい別に構わないのに。それに自分は年上の人に頭を下げられるような人間でもないから、寧ろこっちが申し訳なくなってくる。

 「でも、タイプと言われても……自分、そういうの考えたこともないんですが…」

 こういう人に惹かれる、といった具体的なイメージが全然湧いてこない。そもそも男の子と恋愛をしたのだってアメリカに住んでいた時に一度だけ、まだ十三歳の子供だった頃の話だけど。あとは憧れの人はいるけど、恋慕ではないし。
 それに今の自分は“女の子”ではないから、男の人を好きと思うイメージが全く浮かばない。

 「じゃあさ、身近な人で…この人はかっこいいなとか思う人いる?」
 「身近?」
 「例えば―――メンバーならどう?」
 
 メンバーの中でと言われ、頭の中に7人を思い浮かべてみた。言うまでもなく皆さん全員かっこいいと思えるのだけれど、きっとジミンさんが求めている答えはこれではない。
 
ナムジュンさんは仕事以外の私生活でも声をかけてくださったり、ジンさんはご飯を作ってくださったり、お二人からは兄さんというより親のような愛情を感じられて、感謝という言葉では足りないぐらいお世話になっている。
 ホソクさんはダンスのことで話が合うし、分け隔てなく気遣える人間性は本当に尊敬できる。
 ジミンさんはメンバーの誰かが困っていると必ずその人の傍にいて、自分も歳が近いなかでは一番相談しやすい人だ。
 テテオッパは時々何を言っているか分からないけれど、自分がこの事務所に入るきっかけを下さった方でもあり、本当は一番信頼している。
 ジョングクさんはなにより命の恩人、あの事件以来ジョングクさんの傍は誰より安心できて、また、最近で言えば、自分はようやくメンバーとして認めてもらえたようだからそれがとにかく嬉しかった。
 ユンギさんは落ち着いた人だから、兄さんたちの遊びに付いていけないときはユンギさんがいると本当に有難くて、何も言わずにフォローしてくれるところは自分も真似したいぐらい。

 「……ユンギさん、ですかね」
 「えっ…、ユンギヒョン?」

 ―――それに、

 「はい。あの大人な雰囲気がかっこいいですよね」
 「そ、そうだね」

 ユンギさんは自分の“憧れの人“たちに似ている。
 音楽が大好きなところ、作業室で夢中になって曲を作り出す姿は“父親”に。
 不安や焦燥に駆られて心の苦しみを抱えていた姿は“あの人”に。
 
 このひとは放っておけない―――そう思った。

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