番外編:夢から醒めて

番外編:夢から醒めて

 深夜―――寝息を立てながら豪快に寝ている、とある人物の部屋を、物音を立てないようひっそりと足を踏み入れる訪問者がいた。

 「…ぐすっ、」

 その目には涙が溜まり、今にも零れ落ちてしまいそうだ。私物であろう大きな枕を両手に抱えたまま、部屋の主が眠るベッドへ近づいていくと、今度はもぞもぞとベッドの中へ入り込んでいく。
 大きなベッドのおかげで、訪問者が入ったところで窮屈にはならず、部屋の主も自分以外の誰かが入ってきていることに気付くことはなかった。


 そして明朝、また別の人物がその部屋を訪れると――

 「いやああああああ!?」

 何故か女性のような絶叫を響かせたのである。

 JH「な、なんだ!?」
 RM「火事ですか!?救急ですか!?」
 YG「おおおお落ち着くんだ」
 JM「一体どこからあんな奇声が…!?」
 TH「朝ごはんできたんですー?」
 JM「なわけあるかい」

 悲鳴により飛び上がって起きたメンバーたちが一斉に廊下へ集合すると、今度は悲鳴が聞こえてきた部屋へと足早に向かった。
 そこには、

 JN「ヤー!ジョングキ!母さんはそんな子に育てた憶えはないわよ!」
 JK「んー…ヒョ、ヒョン〜…な、なんですかいきなり……まだ起きる時間じゃあないです…」
 JN「とぼけるのはおよし!」

 部屋の主であるジョングクが眠るベッドにめがけて、RJぬいぐるみをぶつけるソクジンの姿があったのだ。

 JH「ちょっとちょっとヒョン、何してるんですか!?」
 JN「ちょうどいいところに!見てよ、コレ!」
 JH「一体なにが………ぬああああ!?」
 RM「ホソクまで何を………なぬ!?」
 YG「そんな大げさな………おいマジか」
 JM「僕にも見せてくだ………なんですと!?」
 TH「僕ココア飲みた………は?
   何でジョングクのベッドにユリがいるの?」

 テヒョンの言う通り、普通なら此処にいない筈のユリが、何故かジョングクにぴったりくっついたまま横になっていたのだ。しかも当の本人はこの状況下でも起きる気配がない。

 JK「え、ユリ……―――ッッ!!!???」

 そこでようやく事態の状況を掴んだジョングク。寝ぼけていた頭もようやく目覚めたのか、寧ろ彼女によって強制的に目覚めさせられたのか、目を見開いたまま石のように固まってしまった。

 JN「お前たちいくら仲良いからってベッドで一緒に寝るなんて…!」
 YG「言い方が生生しい」
 JK「ち、違います!!僕は何も…!」
 JH「容疑者はな、最初皆そう言うんだよ」
 RM「ちょっと署までご同行願おうか」
 JK「冤罪だぁッ!」

 ジョングクが兄たちに連行されそうになるなか、マンネラインたちは一人眠るあの子のもとへ。

 TH「ユリー?」
 「…んぅ」
 JM「起きれそう?」
 「………ジョングクさん、…どこ…」
 TH「あっちでヒョンたちが連行してるよ。でもユリなんでここに、」
 「―――…ッ!だ、だめっ…!」

 ユリは基本、寝起きは良い方だ。ただ、起きて直ぐはそんなに素早く動けるわけはなく、寧ろぼーっとする時間が長い。洗面所で顔を洗うまでは、先ず寝ぼけている子だ。
 それなのに今のユリは寝起きだというのに、驚くほど俊敏な動きで一直線に飛びついていった。

 JK「へ?」
 「連れてかないで…!」

 今まさに、兄さんたちにより連行されて行かれそうになっていたジョングクの背中へ。

 ***

 YG「なるほど、つまり……。
ユリは夢のなかでジョングクが知らない女の人と何処かへ行くのを見てから、本当にいなくなってしまったのではないかと思い、それを確認するためにジョングクの部屋に入って、なんやかんやで一緒に寝ていたと……」
 JN「うんうん、なるほどなるほど。それなら仕方ないねぇ。
 ―――って、ちがぁああああううううう!!」
 RM「ヒョン、朝から大声はやめてください」
 JH「まぁいいじゃないですか。僕たちも子供の時こういうのありましたよね?怖い夢見たとき、親の布団にもぐりこむのって」
 RM「そうそう。それと同じですよ」
 JN「なーに言ってんのっ、年頃の男女が同じベッドで一晩を共にするなんて大問題よ!」
 YG「ていうか当のユリは今どこにいるの?」
 JH「それなら、さっきからずっとジョングクの後をくっついてますよ」
 JN「無視!?」

 リビングにて緊急会議(?)を開いていた兄さんたちがホソクの指さす方を見れば、そこには普段なら見られないような光景が。
 
 何をするにも、ジョングクの後ろを一定間隔空けてついていくユリがいたのだ。
 まるでカモガモの親子のように、親鳥と雛鳥といった具合だ。

 JH「うーわ、ジョングギ、全く表情管理できてない」
 YG「アイツの口から砂糖でも出て来そう」
 JN「SUGAだけに?」
 YG「朝からよくボケかませますね」
 RM「あんなに笑顔で…世界一幸せそうだ」

 兄さんたちの言う通り、今のジョングクは心底嬉しそうな笑顔を浮かべ、そのままスキップでもしそうなほどご機嫌だった。その後ろを歩いているユリは、そんなジョングクの気持ちも知らず、ただ一生懸命付いていっているだけだが。

 すると突然、それまで歩いていたジョングクが足を止めたことで、後ろにいたユリは思わずジョングクの背中にぶつかりそうになってしまった。

 「……?」
 JK「っ、かわいい…!!」

 そして次にジョングクは自分の後ろにいたユリをぎゅっと力強く抱きしめた。どうやら嬉しさのあまり、つい心の声が溢れてしまったらしい。
 一方でユリの方も悪夢を見てしまったとはいえ、現実ではジョングクがちゃんと近くにいることが嬉しいようで、控えめであるがきちんと抱きしめ返していた。

 TH「ユリぃ、僕ココア飲みたい」
 JK「ちょっとヒョン、せめて空気読んでください。それぐらい自分で入れたらどうですか」
 TH「いやだ。休日の朝はユリのココアって決めてるから。ってことでそろそろ離しな、ジョングギ」
 JK「あー残念ですが、僕じゃなくてユリの方が僕といたいみたいなんで。ま、諦めてください」
 TH「じゃあジョングギがキッチンの方行ってよ。そしたらユリが一緒に来てココア作ってくれるし」
 JK「えーどうしよっかなぁー。僕はこれから部屋でゆっくりしようかなって思ってたんでぇ」
 TH「…はぁ!?従順すぎるユリ連れ込んで何する気!?させないけど!?」
 JK「何もしませんけど!?」

 ユリがジョングクから離れない姿を見ていて、本当は嫉妬でいっぱいだったテヒョンの我慢ももう限界だったらしく、そこからは二人の口頭合戦の始まりであった。

 TH「そもそもジョングギがどっか行っちゃったのが原因でしょ!全く!何してんの!?」
 JK「誤解が生まれる言い方しないでください!それはあくまで夢の話!」
 TH「ジョングギがいなくなったら俺でも悲しいのに!」
 JK「ヒョ、ヒョン…!」
 TH「ユリ泣かせたら駄目じゃん!」
 JK「た、たしかに…ッ、俺はなんてことしてんだ……俺の馬鹿野郎!!」
 TH「ほんとだよもう。そういうわけでユリ貸してね」
 JK「さっきの感動を返せ」
 

 JM「そんなに悲しかったの?」
 「……はい」
 JM「ユリにとってジョングギはそんなに大きな存在になってたんだね。やー、不謹慎だけどそりゃあアイツ喜ぶよ」

 ジョングクがユリを一人の女の子として好いていることを、唯一知っているジミンはジョングクの気持ちを思うとつい嬉しくなってしまった。黄金マンネにもようやく春が訪れるか?と。しかしそんなジミンの思いとは裏腹にユリの方は、

 「皆がずっと一緒にいられるわけじゃないのは分かってます。いずれは別々の道を歩むかもしれないし…。
それに夢とはいえジョングクさんが女の人と一緒にいたのも、いつかは皆家庭を持つだろうから仕方ないことだけど……でも、まだ皆一緒がいい」
 JM「そうだね。………うん?

 ……ユリさん、確認なんですけど、夢で悲しかったことって…ジョングギが知らない女の人と一緒だったからじゃなくて…」
 「BTSはまだ誰も欠けちゃ駄目です。いなくなって良い人なんていませんよ」
 JM「あー…なるほど。これは、」

 ユリは何が一番悲しかったかというと、ジョングクがどこかに行くことでグループをやめてしまうのではないかということであって。
 ジョングクが女の人と一緒にいようが、そこは大きな問題にはならないらしい。
 つまりグループ愛によるものだったのだ。

 その一方ジョングクは、好きな子がもしかして嫉妬してくれたのではと、ようやく片思い脱却か?!などとつい先ほどまで浮足立っていたほどだ。
 ジミン氏はそんなジョングクにどうやって説明しようか今から頭を悩ませるのであった。

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