番外編:House of ARMY
番外編:House of ARMY
「私のイッピやぁ〜!今日も魅力的ねぇ!」
学校から帰ってきた長女のナムちゃんが愛犬のイッピを呼ぶ声が家に響いた。ご主人様が帰ってきたことで、イッピは今日もセクシーにハートを投げている。
「うんうん。バナナでも食ってろ。ね?」
そう言ってナムちゃんは宅配物を大事そうに手に持ったまま、嬉しそうに自分の部屋へと駆けて行った。どうやら大好きなBTSの新作アルバムが届いたらしい。
部屋に入って早々に箱を開けて中身を確認するナムちゃん。しかし、そこに入っていたファンクラブ会員名義は何故か、
「…チョン・ホソク?……お母さん!?」
ホソクママの名前になっていたのであった。
急いで母のもとへ向かったナムちゃん。優雅にお茶を飲んでいた母に詰め寄る。
「ちょっとお母さん!」
「な…っ、どうしたの?マイドーター?」
「防弾少年団のファンクラブの名義、なんでお母さんの名前なの!?」
「あちっ!もう!!…カムダウン、カムダウン、マイドーター。全く…。どうやら入れ替わってたみたいね」
「入れ替わってた…?」
ホソクママが何やら呟きながら私室へ向かい、戻ってきたと思えばその手にはナムちゃんが持っていたのと同じアルバムが。
「どうやら貴女のとマミーのやつが入れ替わってたみたいね〜ホホホ」
楽しそうに笑うホソクママに対し、ナムちゃんは疑心ありげに口を開いた。
「…“대학까지도 너랑 간다면(大学でもお前と一緒ならうまくいきそうだ)”」
「“가나다라마바사아 하쿠나마타타!(あかさなたなはま、ハクナマタタ)” ……お!?」
「…キム・ナムジュン、キム・ソクジン」
「ミン・ユンギ、チョン・ホソク、」
「「パク・ジミン、キム・テヒョン、チョン・ジョングク!BTS!!きゃあああああ!!」」
お互いがARMYであることを確認するかのように、歌詞から掛け声まで合わせて言う二人はテンションが最高潮に達したのか、きゃーきゃー叫びながら抱き合うのであった。
「お母さ〜ん!!」
「さすが私の娘ね!!よくやったわ!」
そんな二人を遠くから呆れたように見ているのは、この家の長男であるテヒョンくんであった。学校の優等生である彼は、母と妹のはしゃぎ様にドン引きしているようだ。
「ってあら!いけない!そろそろユリちゃんのミルクの時間だわ!早くいかないとぐずっちゃう!」
先ほどまでのはしゃぎ様から一変、ホソクママは急いでミルクの準備をしにキッチンへ向かった。この家の次女であり、可愛い末っ子のユリちゃんのために。
***
「は〜い。ユリちゃん良い子でちゅね」
「…ばぁぶ」
「今日もなんてキュートなの〜。私に似て美人さんね〜」
「…ばぶ…?」
可愛いベビー服に身を包んだ末っ子にメロメロなホソクママ。するとそこへやってきたのはアルバムを持ったナムちゃん。
「あら、どうしたの?」
「ユリにもBTSを教えてあげるのよ!」
「まぁそれはいいわね。でも赤ちゃんに分かるかしら」
「ばぶばぶ」
「ほらっ、この子乗り気だわ!」
ナムちゃんは床にフォトカードを置いていくと、カードに映るメンバーを指差して一人ひとり教えていく。
「で、最後にチョン・ジョングクね。よし、それじゃあいくわよ。はい、この人は?」
「……だぁぶ?」
「赤ん坊が喋れるわけないだろ?馬鹿か」
「もうっお兄ちゃん邪魔しないでよ!」
次に現れたのはテヒョンくん。呆れたように長女を見ると、ホソクママに抱っこされていたユリちゃんを自分の膝へ座らせた。
「ユリ、これはキム・テヒョンだよ。キム・テヒョン」
「あう」
「いい?この超イケメンなテヒョンを一番に憶えるんだよ?」
「いやいやまずはナムジュンでしょ!ユリ、これがナムジュンだよ〜」
「…たいっ」
「お?ユリはジョングクを指さしてるわよ」
「ばぶ」
「何言ってるの、ジョングクより先にテヒョン。ほらこれ見て、かっこいいでしょ?」
「たぁやっ、だぶう」
「嫌がってるよ、やめなお兄ちゃん」
「なんだとっ!?」
「ていうかなんでユリはジョングクだけは分かるんだろ?」
「…あぁ、それはね…」
ホソクママが何か言おうとしたところで、玄関口の方から声が聞こえてきた。
「ただいまー…」
「あれ?お父さん?」
「お父さん今日海外出張じゃなかったの?」
「あなた!出張はどうしたのよ!?」
珍しい時間に帰宅してきたジョングクパパに家族全員が驚きながら出迎える。するとジョングクパパは気まずそうに口を開いた。
「いや、それが空港で…パスポートなくしちゃって…」
「はぁあ!?どこのどいつがパスポートなくしたって!?もうほんとに!このアンポンタン!」
「か、海外出張といえば一度はパスポートなくしたりするもんだろ?」
「なに馬鹿なこと言ってんのあんたは!?」
「お父さん、海外出張嫌だからってわざとなくしたんじゃないよね?」
「ほんっとに…あ、もしかしてユリと離れたくなかったとか?…なんてね。流石にないかー」
「……そそそそ、そんなことあるわけないだろ?」
「「「………」」」
ナムちゃんが冗談で言ったのに、ジョングクパパは明らかに動揺してしまっていた。しかもよく見れば、パパの手には途中で買ったと思われるベビー服の袋があったのだ。出張に行くにしても、何故そんなものを買おうとしたのか。相変わらずの親バカっぷりに皆呆れるしかない。
「この親バカ野郎!もういいからさっさと着替えなさい!」
「いたっ、か…母さん!スリッパで叩かないでくれよ…っ」
「お父さん、電話鳴ってるよ」
「あ、ほんとだ。…Hello? Yes.……Ayo ladies & gentlemen,My name is JUNGKOOK!And scale is jong!」
意味の分からない英語を述べながら、自室へと荷物を運んで行った父であった。
***
「…お?」
この家の居候である、叔父さん――ユンギおじさんはジョングクパパの兄弟。そのユンギおじさんがある部屋を通り過ぎようとしたときだ。
「はい、ジョングクはどーこだ?」
「…だぶ」
「…んんん!!!よくできましたぁああ!!」
「あい」
出張に行けなくなってしまったジョングクパパが、次女ユリちゃんに一生懸命写真を見せている姿があったのだ。
「こっち見て!はいチーズ!…わっ、うちの子可愛いすぎるんですけど!?天使だ!」
「ばぶぅ…」
「あぁごめんねぇええ!フラッシュは嫌いだったよね?!パパが悪かったよぉ!」
娘にデレデレすぎる兄弟を理解できないユンギおじさんは何も見なかったことにして、その場を立ち去っていった。
すると今度は、
「お父さんの仕業かよ!」
「…テヒョン、これはパパとユリちゃんの大事な時間なんだ。お前は勉強でもしてなさい」
「ユリがジョングクだけは知ってるから変だと思ったんだよな」
「お父さんは彼ならユリを任せられると確信している。彼はお父さんと同じくらいイケメンだからな!ちなみに新しいベビー服もCOOKYにしたんだ!」
「あ!アンタ!性懲りもなくユリちゃんの部屋に押し入って!お昼寝の時間なんだから邪魔しちゃ駄目ってあれほど言ったでしょ!?しかも、まーたCOOKYのグッズ買ってきたのね!?」
「実は抱き枕用のぬいぐるみも買ってきたんだ!」
「何ドヤ顔で掲げてんのよ!」
「ほら〜ユリ、これをジョングクだと思って寝るんだよ〜」
「そんなんなら僕のTATAをユリにあげた方がいいしっ」
「ワンッワンッ」
「イッピ!…ん?それはCHIMMYか?!」
「ユリ〜、あたしのKOYAあげる…って何これ」
「おーい。なんか時計のなかにRJがあったんだけど。あと、SHOOKYも」
「叔父さんまで何?!」
「は?」
いつの間にか家族大集合となったなか、末っ子は昼寝に入っていましたとさ。ちゃんちゃん。