番外編:破壊神と料理だぞ?

番外編:破壊神と料理だぞ?

 ガンッ!ガンッ!ダンッ!
 何を壊しているのかと疑いたくなるようなそれは、とてもキッチンから聞こえてくるとは思えない音だった。

 「リーダー…な、何をしておられるんですか」
 RM「あぁ、ユリ。おかえり。何って、見ての通り料理だよ」
 「……そ、そうですか」

 キッチンに立つナムジュンがユリに見せた光景は、調味料たちが飛び散らかり、材料の一部がシンクや床に落ちていて、料理というより破壊に近いかもしれない。

 RM「今日は仕事が早く終わったから、せっかくだし皆にご飯作ってあげようと思って」
 「ありがとうございます。あの、それなら自分にも手伝わせてください」
 RM「いいよいいよ。ユリは休んでな。ここはオッパに任せて」
 「いや、是非とも、やらせてください。お願いします…!」
 RM「そう?じゃあお願いしようかな」

 このままでは料理ができる前にキッチンが破壊されそうだ。そうなる前になんとか止めないと。ここを預かることが多いユリは初めて使命感に駆られていた。

 RM「チャプチェとチゲを作ろうと思ってるんだ」
 「なるほど」
 RM「切る野菜はあとチゲの分だけ。お願いできる?」
 「はい」

 ナムジュンが切ったと思われる野菜たちの傍に置かれた残りの材料。ユリが切っている間に、チャプチェの方に取り掛かるナムジュン。
 その隣でユリは残りの材料を切りつつ、ナムジュンが見ていないうちに彼が切った大きすぎる野菜をなるべく均等になるよう切っていく。火の通りが悪くて、食べたメンバーから小言を言われるナムジュンを見たくなかったのだ。

 RM「よし、野菜炒めちゃおうか」
 「あ、待ってください」
 RM「?」
 「人参だけちょっとレンジにかけておきましょう。水をほんの少し入れてラップをすれば大丈夫です。こうしておけば必要以上に炒めなくても柔らかくできるんですよ」
 RM「おおー」
 「それと…材料は一気に炒めるより、できるだけ火が通りにくいものから先にした方がいいですね」
 RM「あーなるほど」
 「あとは…―――」

 それからユリは自分の作業も進めながらも、ナムジュンに助言をしていき、キッチンが破壊されないよう努めていく。

 するとリビングの方へ現れたのは、大変素晴らしい歌声を口ずさみながら帰ってきたジョングクだった。

 JK「I’d spend ten thousand hours and ten thousand more
if that’s what it takes to learn that sweet heart of yours………ハァ、こんな良い歌をユリの前で歌えたらなぁ…」

 RM「お、早かったなぁジョングガ!」
 JK「あれ、ナムヒョンなんでキッチンに―――」
 「ジョングクさん、おかえりなさい」
 JK「ッッ!!!??」

 ドタンバタンッ、ドンガラガッシャーン!
 スマホを片手に持っていたジョングクは、まずはキッチンに立っていたナムジュンを見て、その次にナムジュンの隣にいたユリの存在に気付くと、驚きのあまり近くにあった椅子に足を引っかけてしまい思いっきり後ろに倒れ込んだのだ。

 「だ、大丈夫ですか…!?」
 RM「おいっ急にどうした?!何がどうしてそうなったんだ!?」
 JK「あ…えっと…いや……だ、ダイジョブデス」
 RM「カタコトになってるぞ。頭ぶつけたんじゃないのか?」
 JK「……ユリさん」
 「はい」
 JK「さ、さっきの、聞いてた…?」
 「え、なにか言ってたんですか?すいません、換気扇の音でかき消されちゃってたかもしれません」
 JK「…そ、そっか〜………マジで良かった…」
 「もう一回言ってくれれば、」
 JK「いや!全然気にしないで!ほんとに!」
 「そうですか?」
 JK「うん!もうね!すっげぇお腹すいたーって言ってただけだから!」
 RM「それはいつもだろ」
 「……たしかに」

 まさか好きな人のために恋愛ソング歌ってました、なんて口が裂けても言えないジョングク。それも目の前にその本人がいるのだから。

 JK「そ、それより!なんかいい匂いしますね」
 「丁度良かったです。今、リーダーが美味しいご飯作ってくれてるんですよ」
 JK「…………え゛」
 RM「お前がお腹空かせて帰ってきてくれて安心したよ。いっぱい作ろうと思ってたからさ」
 JK「えーっと………あ!僕、さっきケータリング頼んじゃったんです!」
 RM「あ、そうなのか?」
 JK「はいっ、すいません作ってもらったのに……じゃあ、僕はこれで――」

 ナムジュンが作ると聞いてしまい、明日の腹痛を回避するためにもジョングクはしれっと自室へと避難しようとする。しかし、

 RM「ユリも手伝ってくれたから結構うまくできそうなんだけどなぁ…まぁそれなら仕方ないな」
 JK「すいません!!ケータリング頼んだと思ったら、手違いで頼めてませんでした!僕、食べます!!」
 RM「お、おおっどうした急に。別に今から注文しても問題ないだろうに」
 JK「いやいや、折角ユリのてりょ……じゃなかった、ヒョンの手料理も久しぶりに食べてみたいなーって思って」
 RM「そうか?いやーそんなに言ってもらえると、ヒョンも嬉しいよ」

 手料理にユリが関わっていると聞いて、あっさりと意見を変えて戻ってきた。一方でジョングクの言葉を純粋に受け止めるナムジュンはそんなことなど露知らず、嬉しそうに笑顔を見せている。

 JK「俺、近くで見てていいですか?」
 RM「いいけど油跳ねに注意しろよ」
 「リーダー。調味料合わせました?」
 RM「あ、そっか、先に合わせておくのか」
 「はい。その方が後で慌てませんからね」

 ユリの言う通りにナムジュンがリビングのテーブルの上で、調味料をそれぞれ計量して小皿に入れていこうとするがここで問題が発生。

 RM「ん?これ出てこないな。強く振れば出てくるか?」
 JK「ヒョ、ヒョン、そんなに勢いよくやったら…」

 近くで見ていたジョングクが駆け寄るが、調味料の計量で頭がいっぱいになっているナムジュンはそれに気付かず、一生懸命にソースの入ったボトルを振っていく。

 RM「フンッ」
 JK「っ、……ユリ!!」

 そしてついに恐れていた事態が。ナムジュンが勢いよく上下に振ってしまったため、ソースが上空に飛んでいき、その一部がキッチンに立っていた後方のユリに向かっていってしまったのだ。

 その一部始終を見ていたジョングクは持ち前の瞬発力で、ユリの背に立ってソースから彼女を守り抜くため走る。

 JK「ぐぁ…!!」

 ソースが先日買ったお気に入りの服にかかろうとも、ジョングクは決して怯まなかった。ユリが被害に遭わないため、そのままの通り、身体を張って守ったのだ。

 ところがそれだけでは終わらず、ナムジュンとユリが気づかないところでジョングクはその後も必死に頑張っていた。

 ナムジュンが蛇口をおもいっきりひねったことで、ユリにまで水跳ねがいこうとしたときも自ら水とぶつかっていき、
 油を入れ過ぎて油跳ねが強すぎたときはフライパンの蓋を手に、まるで騎士の盾のように守り、
 包丁を雑に置いておいたせいで、床に落ちてしまいそうになったときは見事なスライディングさばきで受け止めていた。

 JK「(ユリは…俺が守る…!!)」

 そう――全ては愛する人のため。
 破壊神ナムジュンから心無い攻撃をされようと、ジョングクは何度でも立ち上がるのであった。


 そうしてついに、

 RM「すごい!こんなにうまそうにできたのは初めてだ!」
 「これなら皆も喜んでくれますね」

 無事にキッチンは破壊されることなく、見事な料理が出来上がったのである。

 JH「あーお腹すいた。……え?めっちゃいい匂いする」
 TH「この匂いは…もしかしてチゲ!?」
 JN「二人が作ってくれたの?」
 「自分はお手伝いしただけで、殆どリーダーが作ってくださいました」
 RM「ちょっと不格好だけどね。でも味は保証するよ」
 SG「全然不格好じゃないよ。凄い上手そうだ」
 RM「さぁ皆、座って座って!」
 

 JM「よーし僕も食べようっと、……ってうわ!なんだ?足が何かに引っかかって………!!ジョ、ジョングガ!?ど、どうして!?なんでそんなにボロボロなの!?」
 JK「ジ、ジミン氏……」
 JM「クソ!一体誰にやられたんだよ!」
 JK「…ユ…ユリは……無事ですか…?」
 JM「そんな…ッ、こんなになってもユリのことを…!」
 JK「彼女が無事なら俺はいいんです……うっ…あとのことは……お願い、します…」
 JM「ジョ、ジョングガァ!!」

 一人の戦士の犠牲により、宿舎の平和は保たれた。彼の偉業はきっと今後も語られ続け―――

 TH「ジョングガー、食べないなら俺お前の分も食べちゃうからねー」
 JK「………だめぇえええ!!」

 ることはなく、彼はこれからも大好きなあの子ユリを傍で守り続けるのであった。

 RM「お前はなんでそんなに汚れてるんだ?」
 JK「ヒョンのせいでしょうが!!!」

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