集会の時間
今日は月に一度の全校集会。E組は山の中の校舎から本校舎の体育館に行かなくてはならない。しかも昼休みの時間を潰して、だ。
全校集会は、E組が晒し者にされる瞬間だ。もちろん学校の方針なので咎めるものもいない。一年、二年とそれを見てきた彼らは、それを考えるだけで憂鬱だった。
体育館に到着して整列していると、他のクラスの面々も徐々に集まってくる。
そうして全校集会が始まるのを待っていると、明らかに私たちをバカにするような、軽蔑するような笑い声が聞こえてくる。
不快極まりないが、集会が終わるまで私たち3Eの生徒は長々とこの時間を耐えなければならなかった。
集会が始まっても不快な時間は変わらず続く。
生徒のみならず教師までもが平然とE組の生徒を軽蔑、差別するような発言をするのだ。
「そういやカルマは?」
「サボリ」
「あのヤローだけ!?」
「…集会サボってバツくらったところで痛くもかゆくもないってさ。成績良くて素行不良ってこういう時うらやましいよ」
「全くだよ」
渚と菅谷創介のそんなやり取りを近くで聞きながら、そういえば旧校舎の原っぱでスマホ片手に寝転がっていたカルマの姿を思い出して百合はため息をついた。
***
集会も佳境になったころ。
校長先生から生徒会にイニシアチブが移る。
その準備を生徒会が進めているさ中、烏間先生とビッチ先生が体育館に入ってきた。
本校舎の教師たちとは明らかに雰囲気が違っているのか、E組以外の生徒たちは二人に釘付けになっている。
そんな中でも二人はそんな視線を気にすることもなく、いつもの距離感──きれいに装飾した対先生用ナイフ専用のケースを自慢しあっている中村莉桜と倉橋陽菜乃を烏間先生が注意したり、殺せんせーの弱点を吐くようにビッチ先生が自分の胸元に渚を押し付けたり…やりたい放題だ──で接してくる。
自分たちE組の生徒にとって、彼らのそんな行動は日常の一部になっているので何とも思わないのだが、そんな彼らの様子を見ながら談笑しているE組を残りのクラスの生徒たちは快く思わなかったようだ。
「…はい。今皆さんが配ったプリントが生徒会行事の詳細です」
生徒会からの行事説明が始まるが、そんな中先ほどの仕返しのようにE組は存在を無視された。
「…すいません、E組の分まだなんですが」
磯貝が皆を代表してそんな風に主張はするのだが、当然のように聞き入れてはもらえなかった。
それどころか、「すいませんけど、全部記憶して帰ってください。ほら、E組の人は記憶力も鍛えた方がいいと思うし」…などというあからさまな嫌みが飛んでくる始末である。さらにはそれにつられてバカにするような笑い声が体育館中から響いてくる。
そんな陰湿な笑い声に耐えていると次の瞬間どこから舞ってきたのかE組生徒各自の手にプリントが配られていた。
唐突に自分の手にプリントが配られたことも驚きだが、何よりも驚いたのはそれがすべて手書きされていたことだ。こんなことが可能なのは地球上に一人(?)しかいない。
「問題ないようですねぇ、磯貝くん。手書きのコピーがクラス全員分あるようですし」
その思い当たる"一人"の声が端の方から聞こえてきた。
「…はい」
困り切っていた磯貝もふっと表情を緩め、そしてプリントを片手に壇上に向って手を挙げた。
「あ、プリントあるんで続けてください」
磯貝の宣言はE組以外の生徒を驚かせるには十分なようだった。その証拠に登壇している生徒会役員が「えっ」と絶句する。そしてまるで信じられないものを見るかのようにE組の生徒が手にしているプリントに視線を注ぐ。
「だ…誰だよっ!笑いどころ潰したやつ!…あ、いや。…では続けます」
そう言うと再び生徒会役員は生徒会行事の説明を開始した。
しかしその表情は明らかに面白くなさそうだった。
堂々と前を向いて話を聞いていたE組の面々以外は。