中学編入
日本へ戻ってきた私は早速中学へと編入した。私の来歴を見た学校の教師は戸惑いを憶えていたが。
というのも、現在の私の学力がどれぐらいか分かりやすく伝えるとすれば、アメリカにいたとき、某有名大学に提出した小論文で最優秀賞を頂いたぐらいだ。なぜ論文を提出したかというと、とりあえず手っ取り早く圧倒的な学歴が欲しかったからだ。学校に通わず仕事をするにはそれがあると様々な場面で便利なため、学士の先生に薦められて取り組んだものだった。
これでも常人離れした記憶力があり、例えば地図を一目見ただけでも、本の内容を一瞬読むだけでも、私の頭は器用に記憶してくれる。学士の先生曰く、映像記憶とも違う本当に稀な能力らしい。本を読んだときに画像として記憶するのではなく、内容を瞬時に理解することもできるから、勉学に励む側としては大変重宝されるものだとか。
そんな私だから、今更中学に通う必要はあるのか、と疑問に思われてしまうのも仕方ないかもしれない。しかし私は日本の学校に通うために戻ってきたのではない、せめて義務教育期間中だけでも家族と一緒に暮らそうと思ってきたのだ。あとは少しの好奇心かな。
一度目の人生のとき、私の中学生活は散々なものだった。理不尽な部活動に、気味の悪いクラスメイトたち、意地汚い教師たち。平穏に過ごして小学校から一気に奈落へと突き落とされたような感覚。私が人間不信になったのもあの時期が原因ともいえる。
それなのにどうしてもう一度同じ学校に通おうと思ったのかといえば、単純に興味があったからだ。今の私があの学校に通ったらどんな風に過ごせるのか。
自分で言うのもなんだが、私にはチート級の能力と世界中を飛び回って得た経験値がある。
能力は生まれ持ったものだが、経験値に関して言えば、色々な先生に付いて回った世界は決して簡単で安全な道のりではなかったからだ。何度か死と隣り合わせのような状況にも遭遇したし、普通に生きている人間がまず経験しなさそうなことをたくさん見てきた。だから無理やりにでも肝は据わったし、物事を冷静に考えられるようになった。中身は大人だけど、それだけではない何か別の成長をしてしまった自分がいたのだ。
そして勉強は問題ない上に、寧ろそこらの教師より頭は使えると思う。そんなチートな私が、あの一度目の人生で送った歴史をどう塗り替えられるか、そんなちょっとした好奇心があった。
***
まさかの偶然なのか、一度目の人生のときと同じクラスに通うことになった。いや、でも人数を平等にするためには自然な成り行きかもしれない。もともと私はこの学校に通う人生だったが、それを変えていったのだから。定員が空いていたクラスに入るのも不思議じゃない。
そして私の入学初日、先生につれられクラスメイトの前で挨拶をした。お互い顔を合わせるのは初めてなのに、私は前の人生の記憶もあって、このクラスの生徒全員を知っている。否、正確に言うと初顔じゃない生徒もいる。私は小学校低学年まではまだ地元の学校に通っていて、その時一緒だったクラスメイトはそのまま皆同じ中学に上がっているので、小学校が同じだったクラスメイトは私のことを知っているのだ。
「間門さんって帰国子女なの?」
「先月までアメリカに住んでいたからね」
早速、隣の席になった男子生徒に声をかけられた。これも前世と同じだ。この男子生徒はクラス内でも上位にいて顔は良いが、その分私は女子生徒のいざこざによく巻き込まれたっけな。まぁ今の私からすれば、この程度の男子はただの子供にしか見えないのだが。
「すげぇな。英語ペラペラ?」
「まぁ、それなりに」
「俺、英語苦手でさ。教えてよ」
「あー…、私にできることならね」
仲良くしてくれるのはありがたいのだが、これは早くもあの子の反感を買っているな。
あの子とは、前世の私が中学時代に散々な思い出をつくる原因にもなった女子生徒のことで。このクラスでは謎に強い権限を持ち、女子たちは殆ど彼女に逆らえない。
カースト制度なんてものがあるらしいが、くだらないにも程がある。たかが三年間同じクラスになっただけで何をそんなに必死に上下関係を作っているのか。社会に出たら上司と部下とか、階級は勝手に作られてしまうけれど、学生のうちはそんなの誰にも決められないというのに。
まぁ今の私はカースト最下位になろうがなるまいが、関係ない。そもそも、勉強にも運動にも、全てにおいて秀でた私をお前たちの順位にはめられると思うなよ。