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「で、キミは一体どこの組織の子かな?」
JK「………いや、あの…俺はその…」
灯りの少ない部屋。目の前で座る青年の浮かべる微笑が異様に恐怖を感じさせる。
遡ること1時間前、ジョングクはジンにたのまれたおつかいを嘘でもいいから断れば良かったと心底思うのであった。
JK「ハルさんの忘れ物?」
JN「そう。ハルったら、一番大事なもの置いて行っちゃってさ。悪いんだけど持って行ってあげてくれる?あの子スマホ持ってないから連絡のつきようがないし」
JK「いいですけど。ハルさんどこ行ったんです?俺、昼食作ろうとしてたら急にいなくなってたから……天津飯作ったのに…」
大皿に乗った天津飯を持ちながらシュンと肩を落とすジョングク。彼の料理の腕が日に日に増していっているが、それがハル一人のためなのだから、彼の愛情の深さが伺えるだろう。
JN「うーん。なんていうか、まぁ派遣先の事務所ってところかな。これ地図とバス代。で、これが忘れ物の封筒」
ジンに渡された封筒はずっしりと重く、その重さから重要書類のように感じる。
JN「ちなみにそれ(封筒)落としたら、今月給料なしね」
JK「!?」
そうしてジョングクは封筒を必死に抱えながら目的地へと向かったのであった。
ジンに指定された場所は、中心街から少し離れたところにあり、とても歴史のありそうなドイツ風洋館。立派な門で囲まれているが、後ろは山や森で囲まれていて都会とはかけ離れた穏やかな雰囲気を感じる。
ハルはここに一体何の用があって来たのだろうか。何にしろ、とりあえず中に入るためにはインターホンを押すしかなさそうだ。
しかし、ジョングクがインターホンを押そうと門の方まで近づいたところで――
「何者だ!」
JK「へ?」
「この時間の来客者は一人と聞いている!」
JK「お、俺はジンさんからのつかいで…っ」
背広に身を包んだ男たちが何処からか現れ、ジョングクを中心に一気に囲んできた。彼らはジョングクの言葉に耳を貸そうとする気はなさそうだ。
「五月蠅いね。なんの騒ぎ?」
「ジミンさん!不審人物です!」
すると騒ぎを聞きつけてか、今度は門の内側から一人の男が現れた。グレイのような明るい髪色を後ろにまとめて、背広の衣嚢に手を突っ込んだまま立っている。
「不審人物でもなんでもいいけど、今は大事なお客が来てるから。此処で騒ぎを起こす前に中でゆっくり話を聞こうか」
その言葉に周りの男たちがジョングクの両腕を一斉に拘束し、有無を言わせず洋館のなかに連れていくことになってしまった。
JK「(な、なんで、…俺はおつかいに来ただけなのに…っ!!)」
その頃、ジンはというと―――
JN「あ、向こうに連絡入れるの忘れてた。……ま、いっか。なんとかなるでしょ」
悠々自適にコーヒーを飲んでいたらしい。