第十二話「多分スノボーできる少女が書きたかっただけ」

「そうそう、ゆっくりでいいからそのまま…」

結局、午後の最終二時間を私は彼らのスノボー講座に突きあわされる羽目になったのであった。

「楓ちゃん、大丈夫。ここまで来れるよ」

幸一くんと考紀くんに加え、楓ちゃんも一緒に。元々楓ちゃんには時間があったら教えるよ、とリフトに乗ったときに言ってしまっていたので、よくよく考えたら彼女に教えることは決定事項だったかもしれない。

「おー、なるほどなるほど。こんな感じなんだ」
「感覚さえ掴んじゃえばちょっとの距離は軽く滑れると思うから」
「静ちゃーん!ちょっとこっちきてー!!」

叫ばんでも分かるわ!後ろから幸一くんが呼ぶ声に振り返り、今行くと返事をする。
男子たちは元々運動神経が良かったことから、楓ちゃんより一歩先に滑れるようになっていた。もうこれ私いらないんじゃね。

「結構いけるじゃないですか」
「俺、あれやりたいんだよ。静ちゃんみたいに回るやつ!」

出た、回るやつ。彼の言うそれは、私が男の前に出る際に使ったスピンのことだろう。まぁ本当ならスピンは空中を飛ぶもので、私は地面で軽く回っただけなのだが。
スピンとはスノボーのグラトリの一つだが、まず2時間で初心者にそこまでできるとは思えないので、私がやったように飛ばずに地面でのスピンの練習をさせることにした。

「そう、そこで身体を左に傾かせて……」

30分程の練習でそれとなく回れるまでに上達した。今のところ一番できるのは幸一くんで、次に考紀くん、楓ちゃんといったところだ。楓ちゃんも男子に負けず劣らずよくできる方だ。やっぱりこの子は集中力が高いんだなぁ。

「考紀ー、お前、スノボーやっとんの?!」

私たちがスノボー広場で練習しているところに、数名の男子がやってきた。私たちの学校の生徒ではない、見ると、いつか会ったことのある顔ぶれ。考紀くんのサッカークラブ仲間のようだ。同じように学校のスキー教室に来ていた彼らも自由時間だろうか。考紀くんを見つけて声をかけてきた。

「教えてもらってんの」
「誰に?」
「あの子」

何となくだが彼らの視線が背中に刺さっている気がした。やめろぉおおお、考紀、貴様さっきも私の予想だにしない行動を取りやがって。百江ちゃんに差し出すぞ。
私はできるだけ彼らに目を向けないように、楓ちゃんと幸一くんの方へ身体を向けて指導をする。後ろで聞こえる話には耳を塞いで。


「前に練習帰りに見た子だよな。考紀の友達」
「そう」
「顔可愛かったよなぁー」
「スノボー教えられんの?」

少年たちが静の後ろ姿へ視線を注いでいると、幸一が大きな声で考紀の名を呼ぶ。

「こうー!!俺できたぜ!!回れたー!」
「マジか!」
「おう!な?できたよな!静ちゃん!」
「パチパチパチ」

友人に先を越されてしまい、自分もできるようになりたいと考紀も友人たちにそれじゃ、と言って三人の元へ戻って行く。

「静ちゃんだって、やっぱすげぇ可愛くない?」
「お前、さっきからそればっかだぞw」
「中学一緒のクラスかもな」

こうして知らないところで、本人の望まぬうちに彼女はどんどん注目されていくのであった。

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