四
やはり。こちらはまだ規制がかかっていなかった。しかし、これ以上進むと今度は人だかりがあるため車での移動は危ない。タクシーはここまでだ。運転手にお金を渡し、車から降りる。
嗚呼、この通りはよく覚えがある。中学に通い始めた今年から通学道路にもなった道だ。何度も歩いてきた。その道を今は少年になって歩いているのは、やはり違和感があるけれど。
お寺の前には既に多くの人が祭りの見物に来ている。この地に生まれてからずっとこの祭りは味わってきたが、相変わらずの賑やかさだ。そしてこの時季といえば―――
青い空に良く映えた桃色。階段上のお寺には桜の木がたくさん植えられている。春先の今、桃色の桜が満開に近いほど咲いているのだ。
「……綺麗だ…」
帽子のせいで上手く視界に映らない。それにマスクもいい加減鬱陶しく感じていた。桜の景色に見とれてしまい、その時の自分は見落としていた。自分が今どういう姿をしているのかを。
ざわざわと話し声が聞こえてくる。それに加え、何か視線を感じた。あ、しまった。そう思った時には既に遅く、後ろへと振り返れば大勢いた人たちが皆こちらを見ていたのだ。
普通に考えれば、白銀の髪をしているだけで目立つのは当たり前だ。それだけでなく、自分は今、翡翠の瞳に恐ろしく整った顔を持っている。またニュースなんかでも発症者の自分のことは大勢に知れ渡っているのだ。特に、このような小さな地元では特に地域繋がりが強く、「あそこの娘さんが発症者になった」とか何とか噂は広まっているに違いないだろう。そのため、この周りの人たちが何故自分に注目していて、何を囁いているかぐらい安易に想像できる。急いでキャップを被り直したが、やはり視線は感じられる。
「あ、っと…キミ、冬埼さんとこの子、で合ってる?」
「……は、はい…」
「そうかーやっぱりねぇ」
「大変だっただろうに…よう帰ってきたなぁ、おかえり」
「おかえり!」
突然、舞子の男性たちに声をかけられ驚きはしたが、今度は笑顔で「おかえり」と言われ、思考が停止した。自分はどうして知らない人たちに心配され、帰りの無事を喜ばれたのだろうか。同じ地区に住む人たちとはいえ、喋ったこともない人たちばかりなのに。
「ど、…どうもです…」