前奏
『文化祭?』
「うん。再来月にね」
『授業なしってことだよね?やった。この学校ってどんなことしてるの?』
「一日目はステージ発表、二日目は体育祭、三日目はクラスごと色々かな」
『美代ちゃんも美術部の発表があるとか?』
「うちらは空き部屋に飾るだけ」
美術部といっても活動は盛んじゃないから、コンクールと文化祭に合わせて作品を作るようにしているだけ。絵を描くのは好きだけど強要されるのは嫌いな私には、それぐらいの方が性に合っているから別に良い。
「そうだ。体育祭は百合ちゃんの出番だよ」
『あー…その日は腹痛がくる予定が…』
「ちょっと」
『冗談。そんな顔しないで、可愛い顔がもったいない』
そう言って笑う百合ちゃんの方が数億倍可愛いのに、不思議とひがみは感じない。なんでだろう、綺麗な人に“貴方も綺麗だよ”とか言われても、寧ろ下に見られているようで嫌な気分になるのに。
『美代ちゃんの作品見に行くね』
「えーそういうのいいよ、なんか恥ずかしいし」
『なに言ってるの。友達が頑張ったのに、見に行かない理由なんてないよ』
多分、これは百合ちゃんの中身によるものだと思う。素でこれを言っているから憎めないのだ。
見た目は彫刻のように美しいのに、それを鼻に掛けない不思議で天然な言動。それにどっちかっていうと、女子らしさよりお茶目な子供っぽさの方があるし。ギャップってこういうことを言うんだろうな。
「ていうか百合ちゃんこそ、何か出し物とかしないの?」
『いやいや転入早々それは強すぎる』
「芸達者じゃん」
『人を歩くサーカス団みたいに言わないでよ』
何を今さら。寧ろ、サーカス団でトリを務められそうなのに。文化祭では毎年、有志の人たちがステージで何らかしら発表をしていて、去年はたしか三年女子の先輩たちがダンスを披露していたし、他にもクラスでショーをしているとこもあったりと色々だ。
百合ちゃんは楽器だって弾けるし、歌も上手いし、ダンスもできるんだからやればいいのに。あ、でもプロ並みに上手すぎて文化祭で披露するには勿体ないかも。
何もする気のない百合ちゃん。しかし、そんな彼女の意思を変えるような出会いが、私の知らないところで起きていたとは思いもよらなかった。