始まり
『やっぱり曲は二つ使った方がメリハリあって良いよねぇ』
「おい」
『せっかくだからどっちも男らしさ全開のやつで、女子のハート鷲掴みしに行く?』
「おい」
『今練習してるのは第一希望として、もう一つは…』
「おいってば!!」
『え、どしたの』
ひとりで話をすすめる間宮さんにツッコミを入れる善。彼の言う通りだ。どうしたもこうしたもない。文化祭まで残り一か月しかないというのに、何でこんなことになっているんだ。
いつも通りの練習をする筈が、今日は間宮さんが来るまで何もできず、僕と善は固まっていた。思えば昼休みからずっと思考が停止している気がする。
「誰が文化祭出るんや…」
『私と、楓太さんに善さんですけど?』
「俺たち出るとか一言も言ってないで!?」
『なーにを今さら。これだけ練習してて出ないとか、寧ろこっちが驚いちゃうわよって』
「驚いとるんはこっちじゃ!」
「……善はともかく、僕は無理。二人についていくので精一杯なのに」
「楓太…」
この数日、たしかに一緒に練習してきた僕たちのなかでも、運動神経が良い善はもともと僕より上手いから随分踊れるようになっていた。でも、僕ははっきり言って二人の足元に及ばないのだ。人前で踊るなんて、まだまだ先の話だと思っていたぐらいなのに。
『二人は多分、ずっと一緒に二人だけで踊ってきたんでしょ?』
「ま、まぁ…」
『それならそう勘違いしても仕方ないよ』
「…え?」
『これでも一応、プロと肩を並べてきた身だからそういうの分かる方なんだ。
二人にはセンスがある。磨けば絶対にもっと光る。
――そうじゃなきゃ、この私がボランティアでここまで教えたりしないよ』
とんでもない上から目線の発言。
でも今の僕たちにとっては、この上ない誉め言葉だった。
『前、私に言ってたよね?それだけの技術持ってるならどこかで披露すればいい、もったいないよって。
私から言わせれば、二人の方がもったいないことしてる。こんなに毎日練習して、休みだってずっとやってるんでしょ?動き見れば分かるよ。
ご機嫌伺う時代は終わり。二人がいかに凄いかって猿でも分かるように、度肝を抜くステージ見せてやろうよ。』
不適に笑う間宮さんに、僕たちが首を横に振る理由はもうない。
僕たちが三人となってピースのように合わさり、そして変化は起きた。