努力の成果

 『いやー楽しかったね』
 「なんか…あっという間だった」
 「俺も。…始まる前はあんな緊張したんに、終わるとき…ちょっと切なかったわ」
 『善さん、それポエム?』
 「ちゃうわ!」
 「ていうか、百合ちゃん…全然息切れてないし…」
 「ほんま…化けもんや」
 『そろそろ着替えようよ』
 「ちょう待て、休息ってもんを――「あ、あの、先輩がた!」

 パフォーマンス後、舞台袖から体育館外まで出てきた三人。楽しそうに笑っている百合に対し、二人は緊張の糸が切れたのか、どっと疲れがやってきていた。
 すると、そんな二人のもとへ声をかけてきたのは、数人の女子生徒たちだった。

 「ダンス、か、かっこよかったです!」
 「私、ファンになりました…ッ」
 「私も!」
 「こ、これからも頑張ってください…!」

 女子生徒たちは頬を赤らめながら、恥じらいつつもそう言って、走り去っていった。一方で、二人の方はというと…

 『え、大丈夫?息してる?』
 「…夢…じゃないよな…?」
 「……たぶん」

 口を開けたまま固まっていた。
 今しがた起きたことが信じられないのか、頬を掴んでは現実を確認している。

 『ね?言ったでしょ?女の子のハート鷲掴みだって』
 「そうは言ってもこんな簡単に…」
 『簡単じゃないよ』

 善の言葉に、今まで笑っていた百合の表情は一変。真面目な顔で二人に言う。

 『二人の並々ならない努力の賜物だよ。誰よりも練習して、必死に頑張ったからこそ…ああやって人の心を動かせたんだ。
 簡単なようで、実はとんでもないことだよ。

 ほんと凄い、二人は』

 ステージを見る側は知らない。どんなに凄いパフォーマンスをしても、それがどれほどの練習量だったかなんて。
そのため、毎日時間があれば練習をしてきた二人の努力は表舞台でしか、たった数分間でしか伝えられない。
 しかし、そのたった数分のために全てをかけた二人の踊りは、見る人の心を動かしたのだ。檀上に寄ってきた大勢の生徒たち、そして先ほどの女子生徒たち。皆が彼らの踊りに惹かれた。

 『もっと自分を誇りに思っていいんだよ』


 ―――自身を愛することを忘れないでくれ。   セーレン・キェルケゴール(1813〜1855)

ALICE+