体育祭1

 文化祭行事のなかにある体育祭。うちの体育祭は赤・黄・青にクラスごと色分けされて、その三つの組が競って一番を決める。組が一緒の学年ごと共闘するから、上級生と下級生が協力し合うのだ。
 ちなみに私たち1年1組は青組。青色のハチマキを頭に巻いて、校庭に貼られたテント下のシートにクラス別で荷物を置いていく。ちなみに同じ学年だと2組も青組だからテントは隣だし、その隣にも青組の上級生たちが連なっている形。

 『え、二人も一緒なの?』
 「うん。僕たちも今年は青組だよ」
 「俺の記憶やと、この話は昨日もした気がする」
 『じゃあお揃いだ』
 「聞いちゃおらん」
 「まぁまぁ」

 百合ちゃんが話しているのは、昨日一緒のステージで踊っていた二年生の二人だ。相変わらず仲が良いらしく、三人が一緒にいるのはもう見慣れたものだが、にしてもあの百合ちゃんが特定の誰かと一緒にいるのって珍しい気がする。
 小学校の頃は、百合ちゃんのもとに皆が集まっていっても、百合ちゃんは自分から誰かと行動しようとはしなかったから。一人で何でもできる百合ちゃんは、それこそ誰かに頼らなくても生きていけたと思うし。まぁ、私はどっちかっていうと、壁を作られたようにも感じたけど。

 あ、でも…一人だけいたな。
 百合ちゃん自ら近づいていった人が。
その人は彼女の幼馴染でもあり、一時は二人が付き合ってるんじゃないかと噂されたこともあったほどだ。
その“彼”は2組で、私たちの隣のテントに座っていた。

 ***

 「百合ちゃんは何の種目出るの?」
 『そういえば何に出るんだろうね?』
 「ま…まさかの質問返しとは…」
 「お前なぁ…ちゃんと把握しとけ。そういうの絶対クラスメイトに迷惑かけるタイプやろ」
 『ちょっと聞いてくるよー』

 そう言って手を振りながら自分のクラスのテントに戻っていく百合。自由奔放で天然なところに、楓太は苦笑いをこぼし、善に至っては深いため息をついていた。

 『美代ちゃん、私って何の種目に出ればいいの?』
 「え…うちに聞かれても…そんなに詳しく把握してないよ」
 『そっか。じゃあ別の人に聞いてみるよ』
 「多分、体育委員に聞いてみたらいいと思う」
 『ほんと?分かった。ありがとうね』

 百合の隣の席でもあったことから、美代は何かと声をかけられることが多かった。別にずっと一緒にいるわけではないが、必要なときに百合の方から尋ねる仲ではある。
 そして、いつも通り美代の助言をもとに体育委員のもとへ向かおうとする百合だったが、何故か彼女は隣のテント、つまり自分のクラスではない人間に聞きにいこうとしたのだ。
 しかもその相手は、例の――百合の幼馴染であった。

 『コウくん、体育委員って誰?』
 「は?なんで俺に聞いてんの。俺ら、クラス違うじゃん」
 『なんだ、知らないのか』
 「1組の体育委員って太樹じゃないの?」
 『え、やっぱり知ってるんだ』
 「だってさっきからあそこで準備してるじゃん」

 彼が指さす方向には、グラウンドの真ん中で道具を運んでいる生徒たち。実行委員会でもある各クラスの体育委員たちが準備に追われている途中だった。その中には百合のクラスメイトもいる。

 『おぉ、さすがコウくんだね』
 「いや、百合ちゃんがマイペースすぎるだけだって」
 『えへへ。そうかな』
 「褒めてないし」
 『じゃあまたあとでね』

 話があまり噛み合っていないようにも聞こえる二人の会話。周りで見ていた同級生たちのなかには少なからず驚いているものもいた。
 それほどまでに百合という少女が、圧倒的存在感を放っていることでもある。本人は全く気にする素振りも見せないが。
 そしてその後、体育委員に確認した百合は再び、楓太たちがいる場所へ。

 『障害物競走だった』
 「あ、僕も出るよ」
 『障害物競走って最後パン食い競争もあるんだって。ただでパン食べれるよ』
 「趣旨違くないか?」
 『あんぱんあるかな。私、こしあん派』
 「俺、粒あんー」
 「僕はこしあん」
 『善さんの負けだ』
 「なんで勝手に多数決になっとるん。お前ら粒あん、なめんなよ」
 『こしあんの勝ちだよ』
 「粒あんも……うまいんじゃぁああ!」

 かくして「粒あん」「こしあん」、両者の決着をつけるときがきたようだ。からかうように笑っている百合を追いかける善。それを見ていた楓太は、二人の立ち位置が段々見えてきたと悟っていたらしい。

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